特定秘密保護法案は日本の自立のためにつくられるべき

青山繁晴氏:今日はお招きいただき光栄に思い、まず感謝いたしております。不肖私は自由民主党からの推薦で今日ここに参ったと承知しておりますが、はじめにもうし上げておきたいのは、「それは関係ない」ということであります。

(会場笑)

あくまでも、さきほど額賀委員長がおっしゃったとおり、私どもの本来信ずるところを、支持政党、私はそもそもありませんし、自由にもうし上げたいと思います。

とくにこの特定秘密保護法案については、政府、与党、野党問わず、今日はもうし上げたいことがありまして、お招きいただいただけではなくて、自らの意志としても参りました。

まず、主として政府、与党の側にご意見もうし上げたいんですが、今までのこの国会での貴重な審議、あるいはマスメディアに対する発言、すべて総合しますと、この特定秘密保護法案ならびに国家安全保障会議(NSC)設置法案。

いずれも、まるでアメリカ合衆国にとってより都合のいい日本になるかのようなイメージを、少なくとも国民に与え、私もそれを懸念するということが、まず私がもうさねばならないことだと思います。

そもそもNSCも特定秘密保護法案も、日本の自立のために作られるものであって、間違っても敗戦後68年の歩みの延長線で、さらにアメリカにとって都合のいいシステムを作ることになってはならないと考えております。したがって冒頭にもうしますが、修正論議は一国民の1人として歓迎しております。

さて、なぜ政府、与党の側からアメリカとの関係が強調されることについて懸念を持つかともうしますと、そもそもインテリジェンスというものは、同盟国の間であってもシステムによっては、加工されて伝えられるものです。

したがって、国家安全保障会議(NSC)を作り、そこで例えば、アメリカ合衆国の膨大な情報機関が集めたインテリジェンスが日本にきて、それを守るために日本の法制度として秘密保護法が作られるのであれば、よりアメリカにとっては、日本の世論に対しても政界に対しても、影響を及ぼすことが可能になりますから、したがって今まで以上に、現実に情報を加工してくると思われます。

加工してきたときに、私たちがそれを、現在の日本としてとくに、検証することは困難であります。したがって、もう一度もうしますが、この特定秘密保護法の冒頭、第1条、目的のところに、あくまで日本の自立をさらに促進するためであり、そして、この特定秘密保護というシステムは、本来、日本の独自の情報機関、戦争に一度負けたからといって情報機関を持ってはならないというのは、むしろ国際法に反しますから。

本来、国家として持つべき情報機関を持つ方向も、できれば第1条、目的のところに明記していただきたい。

したがって、私がさきほどもうしました「修正は歓迎します」というのは、必ずしも野党側からの修正だけではなくて、与党の側からもこの政府案に対して、修正をさらに行っていただきたい。

この衆議院においてもそうではありますが、国会は両院の府でありますから、できれば参議院においてもさらにそのような審議を。ここは衆議院でありますから、それを言うのは適切ではないかもしれませんけれども、しかし、二院制である以上はそれも国民の1人として期待いたしたいと思います。

外国人のスパイにとって日本は天国だった

そして、今もうしましたスパイ防止法という……、今もうしましたことは、実はこの特定秘密保護法案は、本来はスパイ防止法の性格を持つべきものだと考えております。かつて、自由民主党におかれては、1985年にスパイ防止法の精神を明記した法案が国会に提出されましたけれども、自由民主党内部からの反対もあって廃案になりました。

それは国会の意思ですから、あくまで国民としてそれも尊重いたしますが、そのときの経緯を改めて振り返れば、その後、1985年から今に至る長い間、ずっと日本は依然として、外国人のスパイにとっては天国とも言うべき状況が続いてきたということを、改めて国会の国民の選良の方々におかれては、謙虚に受け止めていただきたいと思います。

したがって、今回の法案の最後、第26条に外国人によるスパイ活動に関連すると思われる取り決めが、わずかに盛り込まれています。

それは刑法第2条とも関連して、国民の一番大切な安全を損なう犯罪であれば、国の内外は問わず責任を問い罰するということが刑法第2条に盛り込まれていまして、それがこの特定秘密保護法の第26条に反映されていますが、それでは不十分だと考えます。

外国人のスパイが、今後、活動しにくくなるということを、改めてこの法案に盛り込んでいただきたいと考えています。それから、野党に限りませんけれども、廃案の考え方について私の個人的な意見をもうし上げたいと思います。

敗戦後の日本は本当に平和国家だったのか

「いったんこの法案を廃案にすべきだ」という声は、とくに、私は共同通信の出身ですけれども、マスメディアにも満ちあふれております。それは言い方を変えれば、すなわち日本の現状で良いということにつながります。しかし、敗戦後の日本の現状というのは、本当に平和国家であったでしょうか?

例えば、具体的に拉致事件を考えていただきますと、北朝鮮の工作員が日本の原発でテロを準備するために情報を集めたその帰途、たまたま出会ってしまった日本国民を誘拐、拉致した例もあると思われますが。

同時に、その日本国民の技術、技能、そして人柄の良さ、あるいは女性であれば、未婚の女性であって子供も産むこともできるということも、スパイ活動によって調べ上げたうえで誘拐したケースも、実は私なりに捜査の手順を追いますと、現実にあります。

例えば、拉致被害者の家族が私に直接、証言なさった内容によれば、これは日本海に面した町でありますけれども、今でもスーパーマーケットに行くと、うちの娘が手に職、技術があって、そして人柄も良くて、まだ未婚で、そして健康であるということを調べ上げて、北朝鮮側に教えたと思われる人物と、スーパーマーケットで毎日のように顔を合わせると。

しかし、スパイ防止法がないために、個人的な恨みを果たすことは日本国民としてしないので。この方はご主人でいらっしゃいますが、「毎日、血が出る思いで、家内とともに買い物をしています」という証言もあるわけです。本当は参考人として、そういう方にもこの場に来ていただきたいというのが、私の実は本心でもあります。

それを考えますと、拉致事件が起きた原因はいくつもありますけれど、そのうちの1つがそういったいわゆる外国人による、あるいは外国人と連携した、残念ながら日本人によるスパイ活動を防止できなかった。

それが長年の捜査によってある程度、輪郭がはっきりしてきてもなお、罪を問うことができない。ということは、これは過去の問題に限らず、朝鮮半島の情勢によっては、また新たな拉致事件を生む恐れも実はあるわけです。決して過去の問題ではありません。

そして、もしも今までの日本のあり方で、それが平和国家であって、良かったんであって、それを変えるならば、特定秘密保護法に反対する、あるいは廃案にするとおっしゃる意見であれば、それはその方とその家族がたまさか誘拐されなかっただけであって、平和国家ともうしながら、日本の一番大切なポイントは、私たちこそ日本の主人公であって、私たちこそ最終責任者であって、恐れながら国会のみなさまも私たちの代理人にすぎません。

その一番大事な主権者を、実は区別をして、北朝鮮に誘拐されたままの横田めぐみちゃんであれ、有本恵子ちゃんであれ、場合によっては100人を超える恐れすらある拉致被害者の方々はそのまま放置して、「敗戦後の日本の歩みは平和国家であった」と言うならば、では、その方々は日本国民ではないんでしょうか?

そのことを、できれば、謙虚に問うていただいて、それだからこそ修正論議というものを活発にやっていただきたいと思います。

報道の自由を担保する修正であってほしい

そして、修正論議。現在進行中のことでありますが、少しだけ具体的な意見を述べますと、まず、内閣総理大臣や、あるいは閣僚たちだけで秘密の指定をし、その精査がなされないというのは、もちろんこれは問題であると考えます。必ず修正されないといけないと考えます。

そのうえでですね、第三者機関そのものは、実はすでにこの法案の中に有識者の意見を聞くということも盛り込まれていますから、実は第三者機関は当然設置されるものだろうと、これは個人的推測ですけれども、そのように考えております。

問題はその第三者機関の任務です。この特定秘密保護法、あるいは法案に基づくシステムが動き出したならば、場合によっては、その指定された秘密は何十万件に達することもありますでしょう。

それを有識者を中心とした第三者機関で1つ1つ、その指定が適切なのか、あるいは30年を経た、例えば仮に30年を経たときに公開する、しないを、1つ1つについて精査することは、実は実際にはできません。

したがって、修正は必ず現実的な国民の知る権利や取材、報道の自由を担保する修正であってほしいと願います。そのうえで、30年かどうかは別にして、一定の期間が過ぎれば公開すべきというのは、そのとおりだと思います。

諸外国、とくに民主主義諸国のこの秘密保護のあり方もそれが原則ですから、そのうえで、それを考えるときに、実は第三者機関の設置とともに大切なのは、あらかじめ例外規定を設けることです。

例えば、さきほどの拉致事件の解明に関連してもうしますと、今から11年前の日朝首脳会談があって、ときの小泉総理が金正日総書記に拉致事件の実行を認めさせたそのときに、これは私の個人的な見解にすぎませんけれども、例えば朝鮮総連の内部でも、その事実にショックを受けた方々がいらっしゃって、そこからこの11年の間、拉致事件は解決はしてませんけれども、有益な情報も随分寄せられたと、私は理解しております。

そういう情報提供者、その人が亡くなったあとにも、その親族や子孫のことを考えると、とくに北朝鮮の体制がいつ変わるかわからない状況にあっては、例えばそういう情報提供者の氏名というのは、これは有識者の判断とか、第三者機関の判断を問わず、必ず守られるべきものであって。

したがって、例えば情報提供者の名前であったり、あるいは防衛省、自衛隊で使われている暗号であったり、あるいは外交の現場でも実は暗号が使われておりますが、そのことについてはずっと秘途する。

なぜかと言えば、暗号を公開すれば、暗号の作り方自体が実は国際社会に知れわたることになりますから、あらかじめ国会の審議において、できれば与野党合意していただいて、その例外規定をきちんと作って、そして、そのうえで一定の役割を第三者機関が果たすようにしていただきたいというのが、私の願いであります。

情報公開法についても、もう一度審議をしていただきたい

そして、この委員会においては、枝野幸男先生方から提案されているところの、情報公開法の改正案も審議されておりますから、それについて一言もうしますと、情報公開法、現在の法律を、新しいシステムが作られるに合わせて改正すること自体は賛成です。

ただし、言わば司法に委ねて、インカメラ審理と普通は呼んでますけれど、秘密の中身にまで裁判官が踏み込んで、その指定の適否を判断することになっています。日本は国際社会の中でも、もっとも司法が独立した国です。

その意味では、独立した判断を裁判所が下すことは期待できますけれども、しかし、裁判官は自らの良心にのみしたがって判断を下すだけに、その裁判官の判断を絶対視するというのは、僕は反対であります。

したがって、情報公開法の改正についても、与野党の垣根を超えて、もう一度、審議をしていただきたいと思います。

最後に、あと1分ですけれども、最後に私自身は共同通信の出身で記者も20年務めました。政治部10年です。この国会に10年通いました。

そして、今回の法案の原案を最初に見たときに、当然、取材の自由、それは記者が自由に動けるってことではなくて、国民がメディアを通じて本当の情報を知れる、知ることができる法案なのかどうかっていうのが、最大関心事の1つでありました。

しかし、私の拙い経験に基づいて言えば、例えばどこかに不法に侵入したり、あるいは、まさか暴力を使ったり、脅したり、騙したり、そのようにして情報を取ったことは、ただの一度もありません。

そしてさらに、国家公務員に対しても数知れず取材を行いましたが、そのときの罰則は例えば懲役1年であって、今回の法案は10年になる。前は取材ができて、今回は取材ができない。そんなことは、記者の現場を知らない方のおっしゃることではないかと思います。

すなわち、日本の公務員は、普通は定年になるまで勤め上げるために、むしろ公務員という職を選ばれている人も多い。たとえ懲役が1年であっても、職を失い、地域から断罪され、家族まで貶められるというのが現状ですから、実は従前から国家公務員の方々は非常に苦しみながら、国民に真実を知らせるために、記者とそれなりの信頼関係を築いてきたと思います。

したがって、この法案においても、取材活動が不正なものに限られることが、もう一度さらに強調されれば、私の後輩の諸君を含めて、記者は取材の自由を失うことはないと確信しております。

以上でございます。委員長、ありがとうございました。

(会場拍手)