2016年夏の参議院選挙

堀潤氏(以下、堀):さぁ、網屋さん。テーマの発表をお願いします。

網屋信介氏(以下、網屋):政治の問題ですけどね。参議院選があります。キーは何かというと「大阪より愛を込めて」

(テーマ「大阪より愛を込めて」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):安倍総理大臣はNHKの報道番組に出演し、夏の参院選について「自公と改憲派で3分の2を目指す」と語りました。

:改憲派の皆さんが3分の2以上を占めるにはどういう条件があるのか。

自公両党は、衆院ではすでに3分の2以上の勢力を確保している。少し物足りなさを感じている与党側、どこに? やはり、参議院にですね。参院選での自公両党の改選議席は59で3分の2に届くには86議席の獲得が必要。これ、けっこうな数ですよ。

大阪維新の会と日本のこころを大切にする党を加えると、4党で78議席取れば3分の2に達するということなんです。そこで……。

自民党、与党が3分の2の議席を獲得するには

網屋:今お話の通り。衆議院ではすでに3分の2あります。参議院で3分の2に達するのに86議席必要なんですね。ただ、今度121議席の改選なんですけれども、非改選が76議席、自民党で改選が59議席あるわけですね。公明党が9議席。

大阪維新は今後どうなるかわかりませんけれども、実際には2議席しかない。これを上乗せするには、27議席必要だと。

民主党を潰すカギはおおさか維新の会

まだ、いろいろ流動的ではありますけどね。27議席っていうのは、かなり厳しい。おそらく普通に考えて自民党、与党側が勝ったとして、15〜20議席。それでも10いくつ足りないと。

そこのポイントは何かと言うと、おおさか維新という新しい政党がどれくらい愛を込めて全国区に行けるかどうか、というところが実はキーポイントだと思うんですね。

おおさか維新の会の支持率が上がって、どうももっと勝てそうだということになると、これは統一選までやってもいいんじゃないかと。

つまり、それであれば民主党を潰せるんじゃないか、っていうところまで行く可能性があると思いますね。ですから、ここが一番のキーポイントかな。

:二階(俊博)さんが、「安倍総理はやりたかがっているらしいよ」なんて話をポロッとされて。やっぱりそういう方向を随分割合としては高く考えたほうがいいのかなという。

憲法改正の手続きを定めた96条

網屋:ただ、3分の2が何を意味するかというと、これは憲法の改正に必要な議席数ということになります。じゃぁどうか、というところですよね。

:国民の側も、「そんなにたくさん、ぽんぽんといかせていいの?」という。

網屋:ですね。

:ブレーキも一方で働くんじゃないんですか。

網屋:同時に、自民党、公明党、その他いわゆる保守勢力というのは、みんな憲法改正賛成か、これは微妙なところだと思いますね。

昔は自民党がずっと政権を取っていた時代は、いわゆるリベラル派と保守派というかたちで、憲法守っていくぞと。いわゆる宏池会中心に。そういう部分がどういうふうに動くのかというのが次のキーポイント。

:ただ、谷垣さんなんて随分この数年間に変容したかなという。「あれ、あの谷垣さんがこんなに激しいこと言うの、こんなに強硬な姿勢するの?」というように。自民党内のかつての宏池会の皆さんも、随分変わったんだなっていう。

網屋:それは、憲法改正というのは、憲法を全部変えるわけじゃないんですよ。これを法律の考え方で言うと、憲法を一部変える、例えば3ヵ所変えたい場合は3つ投票しないといけない。

例えば、9条いきましょうと。前文にいきましょうと。(「No.96」のフリップを指して)次はこれですね。

:No.96。

網屋:第96条。これが何かと言うと、憲法改正の手続きを書いた法律ですね。衆参で3分の2。これを提案して、そして国民投票で過半数と。実際、自民党の自民党憲法改正草案の中に入っているわけです。

:そうですねぇ。

網屋:これを、例えば過半数とかに変えてしまえば、過半数を取った時点で他のところを変えられちゃうと。「これだけ変えますよ」っていうと、なんとなく9条変えないから、「それくらいだったらいいんじゃないの」っていう国民の意識が高まる可能性はある。

ここは、実はトリックかもしれない。

:実を言うと、安倍さんは当初からこの96条については、政権を取った直後から発言をしている。ただ、なかなか国民世論もついてこないじゃないかということで、いつの間にか改憲の話については後退させて、経済政策のほうで選挙を戦うと。いよいよ96条の改正から本格的に入っていく。

網屋:可能性はあります。前回の選挙の時だって、安保法案のことなんかほとんど言ってませんからね。「経済! 経済! 経済!」って言って勝ったら、次は安保法案。だから、そこはよく考えて。投票する方は。

憲法改正に対する一般世論

:憲法改正については、皆さんどういう意見なのか。視聴者の方のご意見を聞いてから皆さんと議論していきましょう。

「憲法改正、必要だと思いますか?」せーの、どん! 「思う」885票、「思わない」669票。わずかながら「思う」が上回りました。あとは、憲法改正のどこを改正するのかということについては、皆さんいろいろご意見があると思います。

「緊急事態条項というものが必要だ」という方もいれば、「9条本丸を考えて、自衛隊の皆さんの安全を考えよう」という方もいれば、「より大きく構造的に変えたほうがいいんじゃないか」とかね。

古歩道ベンジャミン氏(以下、ベンジャミン):アメリカは中国の一人勝ちにならないために、韓国・日本・アメリカ軍・ベトナム軍・オーストラリア軍などを連携させたいので、アメリカがそういう意思があって憲法改正を押しているんじゃないですかね。9条ですね。

要は、世界戦略の中で日本もアメリカと組んで中国を抑えるという考えですから。それが裏であるんですよね。

:そうなってくると、当然安全保障の観点で言うと、関わりのあるのは9条になりますもんね。

桜林さんはどう思われますか。憲法改正議論について。

自衛隊法の改正

桜林美佐氏(以下、桜林):アメリカの思惑もあるかもしれないですけれども、やはり、自衛隊が今の時代この憲法下では非常に手足を縛られていて。おっしゃったように、むしろ危険を伴って任務を遂行しなければいけないとか。あるいは、他の国、友軍にもひんしゅくを買うようなことをしなければいけないと。歪みが出てますね。

:軍隊でないということは、軍法会議がないということになりますから、そうなってくると警察から発展した自衛隊が海外の軍隊と同時にオペレーション組めるのかどうかという話にもなってきて。

桜林:海外の人たちは、そんな細かい事情を知らない人も多いですから、「なんで助けてくれないの?」ということになりますので。

もし自衛官が友軍を守るために、例えば発砲するなどとして、怪我を負わせた。それが事件になって、日本に帰ってきてどこかの地方裁判所か何かで裁かれるみたいな構図が今ありますので。それはどう考えてもおかしいと思いますけどね。

:網屋さん。

網屋:それはね、自衛隊法の改正でもかなりカバーできるようなこと。

:憲法をいじらなくてもね。

網屋:ただ、おっしゃる通り、時代と共に合わなくなった部分がある。もう1つは、今自民党で一番憲法改正に必要なのは、基本的人権の一部規制というのがある。

:ありますね。

網屋:例えば、それをすることによって、国の利益に反するものについては、ある程度政府がそれを強行できる。例えば、辺野古の問題は解決しますね。原発の場所をどうするかっていうのも解決しますね、というところで変えたいという動きはありますね。

:自民党憲法改正草案というのは、番組でも時々紹介してきたんですけど。ホームページをパッと見ると出てきますので、一度ぜひご覧になってみたらいいと思います。

あともう1つ最後に。「大阪から愛を込めて」なんですけど。実際、大阪維新というのは、一般世論にどれだけ受けるのかという。

網屋:これはなかなか難しい。維新の会の皆さんにはちょっと悪いけど、やっぱり橋下政党という意味合いが強いので、どうしても今の維新の会と大阪維新の会だと、大阪維新への注目度がどうしても高くなっていくと。そうすると、その度合いがどれくらいかなというのが、実は今回の3分の2のキーポイントかなという気がします。

:政局よりも政策の中身をいろいろ議論したいところです。ありがとうございました。