記録的な世界同時株安の背景

堀潤氏(以下、堀):さぁ続いて、ベンジャミンさん。テーマの発表をお願いします。

(テーマ「世界同時株安」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):中国の証券監督当局は昨日、大株主への株式売却規制を改めて適用しましたが、上海市場の株価下落を抑えることができず、株価の先行きは依然として不透明なままです。

:上場企業の株式5パーセント超を保有する大株主の株式売却を3カ月間で発行済み株式数の最大1パーセントに抑える規制を適用しています。

こうした動きは東証にも影響します。中国経済の先行き不安や、中東情勢の緊迫化の影響を受けて年明けから6営業日連続で下落。番組の冒頭でもお伝えしましたように、当然石油価格、原油価格の下落によって、中東オイルマネーの撤収というのも見られるということですね。

海運業界の異常事態

古歩道ベンジャミン氏(以下、ベンジャミン):私の分析は、まず今年に入ってから記録的な世界株安なんですよね。これは、単なる市場の問題ではなくて、世界の金融資本のトップの権力争いと、経済戦争なんですよね。その表れとして一番目立っているのが、これなんです。

これは、「バルチック海運指数」と言って。

:これはどういう数字ですか?

ベンジャミン:船の運賃なんですよね。

:あぁ……。

ベンジャミン:これはリーマンショックなんですよ。

:海運にかかるコストがわかると。

ベンジャミン:船で荷物を運ぶコストなんですよ。これは他の相場と違って、金融資本が入らないんですよ。操作できない。要は、実際に荷物を運ぶ人以外は、この指数に参加できないから、実体経済を表すには非常にいいんです。

これを見ると、異常事態なんですよ。今までになかった最低水準になっているんです。

:この辺りのスタート、1985年。

ベンジャミン:これ以下なんですよね。

:ここから2014年。非常にレンジの広いグラフになっています。

ベンジャミン:私は、ネットですべての世界の貨物船が今動いていないというとんでもない記事を読んで、本当かなと思って、日本郵船、日本の大手に電話して。「本当です」って。要は、今船を動かすだけ赤字なんですよ。だから、世界の貿易は今一時的に止まっているという異常事態なんです。

株式市場の構造的な問題

:これ、値段としてはどれくらい、今どういう動きをしているんですか? 下がっている?

ベンジャミン:リーマンショック前の1万ドルが、今は20分の1以下なんですよ。95パーセント下がっているという異常事態なんですよ。

:ここがリーマンショックですね。ガクンときて。さらに下がっていますということですね。かなり世界的に経済情勢が良くないということ。

ベンジャミン:金融戦争でドルを使うか人民元を使うかという戦争があって、その一環で今全部止まっている状況です。

:全部止まっているということは。

ベンジャミン:すべての新聞のトップ記事になるはずなのに、どこも触れていない。私も、まさかと思って、自分で確認の電話をしたんです。

このままだと船を動かすだけで赤字が出るので、この状況は長続きしない。日本の場合は食料そのものが入らなくなるし。

これで、なにかのリセットがあるんじゃないかと言われているんですよ。要は、金融の仕組み事態がリセットされる。

例えば、アメリカの軍、金融専門家、CIAの専門家にも取材したんですけど、彼らは株式市場のあり方自体に問題があると言っているんですよ。

どういうことかというと、今、民間中央銀行がお金を刷って株価をかさ上げするんですよ。例えば、リチャード・W・フィッシャーというダラスの米連銀の総裁も言っていたんです。「我々は株高を演出しました。経済を活性化するためにやったと言っていたんですけど、結局失敗しました」という発言をしました。CNBCのテレビで。

中央銀行が民間であることをあまり理解されていない。民間中央銀行がお金を刷って株高を演出しているけれども、一部のインサイダー経由ですから、ある意味では非常に構造的な横領で。

それはアメリカの当局が「このままだとすべての株が、ほんの僅かの一部の人の手に入るので、そのあり方自体を考えましょう」ということで、世界経済、金融のリセットが見られる。

アジア投資インフラ銀行の開業

そのほかに確認できるニュースとして、IMF(国際通貨基金)は、5年間アメリカ議会が改革案を拒んでいたんですけれども、やっと容認しました。それで、新興国の発言権が増えました。ちょっと遅いんだけれども、この70年間続いた戦後の国際金融の仕組みが時代遅れということを認めている。

すでに、ご存知の通り、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、 AIIB)にヨーロッパの国が……。

:参入していますね。

ベンジャミン:イギリス、フランス、ドイツ、ヨーロッパの金融資本がみんな入って。昨日、私はアジア開発銀行の幹部に電話取材したら、日本も入ると言っていました。「入るとしたら、AIIBの発足が16日にあるからその時に発表があるのではないか」と本人が言っていたんですけれども。

:ちょっと注目ですね。

ベンジャミン:本当かどうかというのは、これから見えるんですけれども。

大手金融機関が直面する倒産の危機

:これ、「外交不定期船の運賃指数」ということは、定期便と不定期船があって、不定期船の数字ということなんですよね。

ベンジャミン:このほかに、ここにはないけれど、上海コンテナ貨物指数(SCFI)があるんですけれども。バルチック海運指数はどちらかというと、商品ですね。鉄とか麦とか。上海コンテナ貨物指数は産業製品なんです。それも同じく最低水準に達しているんです。

:中国のGDPを読み解くときとかも、実際の貨物の輸送量などで実体経済を測ったりしますね。

ベンジャミン:その他に、ここに出ていないんですけれど、石油の値段が20ドル切っているところもあります。だいたい1年契約なんですよ。みんな、先物でヘッジするので。1年前は70ドルだったんですよ。今は20ドルですから。年末までは70ドルで契約していたので良かったんですけれども、これからくるんですよ。

:先に先にね。

ベンジャミン:人間に例えると、失業保険が切れちゃって、これからホームレスになるというのが、多くの大手金融機関がこれから直面する動きなので。

リーマンショックのときにリーマンブラザーズが倒産しましたけれども、今言われているのが、リーマンブラザーズみたいな大手が2、3ヵ所潰れるんじゃないかということまで言っているんですよ。

:これは、網屋さんどうご覧なられますか。

網屋信介氏(以下、網屋):さっきおっしゃったように、日本の場合もそうですけれど、日銀が株式のETFとか債券もそうですけれども、テコを入れていますね。これは、いろいろな中央銀行がやっているわけですよね。いつまでもできない。どこかで終わってしまう。

人工的と言ったら語弊があるけれど、できた相場というのは、自然の流れる中で相場が上がっていけばエグジットができるんだけど、エグジットができないものがここできちゃうと、どこかで強制的にランディングをしなければいけない。

:そうかぁ......。

ベンジャミン:中国政府も実は、株安になっていいと言っているんですよ。自然の価格まで下りるまではいいんだよと。バブルになっていいと言っているんで。

今月、来月、金融ニュースが大きく動くと思います。

:バルチック海運指数、ちょっと。

ベンジャミン:これは、八百長できない指数ですから(笑)。

:八百長できない!(笑)。ありがとうございました。

本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。