サイバーエージェントの人事評価制度の裏側を大公開!

高橋恭介氏(以下、高橋):皆さんこんにちは。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。株式会社あしたのチーム代表取締役社長の高橋恭介です。

本日は2時間という貴重なお時間をいただきまして、2部構成で進めさせていただきます。早速ではありますが、サイバーエージェント人事統括本部・武田様と、私が聞き手、そして武田様が話し手という形で1時間、話を進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

まず私の自己紹介ですが、お手元に昨年4月、学研さんから発刊させていただいています『会社選びの新基準』という書籍を皆さんにお持ち帰りいただきたいということでお持ちしました。

会社選びの新基準

1枚めくっていただきますと、もう少し細かい私の自己紹介、プロフィールが記載されていますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

そして、語り手であります武田丈宏様の今日1時間お時間をいただいておりまして、略歴に関しましても、今、投影させていただいている内容でご確認いただければというところです。

もうサイバーエージェントに入社されて13年目というところで、人事本部への異動から3年ですね。人事に異動されたことは、ご自身のキャリアの中では大きな転機であり、本業のインターネット広告事業本部で西日本の統括をやられている中での人事本部への抜擢だったのではないかと思いますが、そのへんいかがでしょうか。

武田丈宏氏(以下、武田):人事の異動は、ぼくの中ではキャリアチェンジではなく、西日本の責任者だったり、名古屋のほうの責任者だったときも人事的なこともやっていましたので、思いのほかすんなりという感じではありました。

高橋:今、さまざまな人事の最先端の施策に取り組んでいらっしゃいます武田様の具体的な内容に関しましては、この後、じっくりお聞かせいただきたいと思います。

それでは改めて、すでに知らない方はいらっしゃらないほどの有名企業であるサイバーエージェントについて、直近の数字とか、今日は人事の話でもありますので、従業員数の内訳等をお聞かせいただきたいと思います。

武田:98年の設立で、今、東証一部に上場しています。大きく3つの事業をしていまして、1つはアメーバブログを中心としたインターネットのメディア事業、あと私も10年くらい所属していましたがインターネットの広告代理事業、そしてスマートフォンを中心としたゲーム事業の3つの柱でやっています。直近9月決算で、売上2500億、純利益320億という規模になっています。

利益は、ゲームにおいては一番新しく立ち上げてまだ5年くらいですが、320億の営業利益のうち、メディアとゲームで200億を稼ぎ、広告事業で120億というバランスのいい形で3つの事業でやっています。

従業員は社員3500名、あと有期雇用(義務委託、派遣社員)を含めると7000名くらの規模です。男女比率は男性7割、女性3割。平均年齢が30歳くらい、40歳代が100人くらいで、ほとんど20代、30代が中心という構成になっています。

高橋:21世紀を代表する会社を作るということで、ホームページでも記載があります、創業社長の藤田社長とは、武田さん自身は定期的に人事面の課題についてお話されることもあると思うのですが、実際、そのへんはいかがでしょうか。

武田:話してないようで話しているみたいな感覚が正直なところです。何か定例ミーティングみたいなものを持っているわけではなく。役員が8人いるのですが、毎週木曜日の午前中に役員会があって、そこで人事の何らかの情報をわれわれが出します。そのフィードバックを、藤田ではなく、私の直属の担当役員からフィードバックをもらいます。

具体的にこうしろ、ああしろみたいなものをもらうことはあまりなく、何となくこういう考えでとか、ここは軸だから、みたいなフィードバックをもらいます。そこからまた考えてやっていくという感じなので、直接対話というより、役員会を通じたり、あとは藤田はブログなどを中心に発信をすることも多いので、そういったものを見て、彼の人事の考え方みたいなものを何となく理解するというのが正直なところです。

高橋:人事統括本部は総勢何名の組織体なのでしょうか。

武田:人事が40名くらいで、あとは広告であったりメディア、ゲームであったり、各部門に事業部人事みたいな者がいますので、それをカウントすると150名くらいです。

「適材適所」と「企業文化」を重視した人事評価制度

高橋:本題に入ります。初めに、サイバーエージェント社のように人材が豊富な会社において、経営上、大切にしていることというテーマでお話いただきたいと思います。経営で大切にしていることということで端的な文字をいただいていますが、この要素についてお話くだい。

武田:代表の藤田の言葉で、もともと「採用・育成・活性化」という3つのワードがありました。経営では、採用して育成し、しっかり権限委譲して、人を育てて社内を活性化していれば、だいたいうまくいくということで「採用・育成・活性化」というのを重要視しながら、藤田が10年以上、採用の現場に出たり最終面接をしたりということもやっていました。

ここ1、2年、採用・育成・活性化に加えて、「適材適所」と「企業文化」という言葉が出てきました。適材適所はこのあと少し触れる機会もあると思いますが、社内のヘッドハンティング部署みたいなものを人事の中に専門に設けていまして、まさに人材紹介会社のように社内の事業部側の人材ニーズを聞き、一方で社員といろいろ面談をして人材をプールし、そのマッチングをするような専門の部署があって、適材適所を図っています。

あとは、企業文化をしっかり根付かせていこう、また過去のいい部分を未来に繋いでいこうということで、カルチャー推進室という部署も作り、いろいろと企業文化の取り組みをしているという状況です。

高橋:そういう経営を支える人事としての位置づけは、実際どのようなものなのか。具体的に話を進めて行きたいと思います。

まず、ここ10年間の変遷を人事の切り口で見たときにどういう変遷があったのか、かなり多くの事柄が変わってきたのではないかなと思います。上場時100名、当然、創業時は数名からスタートしている、まさにゼロイチのベンチャー企業です。

今は正社員3500人を取り扱っている人事制度と、上場直後くらいの100名。たぶん今日いらっしゃっている企業様はまさにこの100名の壁を超えるか超えないその前後の方々が多いのではないでしょうか。営業会社からエンジニアリング中心の会社にというところも含めて、武田さんの実体験も交えて編成のお話をいただければと思います。

武田:私自身は2013年に人事にジョインしています。私が入社したのは200人くらいのときで、当時は広告の営業マンとして携わっており、人事の現場をやっていたわけではありません。

もちろん給与計算をしたり労務的なことをやったりという、いわゆる機能人事みたいなものはあったのですが、ちゃんと人事本部を作って人事に取り組んでいこうとしたのは2005年からでして、おそらく社員が400名弱くらいだったと思います。

以前は内部争いが多かった

高橋:逆に、400名まで人事がなかったということですか?

武田:名ばかりと言うと怒られますが。当時、喧嘩というか内部で争いがすごく多く、退職率も30パーセントで、3年いれば人が入れ替わるみたいな状況でした。そこで、私の上長である曽山という執行役員が人事に本腰入れてやっていこうということで2005年に人事本部を作り、価値観、ビジョンを明確に持って21世紀を代表する会社にしようと決めたと聞いています。

高橋:営業会社から技術者中心の会社にというところで、苦労されたり工夫されたことはありますか?

武田:やはり価値観も違いますし、例えば営業会社だと売上高とか、とにかく体育会みたいに盛り上げるという感じですが、エンジニアがいるとそれも変わってきました。しかし、われわれはまだ課題があると思っていて、いま半分くらいがエンジニアなので、評価制度も苦労しているところです。

高橋:これからの人事本部目線と言うと、サイバーエージェント内でキーワードになっている「コミュニケーション・エンジン」から「パフォーマンス・ドライバー」という言葉についてお話いただきたいと思います。

武田:人事としても21世紀を代表する会社を作ることが目指す方向性なので、人事としてどうあるべきかをよく議論しています。2005年から2015年の10年くらいは、価値観の違いもさまざまでしたし退職率も高く、どういうことをしたらいいのだろうという手探りの状態だったので、うまくいっている現場のチームの人に、どういうことをやっているのかを聞いて行きました。

対話を重視した「コミュニケーション・エンジン」

武田:そうすると、見えてきたことが1つありました。すごくシンプルなのですが、チーム同士でよく飲みに行って対話をしていたのです。対話、コミュニケーションをしっかりやることがすごく重要なのではないかということで、われわれ人事の役割として「コミュニケーション・エンジン」という言い方をこの10年間やっていました。

どういうことかと言うと、経営のメッセージを現場に浸透させたり、本質をきっちり現場に理解してもらうというところと、現場もさまざまな価値観、さまざまな意見があり、とくに100人から3500人、7000人と増えてきていますから、その中でどういうことが経営課題なのかという本質を見抜いて経営者に上げる。

その行ったり来たりという間に立つのが人事の役割ではないかということで、「コミュニケーション・エンジン」をこの10年やってきました。究極の管理職みたいなものですね。

それで退職率が今は9パーセントくらい、定着率もすごく上がって、働きがいのある会社でも上位(7位)にランクインするようになりました。ずいぶんできてきたので、次のステップに行こうということで、2015年、人事のシニアマネジャーなどが集まって話したときに、これからは人と組織で業績を上げる「パフォーマンス・ドライバー」になろうと決めました。

高橋:業績が上がる仕組みを増やすということで、今までのどちらかというと縁の下の力持ちから、仕組みで会社全体を牽引していくフェーズへと役割が変わって来られたわけですが、苦労されることも多くなり、会議が増えたとか、いろいろあると思うのですが、いかがでしょうか。

武田:苦労はそんなに変わっていないですね。人数も増えてきて、営業とゲームとメディアの組織があり、そもそも見ている方向も違ってきたりします。その中で、地上戦で人事をやることももちろん大切なのですが、横展開できるような仕組み、フレームワークを人事としてはたくさん作って、いいものを横展開していく。

その結果、パフォーマンスを上げるドライバーとして、業績が上がる仕組みを増やそうとしています。

高橋:仕掛けも含めということですね。

武田:はい。10人くらい人事のマネジャーがいるのですが、毎月1回集まって、フレームワークを1つ考えてプレゼンをするということをやっています。それは確かに使えそうだねというようなものを磨き上げて形にし、本当にいいものは部署横展開するようなことを毎月やっています。

高橋:人事の施策に対して、社員からのサプライズ感みたいなものもあるのですか?

武田:そこまででもないと思います。