空気が通るほうの穴は数時間おきに変わっている

ハンク・グリーン氏:さて今日は、ひどい鼻風邪をひいて鼻の片側が完全につまり、もう片側から鼻水が垂れてくる時のことを考えてみましょう。

不思議なことに、元気な時でも、つまってしまうほうの穴はいつも数時間ごとに変わっているのです。

なぜそんなことが起こるのでしょうか?

実際、風邪を引いたと気付く以前に、空気が通るほうの穴は日常的に変わっているのです。

これは「交代制鼻閉」と呼ばれていて、8割程度の人が経験するようです。

交代制鼻閉の人は、片方の鼻孔の中が腫れたようになり、反対側より空気が通りにくくなります。4時間ほどで腫れはしぼみ、反対側に移ります。

そもそもどうして鼻の穴は2つあるのかについても考えてみましょう。そのほうがかわいいから、という以外の理由ですよ。

鼻の穴が2つあることで、呼吸の負担は半分になり、匂いに敏感になれます。

そもそも鼻には、肺と外の世界をつなぐ役割があります。外がどれだけ寒かったとしても、肺には暖かくて湿った空気を入れないといけませんが、鼻を通ることで、温め湿らせることができます。

時にはあまりに冷たく乾燥した空気が鼻に入ってくる時もあります。

気道の中には「線毛」という小さな毛がありますが、乾燥した空気によってその線毛も乾いてしまいます。

すると、線毛から粘液がなくなり、空気中の粒子を捕まえて、肺に行かせないようにできなくなります。

しかし、鼻の中でそうした空気の流れを緩やかにすることで、線毛をいたわることができるのです。

空気の流れる速さを変える意味

交代制鼻閉は匂いを感じやすくする役目もあります。匂いを感じるというのは、空気中の浮遊物質を嗅ぎ分ける、ということです。

浮遊物質は鼻の中の受容体と、一時的ですが科学的に結合します。

すると受容体は脳に信号を送り、脳は「お、匂ってる匂ってる」と反応するわけです。

ところが、浮遊物質の中には、より受容体に吸着されやすいものもあります。そうしたある意味「くっつきやすい」匂いは、吸い込んだ空気の中でより早く流れていかないと嗅ぎ分けにくいのです。鼻の入口付近でのみ吸着されてしまい、奥のほうまでは届かなくなってしまうからです。

一方で、そこまで「くっつきやすくない」物質は、ゆっくりした空気の流れでも奥の方まで届きます。

つまり、人間の鼻はそれぞれの穴で空気の流れる速さを変えることで、たくさんの種類の匂いを嗅ぎ分けられるようになっているのです。

風邪をひいた時には不便に感じるかもしれませんが、交代制鼻閉のおかげで、肺にちょうどいい空気を送ることができ、チョコレートのような複雑な香りも楽しめるのはありがたいですね。

質問ですが、あなたはどっちの鼻が今通りやすいですか?

わたしはこっちが……通りやすくて、こっちはつまり気味です。交代制鼻閉じゃなかったら、ぜひ聞かせてもらいたいですね。