通知カードと個人番号カードは別物

脇貴志氏:さて、ここまでのお話の中で注意点がいくつかあります。注意点というのは、イコールそのまま皆さんの問題点、つまり課題になります。これは絶対に混同しないでくださいという話です。

まず1番は、通知カードと個人番号カードは違います。今回のように制度や法律が変わる場合に、まず皆さんが心がけなければいけないのは、言葉の定義をきちっと理解しておくことです。これ、すごく大切なんですね。

自分勝手に「私はこう思ってたけど、ルールは違ったんだ」というのは通用しないわけです。要するに国が決めたルールなわけですから、国が決めたルールを適切に理解しておくということが大切なんですね。

通知カードと個人番号カードはどのように違うのかというと、今、皆さんのお手元に届こうしているのは「通知カード」です。通知カードであって「個人番号カード」ではないわけです。通知カードと個人番号カードは何が違うのかというと、通知カードは全員の手元に届く、個人番号を証明する、公的写真がついていないために身分証明にはならないカードです。

「あなたの番号はこれですよ」と言っているだけの話ですから、その紙にはそんなに大きな効力はないわけです。ただ、無くしたら大変になりますから、無くさないでください。

もう1回言います。通知カードは公的書類にはならないわけです。だから個人を証明するものにはなりません。そして一方、個人番号カードというのは通知カード+身分証明証の役割をしますので、これは公的な自分の身分を証明する証明書になります。

そして、ここが重要なのですが、個人番号カードは市区町村に申請しなければ発行されません。私の手元にはまだ通知カードが届いていないので、知識レベルの話をするしかないんですけども。

通知カードの中に封筒が入っていて、その封筒に記載事項と自分の顔写真を1枚入れて送ったら、「いついつぐらいに取りに来てくださいね」と言われ、そのときに行政の窓口に取りに行ったら、写真入りの個人番号カードをもうもらえるらしいです。

ここに関しては私はまだ通知カードを受け取っていませんし、申請の手続きが終わっていないので、経験を元に言う話ではなくて、知識レベルで話すしかないですけれども、そういう話らしいです。

国の決めたルールに従って準備を

だから個人番号カードを取得するためには通知カードをもらったあとに、具体的な手続きをしなければいけません。

さて、ここからが問題なんです。ここまでの話はどうでもいい話なんですね。「ああ、そういうふうな定義なのね」ということでいいんです。ここからが問題なんです。

皆さんはまず1月までに何をしなければいけないかというと、給料をお支払いする、あるいは園からお金をお支払いする個人の方々の個人番号というものを集めなければいけないわけです。

マイナンバーを提出してくださいねと言われた側、例えば私だったら「この番号が脇貴志の番号であるということに相違ありません」ということを証明しなければいけないんです。

逆に言うと、証明させるためには、皆さん方には本人確認義務が生じるんです。となった場合に、私が頭の中で推察している、多分こういう事故が起きるだろうな、こういうトラブルが起きるだろうなというものの1つはこういうものです。

各個人から通知カードを見せてもらいました。あるいは通知カードをコピーしました。「あなたは何番ですね」と給与台帳みたいなものに番号を書きました。

でも通知カードだけでは本人確認はできていませんから、通知カードを提示する場合は、あなたが本人であるということを証明するもう1つの書類を出してくださいということになります。

つまり、国からあなたの職場に対して「あなたはどういうふうに番号を取得したんですか?」と言われた場合、「うちは全員に通知カードを持ってきてもらいました。毎日接する人だから、本人だというのはわかっています。だからうちは通知カードだけでやりました」というのではダメなんですよ。通りませんよ!

もう1回言います。国が決めたルールに従ってやらなければいけない。私がどうだとか、そんなことは聞いていません。あなた方の意見は聞いてないんですというのが国の作った仕組みです。「こういうふうにやれ」といっているわけだから、こういうふうにしてください。

マイナンバーには個人番号と法人番号がある

あるマイナンバーに関するある調査では、「個人番号カードを取得しますか?」という質問に「取得します」と答えた方々は26.7%だったそうです。ということは7割以上の方が「持たなくていいよ」と思っていらっしゃるみたいなんですけれども、そうだとしたらよけいに大変な話になるわけです。

つまり、「通知カードと、もう1つ証明書を出してください」と毎回言われてしまうわけです。そういった意味では、私なんかは絶対に個人番号カードを早く申請して、早くもらおうと思っているわけです。

なぜかというと、私はみなさんの家に行ってセミナーをすることがありまして、そこでお金を現金でいただくことがあります。その時、みなさん方が私個人に現金で支払うのであれば、私の個人番号をみなさんが取得しなければいけません。

そして番号を取得する時には、その都度本人確認をしなければいけないんです。常に通知カードと免許証を出していたら面倒くさいじゃないですか。

さらにここからがもう1つの話なんですが、私が個人ではなくて「このお金は法人でいただきます」といった場合には、今度は法人番号という話になります。

みなさんが番号を取得しなければいけない時というのは、お金を支払う時です。それは個人であろうが法人であろうがお金を支払う時。それはどうしてなんですかというと簡単で、税金に関する話があるからです。それを1月から始めなければいけないわけです。

個人番号と法人番号はどう違うかと言いますと、見た目からして違うんですが、個人番号は12桁ですが、法人番号は13桁です。そんな話はどうでもいいですよ。

何が大きな問題かといいますと、利用規約がまったく違っていて、個人番号は目的外使用に関して厳格な制限があります。そして、これが漏えいしてしまった場合には罰則規定もあります。いいですか? 罰則規定もあります。

法人番号に関しては、原則、自由に利活用できますから、そういった意味では、法人番号のほうは周知の目にさらされても別にかまわないわけです。

だから私は、今、個人的にセミナーを受けているというのは1本もなくて、「全部会社のほうに振り込んでください。あるいは会社として領収します」という形なので、みなさんには個人番号ではなくて法人番号をお教えすることになると思います。これは頭の中できちんと分けておいてください。

個人番号と法人番号の取り扱いの違い

2つのことを言いました。1つは通知カードと個人番号カードはまったく意味が違いますということ。そしてもう1つ、個人番号と法人番号はまったく違うものということ。

要は管理の仕方に関してまったく違うということです。だからたとえば企業CMで「何とかと入れて検索」というのがありますよね。おそらくマイナンバーが流通し始めたら、13桁の番号をパーと出して「この番号を検索」というふうな話になるんじゃないかなと思うんですよね。

そうすると、たとえば同じ社名ってありますよね。法務局が管理している土地(同じ地域)の中では同じ社名はダメなんですけれども、それ以外のところだと同じ社名ってたくさんある。たとえば、私の会社、「アイギス」というのはいっぱいあるんですね。

そういった中で、ある会社のことを調べようとしていた時などに、「この会社のホームページを見ていたつもりが、違う会社のホームページを見ていたんだな」ということも一切なくなります。

要は、13桁の番号というのは日本に1つしかないから。だから、「あなたの会社の番号はこれですよ」という話になるので、会社の特定もきちんとできるようになります。個人でも一緒ですよね。同姓同名の人がいてもキチッとできるようになります。

何が大切なのか。大切なことだから何回も言います。個人番号は、目的外利用は禁止だし、漏えいした場合には刑罰があります。

でも、法人番号は原則、利活用できます。だから個人番号と法人番号は、まったく似て非なるものです。これは用語の定義として、頭の中にきちんと整理しておいていただきたいと思います。これは絶対に出ますからね。ほぼ100パーセント出ると思います。

「通知カードを提示してもらってうちの給与台帳を作ったのですが、それじゃまずかったんですか?」という法人さん、絶対に出てくると思います。だから通知カードを提示された時には何か身分証明書を提示しなければいけないわけだから、当然「私は本人確認しましたよ」という証拠を残さなければいけないので、もちろん個人の方の、例えば免許証とかそういったものをコピーしておくのがいいでしょうね。

そしてまたコピーしたら管理しなければいけないものというのは、どんどん増えていくという話です。だから面倒くさい話ですよね。

マイナンバーに対応した就業規則も必要

さて、次なんですけれども、みなさんがこれからやっておかなければいけないフローです。ちなみにこの期限は12月31日までです。制度が始まれば慌てふためく人がいるんですけれども、そうなってくると事故が起きないように天に祈るしかないわけですよね。

でも、どうなんでしょうね。みなさんの身の回りでもマイナンバーでザワザワしていますか? これは私個人のミスなんですが、はっきり申し上げてマイナンバーが配られる頃にセミナーを開いているなんてダメなんですよ。

本当は6月か7月くらいからやっていかなければいけなかったという話なんですが、そんなことを言っていても、過ぎてしまったものは仕方がない。

まず一番にしなければいけないことは、制度の把握をするということ。「マイナンバー制度とはどういう制度なのか」ということを把握しておくということ。そして事前の周知をしておくということ。

さきほども申し上げましたが、みなさんは少なくとも従業員の方に給料を払わなければいけないと思うので、従業員の方々に「マイナンバーが届くからちゃんと確認しておいてよ」と言っておくということですよね。

そして、これも園内の話ですが、規定類を整備しておかなければいけません。規定も変わるわけですよ。たとえば、「私たちの法人に入ってきてくれた時には、翌月から給料を払わなければいけないので、あなたはマイナンバーを提示する義務がありますよ。そしてそれは法的に決められていますよ」というような一文が就業規則の中に新たに入っていなければいけません。

あるいは個人情報を預からなければいけないわけだから、特定個人情報の取り扱いに関する規定もないといけないでしょうね。だから管理規定と取得規定と、もう1つ言うと廃棄規定。

廃棄というのは、預かっておかなければいけない期間がいろんな種類で決められているんですけれども、その期間が過ぎたら即座に廃棄しましょうという話です。

もう一回言いますよ。取得する、管理する、廃棄する。それに関してそれぞれの規定が必要になります。だからそれを全部入れて取扱い規定というマニュアルができるんでしょうね。

マイナンバーが必要になるのはお金のやりとりをするとき

そしてこれがすごく大切なんですが、職員研修。「マイナンバー制度とはこういうふうな制度だよ。そしてこういうふうになるからね。大切な番号だからね。個人個人が自分のマイナンバーをしっかり管理するということも大切なんだけれども、園内でマイナンバーとか、それに類する個人情報の取り扱いについては重々注意してくださいね」と教育しておかなければいけません。

そして始まる前、12月末にこれができたら最高なんですが、最終確認をしておく。たとえば漏れがないか、ムラがないか、ボサーッとしている人がいないか、そんなことをきちっと確認しておきましょうということです。

さて、1つ1つ詳しくお話をしていきます。制度の把握に関しては、私はこの4点を把握しておけばだいたいいけるんじゃないかなと思っているんです。いつから始まるんですか、どんな場面で必要になるんですか。あるいは何をすればいいんですか、罰則は何ですか。この4つくらいでいいでしょう。制度の概要ですからざっくりでいいんですよ。

でも、いつから始まるのかというのはわかっているんですよね。法律的にいったらもう始まっているわけですよ。具体的な手続きは来年の1月から始まるわけです。

そしてどんな場面で必要になるかというと、それはみなさんがお金を支払う時に必要になります。当面の3年間はという話です。「それ以外にマイナンバーを使っていいですよ」という話になったら、いろんなことが出てくると思いますから。

何をすればいいんですかというのは、対策としてどんな準備をすればいいんですかという話です。

だからこれは(画面を指し示す)2番以降。2、3、4、5をしていけばいいですよということ。たとえば、事前の周知をしましょうとか、諸規定を整備しましょうとか、あるいは職員研修をしておきましょうとか、あるいは最終確認をしましょうというのが、何をすればいいですかという話です。

そして罰則。これは罰則規定ってどうなのかという話ではなくて、罰則があるということを知っておきましょうということです。ペナルティーがあるよということを知っておきましょうね、ということでございます。

従業員への周知徹底を

次に事前の周知ですが、対象となるのは従業員や取引先です。お金を支払う時に必要になるわけだから、園から今どこにお金を支払っているのかなと考えればいいわけです。取引先の法人に対してはそんなに神経質にやっておく必要はないわけですよ。要は支払いが生じた時に聞けばいいだけの話ですから。

問題は従業員に関しては月に1回、必ず支払いますよね。あるいは年末にはボーナスみたいなものもありますよね。ということは、ボーナスの支払いの時も必要ですよね。

もう1回誤解がないように言っておきますけれども、本人確認は取得する時に必要ですから、給料を支払う日、「明日、給料日だから、通知カードと運転免許証を見せて」というのはしなくていいんです。取得は1回すればいいだけですからね。

そういった意味では、従業員に関しては事前の周知は必ずしておかなければいけないと思います。「えー!? そんなの届いてましたっけ?」と、あとで言う人が絶対に出てきますから。今、頭に浮かんだでしょ? その人です! その人は絶対に忘れるから。「えー!? 園長そんなこと言いましたっけ?」って絶対に言うから!

(会場笑)

だからこれは何度も何度も言っておかなくちゃいけないし、しかも、それが来たら早めに取得しておくというのがいいのではないかなと思います。「届いたら、届いた順に持ってきてね」というふうにやっておいたほうがよろしいのではないかなと思います。

マイナンバーは個々人がキチッと管理すること

そしてカードの受け取りと保管の徹底。これは個人ベースの話です。いいですか。要は、個人ベースというのは従業員の方々に「きちっとカードを受け取ってくださいね。そしてその情報はきちっと管理してくださいね」という話なんですね。

受け取りに関しては、みなさん集めなければいけない方々にとっては非常に切実な問題ではあるんですけれども、保管の問題に関しては、それはその人の自己責任ですから、言うだけ言っておいて、あとは漏えいしようが何しようが問題はないのかなというか、仕方ないですよ。だって本人がボサーとしていて漏えいするわけだから。そこまで責任は負えませんよ。

ただ、親切心で言っておいてあげたらどうですかというだけの話。でも、受け取りをボーとされていると、けっこう困りますからね。番号の取得ということに関しては、ちょっと難しいんですよ。番号の取得に関しては、強制的な取得ってできないんですね。

つまり、あくまでも持っていらっしゃるご本人が、「出してくださいね」という話をしたら、「私は促されたから出します」という方向に持っていかなければいけないですね。強制はできないんですよ。ということは多分、「いや、私は出したくありません」という人が出てきますよね。

マイナンバーを出さない職員にはどう対応する?

「出したくないです」と言われた時にどうしなければいけないかというと、これは国のガイドラインではこう書いていましたと法的に義務があることを説明して、それでも出さないということであれば、個人番号、マイナンバーの欄が空欄になります。空欄だと、税務署に出さなければいけない時に、「どうしてここが空欄なんですか」と聞かれると思います。

その時に「うちとしては義務がありますと説明したんです。だけどこの人が応じないんです。だから仕方がなかったんです」というような話をすれば、税務署が受け取らないということはありません。これは私の思い過ごしかもしれませんが、そのかわり税務署はその個人を徹底マークするでしょうね。

「え? なんで出さないの? 出さない何かがあるわけ?」みたいな話になりますよね。もう1回言いますよ。そういった意味では、強制的に出せとは言いません。そしてこれがガイドラインのおもしろいところですが、「出してくださいね」と言って断られたら、法的な義務があることを説明してください。「それって、強制的なんじゃないの?」と私なんかは思うわけなんですけれども。

「いや、決まっているんですよ。一応あなたに説明しましたよ。あなたはそれを覚悟のうえで出さないということね。わかりました。だったらあなたは国家権力から徹底的にマークされます」という話です。

多分ね。多分ですよ、これ。私は別に公安に勤めている人ではないのでわかりませんが、でも、そういうふうには見られますよね。個人番号を出したくない何かがあるんじゃないのと見られます。

ですから、やはりこういう制度の時というのは、スムーズに進むように根回しをしておく。根回しというのは、集めなければいけない方々に「ちゃんと受け取ってね。あれしてね、これしてね」ということをきちっと言っておかなければいけないんじゃないかな。

そうしないと、みなさんがパッと頭に浮かんだ人は、絶対に「いや、来てなかったと思います」と言いますからね。

来てなかったと思うのであれば「本当に発送したんですか、しなかったんですか」ということを行政に確認しておかなければいけないじゃないですか。来ていないならば来ていないなりの対応をしておかなければいけないと思います。ここは事前準備として、しっかりとやっておいてください。

ですから、12月までにすることの1つとして、ここに関してはポイントを狭めていいのかなと思うのですが、従業員の番号だけは必ず取得しましょうという話です。