雌鳩も雄鳩もミルクのようなものを作る

ハンク・グリーン氏:白い鳩(dove)が平和や純潔の象徴であることはおなじみですが、一方、鳩(pigeon)は不潔や疫病の象徴です。この2つは同じ種類のものですが、実際にはほんの少しだけ違いがあります。

鳩(dove)と鳩(pigeon)は両方とも同じハト科に属しています。ハト科は308種類もあり、アフリカを除く地球上のあらゆる場所に生息していて、様々な大きさと色があります。

ドードーは絶滅しましたが、七面鳥の大きさのハト科の一種です。

カンムリバトは、最も大きな種族で、ヨーロッパやアジア大陸を除く新世界の地上に生息しますが、その数は極めて少なくなっています。

実に多くの種類の鳩を生活の中で見るかもしれませんが、鳩は鳩乳といわれるミルクを出すということを知っていますか? 正確にいうと、乳成分を分泌するわけではなく、ミルクによく似た物質を作るのです。これは全ての鳩の種族、そしてフラミンゴとコウテイペンギンの雄にも共通することです。

ミルクは鳩乳あるいは素嚢乳(crop milk)といい、脂肪とたんぱく質を豊富に含んだ物質が、雄と雌の親から排出されます。素嚢あるいは喉袋といわれる、食物を蓄えるための部分に、孵化前と授乳期の1カ月のあいだ、変化した物質が貯められます。鳩乳は、たくさんの抗酸化物を含んでいて、哺乳類の乳と同じように、ヒナの免疫系統を高める働きをします。

鳩が頭を振るのは何のため?

また、鳩は良く見えるように頭を上下に振ります。多くの鳥はミック・ジャガーのように頭を回して周りを見るのですが、鳩は例外です。ひとつには、足が体躯の後ろ側についているため、バランスをとるからだといわれています。もうひとつには、このようなスウィング、つまり首振りは、視界を安定させるために行なわれます。

我々人間は、視界を定めるのに、固定された場所から頭を回すので、頭を上下にゆすりながら歩く必要はないですよね。しかし、鳩はより動きの激しい外界に生きています。鳩は動く物体を見ると、頭を静止します。そのため、体が動いているときに、ひとつの場所に頭を固定する必要があるのです。これによって、できるだけ長い間、体を動かしながら、鳩は動き回る昆虫に視線を固定できます。

1970年代のバリー・フロスト博士の実験によって、鳩が踏み車のようなスピードで歩く間、周囲の世界の中で何を認識しているか実験したところ、頭部は実際には動いていないことが判明しました。

鳩が遠く離れた場所から帰ってこられる理由

3番目は、鳩はとびぬけた聴覚があり、戦争では英雄のように称賛されたことです。何世紀もの間、鳩は伝書鳩としてメッセージを運ぶ仕事に使われてきました。ペルシアの王も、皇帝ジュリアス・シーザーも、第一次世界大戦の兵士も鳩を用い、何千何百というメッセージが運ばれました。

その中でも有名な一羽は、米陸軍通信隊がフランスで用いた600羽の軍鳩の1羽で、「シェ・アミ」と呼ばれています。

彼は銃弾によって足を撃たれながれも伝達を運ぶ任務を全うし、その英雄的な行為によって、最終的には勲章を授与されました。翌年死んだとき剥製にされ、現在はスミソニアン博物館に保管されています。このように、人類は、鳩がはるか遠くは離れた場所から帰り道を見つけるという習性を理解していましたが、その原因は未解決のままでした。

ジョン・ハグストラム博士の研究では、鳥は低周波音を用い、一種の音響として認識し、家に帰るまでの道標とします。鳩は、0.1ヘルツ以下までの低周波音を聞き取ることができ、一方人間は最上の実験室のコンディションにしたとしても、最低でも12ヘルツまでしか聴きとれません。

レース用の鳩は、周波数を拾いながら飛行するのですが、超音波のコンコルドが近くを飛ぶと、超音波の介入により、鳩の方向感覚は混乱します。また、天候、地形や空気が変化することにより、鳥も迷うことになります。

どうです? 鳩のいろいろなことがわかってきましたね。