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旧態依然の会社は取り残される–IoT時代に“情報筋肉質”になるにはどうするか

旧態依然の会社は取り残される–IoT時代に“情報筋肉質”になるにはどうするか

2015年4月29日、都内で行われたG1ベンチャー2015 第2部全体会「人工知能とイノベーション〜AIの未来〜」のパネルディスカッションに脳科学者・茂木健一郎氏、メタップス・佐藤航陽氏、東京大学准教授・松尾豊氏が登壇しました。本パートでは、モデレーターを務めるグロービス・堀義人氏の進行で、人工知能をビジネスに活かす方法や、IoT時代に企業が求められる変化について参加者からの質問に回答していきます。

シリーズ
GLOBIS(グロービス) > G1ベンチャー2015 人工知能とイノベーション
2015年4月29日のログ
スピーカー
株式会社メタップス 代表取締役社長 佐藤 航陽氏
東京大学 准教授 松尾 豊氏
脳科学者 茂木 健一郎氏
グロービス経営大学院 学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナー 堀 義人氏
参照動画
第2部 全体会「人工知能とイノベーション~AIが生み出す未来~」Part2 人工知能を使ったビジネス・軍事技術

人工知能にできないことは何か

堀義人氏(以下、堀) 今回のG1ベンチャーは全体討議ということで、20分時間を使っているんですね。質疑応答じゃないんですよ。 全体討議ということは、会場の皆さんからも、僕らが持ってない知見をクラウドソーシングしちゃおうという発想なわけです。 この中で、起業家として人工知能を使っていて、「皆さんどうして使わないんだ、アホだな」という意見ありません? 逆に皆さんから、モデレーターの僕にもっとこういうことを聞いてほしい、突っ込んでほしかったということは何かあります? 質問者1 人工知能にできなさそうなことは何ですか?  為末(大)さんらしい質問ですよね(笑)。 松尾豊氏(以下、松尾) 今のところ、技術としてはまだまだなんで、できないことはいっぱいあります。例えば、創造性みたいなところとかできないですし、文章を書くとか、人を感動させるとかできないですし。 けっこう先のほうにいっても、人間の感情とか本能に関することはできないので。パターンでウケやすいのはできるんですけど、すごくクリエイティブな新しい芸術をつくるとか、そういうのはできないと思います。

2045年のシンギュラリティに対する備え

 松尾さん、2045年にシンギュラリティがくるというのは信じられてます? どういう立場なんですか? 松尾 信じないですね。  そうですか。 松尾 信じた上で、日本の財政の話をするとどういう話になるんだろうとけっこう疑問なんですけど(笑)。  茂木さん、どうですか? 2045年にシンギュラリティがくるというのは。 茂木健一郎氏(以下、茂木) うーん……用意はしておいたほうがいいと思うんですよ。僕、これから日本の社会全体に、知性に対するある種の野生動物的本能が必要だと思ってるんです。人工知能について、例えばディープ・ラーニング。(ジェフリー・)ヒントンの論文を読む必要はないんですよ。 ただ、さっき僕がGoogle Xの話をしたのは、ステルスで今開発してるんですよ。ものすごく頭のいい奴らが金を使って。突然出てくる可能性があるんですよ。人工知能のプロダクトって。 なので、何ができるできないということよりも、シンギュラリティのポイントは、それ以前と以後では世界が激変しちゃうということです。 タクシーの運転手さんは、10年後いなくなってるかもしれないじゃないですか。いずれにせよ、そういう世界への準備は、特にこのG1コミュニティはしておかないといけない。  そうですね。茂木さんがおっしゃるみたいに、僕は知やデータの解析に対するセンシティビリティを上げていく必要性があると思うんですよね。 僕が囲碁の世界を見てて思うことは、これすごくおもしろいんですけど、今は10代が一番強いんですよ。今までは20代、30代が強かった。なぜかというと、これはコンピュータ・AIもそうだと思うんですけど、データが膨大になってきて、データ解析しながら一番いい手を選ぶというかたち。 経営の世界でベンチャーキャピタルがやってることと同じなんですが、この業界において、この分野がどうやって成功するかという、世界中のデータを集めてきて、その中で「こうやったほうが成功する可能性が高い」というパターンを基に、投資の意思決定をしていくということをずっと前からやってきて、その結果として、投資の判断で意思決定能力が上がってくるんですよね。 そういう意味で、囲碁の世界でもなるべく多くの棋譜を集めてきて、棋譜の中からどうやって成功するかということをパターン認識をしながら、それで勝ち始めたということがすでに起こっている。 ということは、今後さまざまなデータを基にした経験値は、外から持ってきて解析をして、その中から意思決定をしていくということがものすごく重要になってきて、やっているところとやっていないところでは差がついてくる。 一方では、それと同時に、茂木さんがおっしゃるように野生の勘というか、起業家精神的なリスク抵抗しながら人間に突っ込んでいくという、この両極端のことを1人の人間もしくは1つの会社が行っていくということが重要になってきている。 データ解析を基に判断をしていく方法論と、それと同時に野性味を持った人間が突っ込んでいきながら、多くの人に会っていって、今まででは考えられない特異点をつくり上げていきながら、さらに全体が進化していくということになっていくと思うんですが。

人工知能のビジネスチャンス

残り14分ですが、会場の中から意見、質問があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか? 質問者2 産業について、先ほどどんなビジネスチャンスがあるかというところで、(人工知能が)よく使われているところは広告とか金融とか、大量のトランザクション・データが取れているところだと思うんですけども。 これから先インダストリー4.0(注 ドイツ政府が産官学の総力を結集してモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクト)じゃないですけど、いろんなものにセンサーがついて、いろんなものが取れてくると思うんですね。 そのときに、どんな産業へのインパクトがあって、どんなビジネス・チャンスが生まれるのかという。おそらく今はないビジネスがいっぱい生まれてくると思うんですが、そのあたりのビジネスについて(おうかがいしたい)。  3人まとめてとりましょうか、その後ろの。 質問者3 スカイランドベンチャーズの木下(慶彦)でございます。ベンチャーキャピタルをやっていて、人工知能研究をやっている会社2社に投資をしています。 茂木さんにぜひうかがいたいのが、人工知能でビジネスを立ち上げる上で3つくらい、情報とか国とか、どこに当たれば前に切り開けるというようなアドバイスがあれば、3つの情報ソースとか、何を調べろとか、アドバイスをいただければと思います。 質問者4 コミュニケーションロボットとしての可能性が、AIによって切り開かれるか否か。スパイク・ジョーンズの『her』という映画に出てきたような、対話をすることに価値を持たせるようなAIが今度出てくるのかというところのお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。  1問1答でいきましょうか。最初に関しては佐藤さんで、2番目は茂木さんで、最後の部分は松尾さんお願いしたいと思います。 佐藤 質問は産業でしたっけ。  産業、アプリケーションですね。 佐藤 ビジネスですかね。今後センサーがバラまかれて、いろんなものがデータとして見られるようになるということは、ほぼすべての領域が対象になるのかなと思っていて、広告とか金融みたいなビジネスが今活用できるのは、結局ビジネスがデータで完結できるからだと思うんですね。 ただ、今後リアルな情報をからめて、こういった(時計型のような)ウェアラブルとかも含めて取れるようになると、逆に活用できない産業というのがあるのかどうかは、わからないですかね。

これからの組織は“情報筋肉質”にならないといけない

 じゃあ、茂木さん。2番目の人工知能について。 茂木 ベンチャーに投資されている立場だというので、一番のポイントは会社の組織じゃないでしょうか。 あそこに小泉進次郎さんがいらっしゃいますけど、自民党がどうして長期政権をやっていられるかというと、僕から見ると、パブリケーションにものすごく賢いことをやってるんですよ。 安倍(晋三)さんがニコニコ超会議に行ったり、非常にうまい露出の仕方をしてるんですね。その背後の、自民党のパブリケーションの頭脳がどういう人たちかわからないんだけども。 イメージとしては、商品と開発、マーケティングのすべてに、従来型の人間に依存する意思決定とかそういうものじゃなく、ビッグデータ前提のものすごくソフィスケートされた人材の配置とか、流動とか、そういうものができる。 情報筋肉質っていうのかな? よくわからないけど、そういう組織になれるのかというのが一番のポイントだという気がします。 例えば、今日ここに来てないと思うんだけど、三井とか三菱とかああいう伝統的な会社の方々と話したりすると、あまりそういう感じになってないというのがわかるんですよ。そういう体質にはなってない。 一方、スマートニュースの鈴木健という、あいつなんかは、今みたいに成功するずっと前からそういう感じで組織をやってきているから、そこの組織のカルチャーというか、マインドセットというか、そこが一番大事だと思うんですよ。 コーポレート・カルチャーって言葉、最近は言わないけど、AIとかビッグデータとかIT前提のコーポレート・カルチャーがあるんですよ。まだ誰にも名前をつけられてないんだけど。そこを見極めることが一番大事なんじゃないかなという気がするんですけど。  街とかテクノロジーをものすごく大事にしながら、意思決定や判断をしていく、そういうコーポレート・カルチャーでしょうね。 鈴木健さんが言ってましたよ。「Googleはすごい。何かというと、Ph.Dの人がすごく多い」「なぜかというと、創業者2人がPh.Dだから、そういう研究の部分にすごく投資をして行くんだ。だから、研究の根幹ができ上がったものにアプリケーションが出てくるんだ」と。 そういった知能、テクノロジーに対する理解がすごく深いし、うちの投資先もけっこうGoogleが買っていくんですよね。何を買うかというと、テクノロジーを買っていくんですよ。テクノロジーの理解を基にして。 やっぱりこれからは、テクノロジーや知というものを、暗黙知も含めて企業の中に生かしていって、判断していくかに移っていくんじゃないかと思っています。

企業に求められる変化への対応

今日聞いていておもしろかったのは、GE(キャピタル)の安渕(聖司)さんがおっしゃったのは、「GEが判断したのは、キャピタルから7割方売却をする。今度は製造業へ回帰していくんだ」というお話があるんですが。 「インダストリアル・インターネット」という方向に進んでいくんだという。安渕さん、そういう動きを教えていただけるとありがたいんですが。 安渕聖司氏 GEの安渕です。GEは、これからデータ型ということで、今回のどこかのセッションでもInternet of Thingsが出てきますけども、そこに思い切って集中していこうということになって、ソフトウェア、データというところに集中していこうと。 製造業、アドバンスド・マニュファクチャリング(最先端で高度な製造技術)ですね。そこにいこうということで、7月10日に発表しましたけども。GEキャピタルのほとんどの部分を売却することになりました。 したがって、金融をぐっと小さくして、製造業にフォーカスしていくということを発表したんですね。これはやっぱりGEの120年の歴史の中でも一番大きな決断になってくると思います。 そこにたぶん、データ解析というところで、いろいろ今出ているような話が絡んでくると思います。これはまったく表に出てきていないので、まだ私にもどうなっているかわかりません。  ただ、聞いておもしろかったのは、「幹部をある所に集めて、そこで徹底的に今のAIとかインターネットの話を、シンギュラリティとか含めてずーっと聞くんだ」という話があって。 それで企業文化を変えていって、今はファイナンスとかダイベストメント(売却)して、インターネットとか製造業とかに回帰していきながら、新しい進歩をしていくんだということを言っているわけですが。 そういうかたちの変化の中で、早くテクノロジーの変化を基にして、科学的に、仕組み的に、システム的にそれを変えていきながら、戦略を変えていって、人も変えていくというような動きをやらなければ、おそらく世の中の流れから取り残されていって、自分たちは新しい流れの中にいなくなってしまう、よくマージナライズと言いますが、どこか端に行かされるのではないかということになってくると思うんですね。 松尾さん、最後の質問に対してどうぞ。 松尾 はい。コミュニケーションロボットですけども、すごくチャンスがあると思います。特にさっきの『her』みたいな恋愛感情を抱かせるコミュニケーションとか、目的がはっきりすればするほど、簡単だと思うんです。 ところが、文脈が非常に多様になってくると、言葉の意味をそもそも理解できていないというところがネックになってくるので、長期のコミュニケーションとか、文脈に依存するコミュニケーションというのは、けっこう(開発までに)時間がかかっちゃうと思います。

アカデミックな領域とビジネスの領域の調整

 せっかくここにパネリストの方がいるので、皆さんに対してメッセージ、「こんな感じで考えたらいいよ」とか「こういうことを起業家として認識してほしい」とか「こういうことを一緒にやっていこうじゃないか」ということを投げかけてもらいたいと思います。 佐藤さんからお願いしてもよろしいですか? 佐藤 起業家の方々が多いので、逆に競合が増えちゃうなというのが気になりますけど(笑)。今後、産業とかサービスはすべてオートメーション化、自動化されていくと思うので、成果が上がるところ、もしくは収益が上がるところから、テクノロジーを活用していけばいいのかなというのが私の感覚ですね。 逆に、すごく遠いところ、ちょっと時間がかかりそうだなというところは、後回しにしたほうがいいなと思ってます。  佐藤さん自身は、もともと文系でいらっしゃって、それから人工知能を活用されて。「そうは言ってもわからないよ」という方もいらっしゃると思うんですけど。 独学で学んだのか、そういった人を採用したのか、どういったかたちで企業の中で人工知能を活用することになったのか、ちょっと教えていただけると参考になると思うんですけど。 佐藤 一番の問題は、アカデミックな領域と、ビジネスの領域の両方を理解できる人ってほとんどいなくて。 やっぱり学者の方々はビジネスを軽く見られますし、逆に経営をされている方はアカデミックなことに興味がないので、その中間を調整できる人間って本当にいないんですよね。 逆にそこになれるのであれば、人工知能を活用できるチャンスがかなりあるなと思っていて、アカデミックな人たちとも話ができて、起業家とも話ができる人間が必要なのかなと思っています。  佐藤さん、具体的にはどうされてたんですか? その辺を乗り越えていく方法は。 佐藤 そういう意味では、私は大学もほとんど行っていないので、文系理系のどちらでもないかなと思っています。文系理系と分かれる前にほぼいなくなっちゃっているので(笑)。何者でもないのが強みかなと思っていますね。  そういう方々を巻き込んでいきながら、自分の頭で理解して、それを事業の中でつくっていったという感じでしょうかね。 佐藤 そうですね。Webが知りたかったらエンジニアと「どうやったら作れるか」と話をして、ビジネスのことが知りたかったら、財務とビジネスの話をして、今後はいろんな人とコミュニケーションがとれることが重要だと思っているので、そこを磨こうかなと。

人工知能と日本の製造業の相性

 ありがとうございます。松尾さん、お願いします。 松尾 人工知能は、今後高齢化していく、労働力が減っていく日本の中で切り札になるんじゃないかなと思ってまして、その背景には(開発のできる)人材がいるということと、人工知能の技術は理論的にけっこうちゃんとしてるんですね。 ということは、真面目に勉強すると、技術が習得できて、それを活かせるようになるんですね。そういう意味では、僕は真面目な日本の製造業は相性がいいんじゃないかなと思っています。 インターネットは比較的センスが必要だったと思うんですけど、そうじゃなくて下から固めていく、それで結果が出るという領域なので向いているはずだと。 それで、最終的に日本の競争力全体が上がるようにしていくにはどうすればいいのかというのを、一生懸命考えてまして、そのために人工知能を1つ中心的な技術として育てていく。そこにヒト、モノ、カネを集めて、作っていくということじゃないかなと思っています。

人間の脳が持つ潜在能力

 茂木さん、最後お願いします。 茂木 はい。1つに絞ります。皆さんの1人の人間としての、経営者としての資質を飛躍的に上げる1つのきっかけとして、人工知能を活用していただきたいと思うんですよ。 人間の脳は皆さんが思っている以上に、すごい潜在能力を持ってます。ただそれは、為末さんのようなアスリートみたいに、いじめていじめて負荷を掛けて、走り続けないと頭って良くならないんですよ。 世間で誤解があるのは、いじめていじめて走り続けるのはつらいことだと思ってる。違うんですよ。それって脳にとって一番楽しいことなんですよ。 経営者としても1人の人間としても、皆さん教育する立場かもしれませんけども、お子さんをいい学びのところに連れて行くためにも、ありとあらゆる情報を集めて、現代の一番賢い人たちが何を考えているのかということを、日本のメディアではほとんど何も情報がないので、英語のメディアに接して、知っていただきたい、触発されていただきたいんですよ。 自分たちも、日本という国、世界を良くするために、自分という人間の資質を徹底的に、容赦なく上げると。そういう決意というか感覚を持っていただいたら、これからの人工知能が跋扈する新世界を生きていけるんじゃないかと思います。  ということで残り1分です。日本発の世界を変える破壊的イノベーションをやっていくにあたっては、こういうG1ベンチャーの場において学び合っていく。どんどん盗んでいって、自分自身の会社を強くしていくということ。 同時に自分の気持ちを高めていくということですね。「やってやるんだ!」という気持ちがすごく重要だと思います。 これから分科会をやっていきますが、分科会ではすごく多くのセッションがあるので、徹底的に新しい動きを認識してもらって、経営の中に取り込んでいくことが重要じゃないかと思っていますし、そのすべてにおいて人工知能が関与していくだろうと僕は考えています。 どうやって使っていくのかということと同時に、学び合っていって、茂木さんがおっしゃったように、僕らもG1テクノロジー研究所みたいなかたちで、日本のテクノロジーをさらに強くしていって、アカデミックとビジネスがもっと融合していくように、ガンガン学んで、ガンガン野生を目指して、皆さんと交流したいと思っています。 今回のパネリストに盛大な拍手をお願いしたいと思います。今日はどうもありがとうございました。 (会場拍手)

  

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