シャッター商店街の電気屋さんの逆襲

堀潤氏(以下、堀):さぁ続いて、中谷さんテーマの発表をお願いします。

中谷彰宏氏(以下、中谷):はい。僕のテーマはこれです。

(テーマ「値上げをすると、売れる。」について)

中谷:サブタイトルはこれです。

(サブタイトル「商店街の電気屋さんの逆襲」について)

中谷:僕、実家商店街なんで。

:あ、そうですか!

中谷:だから、シャッター商店街をなんとかしていきたい。

:知りたいですねぇ!

脊山麻理子氏(以下、脊山):調査会社BCNが昨年11月に発表したデジタル家電の市場動向調査によりますと、昨今手頃な価格帯より「ワンランク上の高付加価値モデル」を求める傾向が消費者の中で高まっていることが明らかになりました。

:以前から二極化してきたというのはあるんですけれども。「ちょっと贅沢」みたいなものも、非常に市場が広がってきたと言われてますよね。

販売台数が伸びる高付加価値モデル。例えば、4Kテレビ、画面が非常にきれい・高画質。前年比264.9パーセント。全録レコーダー、これは1週間分のすべてのテレビ局の番組を録画できるという高機能です。前年比378.3パーセント、3倍近く。

軽量ノートPCもそうですし、いわゆる高音質なハイレゾ携帯オーディオも前年比で200パーセントを超えているということです。高付加価値モデルが好調。ただ、その話と中谷さんのシャッター商店街……。

中谷:今のを見ると、「景気がいいんだな」とか、「デフレ脱却」とかいうような空気になるんですけど。実は時代の流れというのは、反転していくことで世の中は変わっていく。エスカレートしていくんじゃないんですね。というのは何かと言うと。今、商店街の電気屋さんで売られている電気製品って定価なんです。

:あ、そうなんですか!

中谷:ぜんぜん定価なんですよ。

今まではシニア層だけだったのが、若いOLの人たちも買うという。なぜ定価で買うのか? 家で電球変えてくださいって言ったら、すぐ来てくれるから。今までそれは量販店ではできなかった。価格設定が変わってきた。

12万円のオムレツに需要が生まれるのはなぜ?

中谷:1つ紙芝居を。

価格は何で決まるか? 今までは、原価で決まったり、相場で決まったり、お客さんの言い値で決まっていた。

これで言うと、経沢さんみたいな人が出てくると、ITで一番安い1社の勝ちになる。ITが何を変えたかといったら、値下げ競争に勝負がついちゃったということなんですよ。

:一瞬で選別して見せてくれますからね。

中谷:量販店で説明を聞いて、「価格.com」で調べて安いのを買う。量販店で「その計画はやめてください」という表示まで出てるから。

実際は、定価でも街の電気屋さんで買う。それはなぜかというと、顧客にとっての価値があるから。

何か使い方がわからないと、相談に乗ってくれるとか。それから、電球1個とか小さいものでも、「使い方わからないんだけど」って言ったら来てくれる。こういうことをやっているわけです。

:ガソリンスタンドも、セルフサービスがバッと広まりましたけど、一方でフルサービスのガソリンスタンドの価値というのが。

中谷:ガソリンスタンドのサービスが変わりましたよね。

:えぇ。すごくわかるようになったり。

中谷:顧客の価値とは何かというと、今までは売り手の価値が値段を決めていたんだけど、例えばある一流ホテルで、1人前12万円のオムレツが出たんですね。12万円ですよ。どんなに入れても、原価1万円超えないですよ。

ドンペリだったら驚かない価格が、オムレツで12万円だったら、これは価値が生まれる。それで、その商品を作っただけでテレビ局の取材が入っています。ということは、無料で広告です。

:そうかぁ……。

中谷:それを食べに来た人が、また(TVに)映っちゃうんですよ。「あの社長さんとこ、景気いいな」とか、モテモテになるとかいうことが生まれたりする。

高付加価値のサービスを提供するメリット

:モノ単体での商売、ビジネス、儲けじゃなくて、付加価値を周辺にたくさん作る戦略が大事ってことですか。

中谷:この時に、付加価値を付けるというのは、今までだとオプションのサービスを付けるということだったけれども、これがまったく違う状況なんですね。

例えば、マッサージ店。マッサージ店は、通常の相場って、10分1000円ですから、1時間6000円なんです。このマッサージ店が1時間5000円にして客数を増やすというかたちにすると、お客さんからクレームが来るんです。

「今まで5000円でできたじゃないか!」って。今まで損したみたいな。7000円にしたら、「何か儲けようとしているな」と。これが、客数をあげる、客単価を上げるという今までのマーケティングだったんですね。

これに対して、1時間3万・5万・10万のメニューを作ったらどうかと提案したら、お客さんが、「10万のメニューをお願いします」って実際に来るんです。

:えっ! ここにバリエーション付けて。

中谷:そうすると、客層が変わったと。クレームは一切出ないです。6000円の客層と10万円の客層と、違う新たな客層が生まれて。

そういうところって、「じゃあ、そこってお客さんっているのか?」と言われた時に、市場というのは、顧客の数では決まらない。「顧客の数÷事業者数」ですから。その事業者がいないということ。高付加価値の値段の高いところの事業者が少なかったら、結果としては……。

:お客さんが生まれないってことか。なるほど!

中谷:結局、お客さんの数で割れば、そこに依頼するしかないっていう。

:旅館業界で、日本のホテル・旅館は、海外に比べるとハイエンドな層が少ない。例えば星野リゾートは、そういうところを作るべきだと言っていたのが、まさに中谷さんが言っていたように。

中谷:実際日本にもハイエンドの顧客はいるし、それから星野リゾートは世界を相手にしてますから。世界を相手にすると、日本のホテルのプレジデンシャルスイートというのは、30〜50万円なんですよ。世界は、500〜900万円ですから。そういう人が来る。

そういうハイエンドな人たちが日本に来たら、なかなか自分たちが安心して泊まれるところがない。

提案すると、メリットは何があるかというと、1つは時間が生まれるんですよ。自転車操業から抜け出すことができる。顧客との関係を作る時間、勉強をする時間が生まれる。定価で売っていると。

:今まで10人さばくのに必死だったけど、半分になってもその分余裕がちゃんと。

中谷:それから、研究開発ができる。これは、回転寿司の中でくら寿司が抜け出した。くら寿司は、人工知能化している回転寿司です。今は値下げをしたところが倒れていって、こうやって値段を上げていくところが伸びていく。

それから、社員のモチベーションを上げるのが一番大変ですよね?

経沢香保子氏(以下、経沢):そうですね。

中谷:値段を上げることによって社員のモチベーションが上がっていくという。こういうメリットがあるということですね。

:なるほど。

経沢:目に見えないものに対して、価値を感じる時代になっていると思うので、そういうサービスが価格に反映されていく。

私も、今ベビーシッターサービスをやっていますが、。「安ければすごく使うかなっ」ていう発想もありましたが、高い人も予約はいっぱい入りました。時給はシッターさんがみんな自分で決めているんです。

だから、自分にふさわしい価格、自分に合ったものを、それは値段を超える場合っていうのは、特に、サービスに関してはあるんじゃないかなと思います。

:1人あたりのGDPって、日本ってどんどん減ってきてますから、逆にそういうかたちで、付加価値を生み出していくようなことに転換していけばいいですよね。ありがとうございました。

本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。