チンパンジーと人間は交配できるのか?

ハンク・グリーン氏:たくさんの異種間の交配種がある。ラバ、ライガー、ゼブロイド、ビーファロ、昨今議論を呼んでいるグローラーベアなんかね。

でもどちらかと言えば、人間はそういうのとは別のレベルにいると思うよね。ぼくたちは人間で、ぼくたちに近い種すらいないんだ。一体どうやって何かと異種交配するって言うんだ? おええ!

でもね、聞いてくれる? それはすでに行なわれてるんだ。そしてまた行なわれるかもしれないって言っている人もいる。

すでに行なわれたっていうのは、ぼくたちみんなにネアンデルタール人が少し入っているからで、前回のSciShowで話したように、平均的なヨーロッパ人は1〜4パーセントがネアンデルタール人なんだ。

だから、実際には、ぼくたちはみんな異種間の交配種なんだ。そのDNAはぼくたちの種にあまりにも深く染みこんでいるから、基本的にそれはぼくたちを人間たらしめているものの一部だけどね。

ところがもっと恐ろしくて興味をそそられる、たずねるべき質問は「それはまた起こるだろうか?」ってことだ。

この質問をしてきた人はたくさんいるし、人間と、ぼくたちに最も近い遺伝子的な親戚であるチンパンジーを異種交配することが可能かどうかを、はっきりさせたい衝動にかられてきている人さえいる。

さて、これ以上先へ進む前に、SciShowの公的立場をはっきりさせよう、願わくは、人類にとってこれはとんでもない考えだ。

それはひどく道義に反する、つまり多くの遺伝的障害を持つ可能性を含んだ、そして彼、あるいは彼女の種において唯一のメンバーとなってしまう、知覚の能力を持つ生命体の創造を、科学の研究のために行なうなんて、ダメだし間違ってるし、もはや悪魔の所業だ。

しかしね、それでも議論するには魅力的なことだ、実際にそれを行なうってことを考えないかぎりね。というわけでまず、それは可能か?

さて、人間とチンパンジーはたくさんのDNAを共有しているね。彼らは人間より染色体が1組多いけど、染色体の数が違うってことは異種交配の絶対的な障壁にはならない。事実、その種の個体の中には、染色体の数がちがうものもいるし、彼らはうまくやっているよ。染色体多型として知られている状態だね。

実際に2010年には、完璧に正常な繁殖力を持った中国人の男性が、22の染色体しか持っていないことが発見されたんだ。

結局のところ、人間とチンパンジーの間の遺伝子的な差異は、ウマとシマウマの間の遺伝子的な差異とだいたい同じだってことだ。シマウマとウマの交配種はつねに行なわれているよね。

人間の男性×メスのチンパンジーでマンパンジー

ここで専門用語について手短に言うと、遺伝学者がこういった名前のマッシュアップを作るとき、実際に彼らが交配動物についてやっていることなんだけど、彼らはその混成語に先に父親を置いて、母親を次に置くんだ。だからもしそれがオスのチンパンジーと人間の女性なら「チューマン」で、人間の男性とメスのチンパンジーなら「ヒューマンジー」か「マンパンジー」になるね。

そう、マンパンジー。

2006年に、5〜700万年前に生きていた人間とチンパンジーの最後の共通の祖先の後に、人間とチンパンジーの種族の間で120万年に渡って異種交配が行なわれていたということを、遺伝子に関する研究が示したんだ。

それはそんなに驚くことでもないね、というのはそれらの種族はよく似ていて、同じような場所に住んでいたから、でも古人類学者たちは、そのニュースが発表されたときはちょっとショックだったかもね。

でも近年の人間とチンパンジーの交配種の証拠はないんだ、それは試していないからじゃなくてね。

サルに自分の精子を注入した科学者

1920年代に、ソビエトの生物学者イリヤ・イワノフは、チンパンジーやオランウータンを含む何匹ものサルに自分の精子を注入した。

もっと気味の悪いことに、彼は人間のボランティアにサルの精液を受精させることを試みたんだ。

いいニュースは、彼はそれを失敗したってこと。悪いニュースは、その失敗は、彼の霊長類の被験者たちがおそらくひどく虐待されたせいでみんな死んでしまったからということ。

イワノフの研究はどんな種類の妊娠状態にもならず、最終的に彼の研究は詳細な調査の対象となり、ある意味当然、政府はひどく怒って彼をカザフスタンに追放し、彼はその2、3年後にそこで亡くなった。

そのとんでもない研究が、人間とチンパンジーの交配種が可能かどうかについてぼくたちが確実に知ることができる範囲だ。そして幸運にも、ぼくたちが今後確実に知ることができる最大のものだろう。

それを行なうことが可能であろうとなかろうと、ぼくたちはみんなそれをやるべきじゃないってことに同意できるよね。