いかにNo.1企業として勝ち残っていくのか

川上昌直氏(以下、川上):よろしくお願いいたします。みなさん長丁場、お疲れさまです。兵庫県立大学の川上と申します。

本日はタイトルにもありますように、いかにNo.1企業として勝ち残っていくのか、ということに関しまして、すでにNo.1企業を創られたみなさま、さらにもっと上へいこうとされている経営者のみなさまをお呼びして、じかにお話を聞いていく場にしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

まずは本日ご登壇いただきましたみなさまを、ご存知だとは思いますが、それぞれ自己紹介というかたちでお教えいただきたいと思います。

まずはアスクルの岩田社長です。よろしくお願いします。

お客様のために進化する 挑戦を続けるアスクル

岩田彰一郎氏(以下、岩田):みなさん、こんにちは。アスクルの岩田でございます。会場にいらっしゃる多くの方にお世話になっているかと思うんですけれど、アスクルという会社を1992年にスタートして経営しております。アスクルはもともと中小事業所に大企業以上のサービスを提供しようというミッションでスタートいたしました。

当初はオフィスの文房具の販売からはじめ、お客様のご要望を聞いているうちに水とかコーヒーとか日用品をお届けするというところに変わり、さらに病院での注射針とか専門的な医療用具のご要望があり、今では工場や研究所で使うMROと言われている商品などにもどんどん展開しながら、あらゆる仕事場でお役に立つビジネスに変わっていこうとしています。

こういうプロセスで我々が学んだのは、「お客様のために進化する」、進化しなければやはり生きていけないということ。それを学びまして、我々の企業理念にしております。

4年前にはヤフー株式会社さんと業務・資本提携をいたしました。このとき社内では、ルビコン川を渡るという話をしたんです。

それまではカタログビジネスをやっていたんですけれど、カタログビジネスの将来がどうなるんだろうと考えたときに、やっぱりすべてeコマース、ECの世界に組み込まれていくと。我々、BtoBではNo.1のポジションでしたが、そこに甘んじていれば将来なくなってしまう。じゃあルビコン川を渡ろうと。

カタログからeコマースへ

もちろんその先にはアマゾンさんという世界最強の流通企業がいらっしゃいます。それでもそこに我々が生きる領域があるんじゃないかということで、資本も変えて新たなeコマースの世界へ舵を切りました。

今では「LOHACO」、「Lots of Happy Communities」という、家庭だとか地域とかにたくさんの幸せがあればいいなという思いで個人向けのeコマースを、ちょうど3年少しになりますけれども、やっております。

そのようにBtoBからBtoC、カタログビジネスからeコマースというところに舵を切りながら成長しているのがアスクルという会社になります。それとトピックスといたしまして、今日の午前中(2016年4月21日)、横浜の生麦というところに新しい物流センターをオープンしてきました。

これはロボットが入った最新鋭の物流センターになるんですけれど、やはりそこでは人に優しいということが第一だろうと。環境に優しくて、機械と人間が調和できる、そういう新しい物流の仕組みを作っていく場所として、ちょうど今日オープンして先ほどリリースを出したばかり。そういうことを今やっている会社でございます。

川上:ありがとうございます。そういう、ものすごくアップトゥデートなお話も今日、話していただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

次、ご紹介いただく前に、少しみなさまにお知らせがございます。今回、このように素晴らしいみなさま方とトークをさせていただくんですが、私ひとりが独占しては申し訳ないということで、みなさんがリアルタイムで質問できる仕掛けを事務局にお願いいたしました。

画面に出していただけますでしょうか? 今、Twitterハッシュタグ、「#mfクラウドexpo」で、みなさんからリアルタイムで質問をお受けしています。登壇者のみなさまが答えられる範囲で、おもしろい質問がありましたら、画面を見ながら質問をしていきたいと思っていますので、入力をよろしくお願いいたします。

創業から17年 世界12箇所に進出

では、マネックスの松本さん。お願いします。

松本大氏(以下、松本):みなさん、こんにちは。マネックスグループの松本です。No.2じゃなくてNo.1というお題なんですけれども、当社はNo.1ではなくてですね(笑)、頑張らなくてはいけない会社であるんですけれど、No.1を目指している会社ということで参加させていただこうと思っております。

当社は1999年に日本でオンライン証券を始めました。当時、1999年10月1日に株式の売買手数料が完全自由化されるということが決まっておりました。また株券の電子化や、株券の移管方法にも変化がある年でした。例えば、昔は株券の移管をするには野村證券からどこかに移すというかたちで、まず野村證券に行って「ほかの証券会社に株券を移管するから出してくれ」とセールスの人と話をして、彼らが引きとめるのを振り切って物理的な株券をもらい、そのうえで次の証券会社に行かないといけなかったんですね。

それが1999年に簡単な手続きで移管ができるように変わったんです。このほかに株券の電子化が予定されていて、かつ手数料の完全自由化がされる。これは大きく変わるだろう。と、いうことで創業をいたしました。4人で始めた会社です。

証券業界はその後、ほんの3年くらいで日本中の個人の株式取引の8割以上がオンラインで行われるほど一気に、革命的にビジネスが変わったんです。現時点でも当社を含めた大手オンライン証券5社で日本中の個人の株式取引の85パーセントくらいを扱っている状況です。

当社は5年ほど前から海外にも進出を始めまして、現在世界の12カ所にオフィスがあり、社員も全体の7割くらいが、アメリカにおります。日本、香港、アメリカの3拠点で個人投資家の顧客基盤のある証券会社というのは世界中に当社を入れて2社しかないく、もう1社はアメリカの会社です。

中国におきましても、ジョイントベンチャーというかたちでオンライン証券事業を始めております。私が知る限りでは、オンライン・オフラインに関わらず世界中の証券会社で中国の個人向け株式のビジネスを始めているのは当社だけと認識しております。

創業してから17年経っておりますが、いろいろな苦労をし、今も大きな課題をいっぱい抱えています。世界に出るのは苦しみもあり、大変さもあり、いったんコストが上がったりもします。今までやってきたことをやり続けるのは簡単でいいのですが、常に新しいことを繰り返している状況です。

大きなメディア革命のなかでナンバーワンを目指す

川上:ありがとうございました。それではC Channelの森川さん、お願いします。

森川亮氏(以下、森川):みなさん、こんにちは。C Channelの森川です。去年の春までLINEの代表をしていまして、4月から新たにC Channelという会社を立ち上げました。先ほど松本さんから金融・証券の領域が変わるタイミングという話がありました。私はテレビ局に12年いたんですけど、まさに今、メディアの王者であるテレビの世界が大きく変わるタイミングだなということで、動画配信の事業をテレビ局時代の同期と立ち上げました。

今、特にアメリカを中心に大きなメディア革命が起こっています。この流れというのはずっとあって、デジタルのメディアが始まってから新聞の元気がなくなって、出版の元気がなくなって、テレビそのものはまだ見られていたという状況だったんですが、いよいよ若い人がテレビを見なくなり、若い人向けの広告が全部ネットの動画で流れているという現状があります。

みなさんご存知の通り、今のメディアの潮流というのは検索からソーシャル、タイムラインへと変わってきています。情報が増えれば増えるほど、だんだんそこから選ぶという行為が面倒臭くなってしまいます。また、検索の領域というのはSEO技術が進めば進むほど、本当に正しい情報が優先的には見られない。そういった課題があるなかで、ソーシャルメディアでアルゴリズムを使ってその人が求めるものを出すようになってきた。

昔はメディアがコンテンツも持って、一体化していたんですが、今は記事とか動画とかファイルが一つひとつ分散されて、それがソーシャルメディアに流れている。そういう時代になってきています。文字、写真、そして動画、そういう流れのなかで今、我々のC Channelというのは単純にあるサイトとかアプリとかがあって、そこに動画ファイルを流すのではなくて、さまざまなソーシャルメディア上でその人に合った動画が流れてくる、そういった最近流行りの分散型メディアとして始めました。

アメリカで始まった一番有名なものが「BuzzFeed(バズフィード)」というところで、今それが相当な力を持っているんですが、アジア版バズフィードというようなかたちで、まず日本でスタートをしまして、ちょうど先月、動画が月間1億再生いったんですが、並行してタイでもサービスを開始しました。

こちらはノンプロモーションで早くも再生が月間1千万回くらいいっているのと、ちょうど台湾でのサービスも発表しまして、来月からサービス開始するというかたちです。まだ始めたばかりでNo.1ではまったくないんですが、No.1を目指して頑張っていきたいなと思っております。よろしくお願いします。

主催の辻氏「非常に尊敬する方々に登壇をお願いしました」

川上:ありがとうございました。それでは続いて、今日も朝から出ずっぱりの辻さん。

辻庸介氏(以下、辻):マネーフォワードの辻です。どうぞよろしくお願いいたします。当社の説明は先ほどミヤハラやヤマダがさせていただいたので割愛いたします。

今日、御登壇いただくお3方にはすごくお世話になっておりまして、もともと今日、僕は登壇させていただく予定ではなかったんですけども、いち視聴者としていろいろお聞きできればという立場で登壇させていただいております。

マネックスの松本社長には10年近くボスとしてお世話になっておりまして、森川様には社外取締役として当社の経営にアドバイスをいただいております。アスクルの岩田社長とはこの前、業務提携をさせていただいて「MFクラウドfor ASKUL」というかたちでアスクルさん専用のクラウドサービスの開発を進めています。また個人向けにもLOHACOさん向けの家計簿をご提供するというかたちで日頃からお世話になっています。

言葉は軽くなってしまうんですけれども、非常に尊敬する経営者の方々ですので、今回、ぜひということでお願いした次第でございます。なので、僕は今日黙っておこうと思うんですけれども、川上さんが困ったときだけ、茶々を入れたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

川上:ありがとうございました。よろしくお願いします。それではスタートしますが、もう一度、ハッシュタグの表示をお願いします。こちらの「#mfクラウドexpo」でTwitterに書き込みいただきましたら質問が受け付けられますので、みなさまよろしくお願いします。

それではパネルディスカッションに入りたいと思いますが、今回、私も聞きたいことがありますし、ひとつのテーマに対してみなさんの方でどんどん入りこんでいただいても楽しいかと思います。そのようなかたちでどうぞよろしくお願いします。

経営の第一の仕事は“勝てる構造”を作ること

まず1つ目の質問をさせていただきます。

アスクルの岩田社長、私が以前、岩田社長の記事ですごく感銘を受けたものがありまして。それは今日のタイトルにもなっている、No.1企業というか、断トツになろうとしたときに会社に必要なものが2つあるというお話をされてました。1つがビジネスモデル。もう1つが会社モデルと岩田社長、おっしゃっていたんですね。

ビジネスモデルというとスタートアップなどではみんなビジネスモデルを考えて突き抜けてるだけのイメージもあるんですが、岩田社長は「そこに会社モデルというものが存在しないと会社は到底成り立つものではない」とおしゃっていました。このあたりを詳しくお聞かせ願えますと大変うれしいのですが。

岩田:まず最初に訂正してしまいますと、大事なのは2つじゃなくて、もう1つ。車にたとえて両輪がビジネスモデルと会社モデル、そしてエンジン。というのは、やはりお客様指向という、みなさん共通してるんですが、お客様を第一に考えるという根っこがないと企業は成立しないと思っていて、それがエンジンだということです。

ビジネスモデルというのは、川上先生の領域ですけども、“勝てる構造”というものだと思います。現場的には努力しても、勝てる構造がなければ、それは無駄になってしまう。経営の第一の仕事というのは、勝てる構造を作るということですね。

会社は誰のものか?

もうひとつの会社モデルというのは、会社は誰のものかということがあると思うんです。ビジネスモデルで成功しても、それが独裁的な企業になってしまったり、誰誰商店というふうになってしまったら、私はおかしいと思っていて。会社というのは公のものであります。

実は経済同友会で社会的責任委員会というのをやったんですが、そのなかで提唱したのが「三面鏡経営」という言葉なんです。三面鏡というのは、我々、経営者、特に上場していくと株式市場の鏡にいかに自分の姿をよく映すかということばかり考えてしまうんです。

昔よくあった三面鏡で横の鏡はなにかというと、社会の鏡、もうひとつは従業員、一緒に働く仲間の鏡。こう考えたときに会社がすごくいびつになってるんじゃないかな、と。今、熊本の震災のなかで、どういうことが企業にできるかとそれを真剣にやっていかなきゃいけない。そのほかにつきましても、社会に貢献するというのが企業の原点。それを映すのが社会の鏡。

もうひとつが働く人が楽しく、みんながイコールで共同体としていければいいなという思いがあり、そういう会社を作りたいということで、それを具現化するために当社のオフィスは管理職も派遣の方も同じです。机の大きさが変わるとか、課長になれば肘掛付きの椅子がもらえるとか、そういうことはまったくなく、誰がどこにいるかわからないような、そんなオフィスになってるんですね。

会社というのは、みんなの共同体でリーダーシップのある人がリーダーになっていくというモデルだと思っているので、オフィスという舞台装置を作って実現していくと、それがだんだん社風になったり、企業文化になって伝承されていくものになっていくんだと思います。そういう両輪を目指して、アスクルという会社をつくっています。