多様性の海に飛び込むイベント「Be a DIVER」

司会:このBe a DIVER!というイベントですが、流れを簡単にご説明させていただければと思います。

「Be a DIVER!」は、一人ひとりが多様な個性を活かし、より力を発揮することを目指す、リクルートのダイバーシティ推進プロジェクトです。ダイバーシティとDIVEをかけて、参加者の皆さんには多様性の海に飛び込むダイバーになってもらい、その海で多様な視点を発見し、陸に上がってもらえればと思っています。3段構成になっています。はじめに海へ潜る前にインスピレーショントーク。そしてディスカッションダイブ。最後にイグジットトーク。海へ潜る前のインストラクターに今日は3名いらしていただいております。家事代行会社「ベアーズ」専務取締役で家事研究家の高橋ゆきさんと、リクルートキャリアの長尾悠さん、西村創一朗さんです。

インストラクターの方たちに多様性の海に入る前にお話しをしていただいて、その後に「ディスカッションダイブ」。ここにいる30名全員でディスカッションができればと思います。ここを一番大事にしております。

地球って3割が陸で、7割が海ですよね。そうすると普段いる陸の倍以上、目に見えていない世界が広がっている中で、多様な視点だったり、気づきを皆さんで感じたり、シェアをしたりして、陸に上がっていただければと思っております。

陸に上がっていただいたときには「イグジットトーク」といって、ダイビングをやる方はご存知かもしれないですが、イグジットしたときに持ち帰ったものを書き込んで、シェアをしていただきます。そこのフォルダに紙もありますので、書いていただいて、シェアをして終了としたいと思います。

最後、その紙を渡していただいた際に、私たちからBe a DIVER!という証明のステッカーをお渡しいたしますので、これを持って帰っていただければと思います。

この企画、初めての企画でして、いろいろと至らないところもあるかもしれないですけど、精一杯、気づきがある有意義な2時間になるように運営致しますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それではインストラクター、3名の方に入場していただければと思います。拍手でお迎えください。

育休を取った男性社員「育休は最高だと思ってる」

まず家事研究家でもあって、“家事代行”という言葉を日本で初めて命名し、まさに日本の家事代行サービスのパイオニアであるベアーズの専務をされている高橋ゆきさんです。

高橋ゆき氏(以下、高橋):はじめまして、皆さん。こんにちは。今日は私も流れに乗って、溺れないように皆さんと一緒に楽しみたいと思います。最後までお付き合いください。どうぞよろしくお願いいたします。

司会:そして隣にいらっしゃるのがリクルートキャリアの長尾悠さんです。長尾さんはリクルートグループの中ではかなり珍しいんですけど、育児休暇を取られて、そして取られたと同時に営業トップを取られたという方でいらっしゃいます。

今日は育児休暇って取りたいけど、どうかなという方がたくさんいらっしゃいますし、どうやって高い成果をあげられたのかというところも含めて、いろいろお話を伺えればと思います。どうぞよろしくお願いします。

長尾悠氏(以下、長尾):長尾です。いまご紹介いただきましたけども、育休は最高だと思ってるので、それをお伝えできればと思います。よろしくお願いします。

司会:そして一番奥にいらっしゃるのがリクルートキャリアの西村創一朗さんです。西村さんは2児の父親であり、来月3人目がお生まれになるということで。さらにファザーリング・ジャパンというNPO法人の理事もされています。ご自身の経験だけでなく、ケースもご存知でいらっしゃるので、今回、皆さんの不安であったり、ご質問にもいろいろお答えいただけると思います。どうぞよろしくお願いします。

西村創一朗氏(以下、西村):ただいまご紹介にあずかりました西村と申します。長尾さんと同じくリクルートキャリアにおりまして、新卒で入社して5年目になります。2児の父とご紹介頂いたのですが、大学1年のときに学生結婚をして、19歳のときに長男が生まれて、いま27歳ですが、長男が小学校1年生です。

入社1年目でさらに次男が生まれて、次男が4歳で。さらに再来週くらいに長女、初めての女の子が生まれる予定で、3児の父になる予定でございます。長尾さんとかいろいろな先輩から「育休いいよ」って聞いていて、次は絶対取ろうと思っていたんですが、いろいろな理由があって、取らないという決断をしました。その取らなかった理由も含めて今日はいろいろお話できればと思いますので、よろしくお願いします。

司会:事前の皆さんからの質問が沢山あったので、大きく3つにまとめさせていただきました。1つ目が、育休に対する不安。取ってみたいけれどもちょっと不安だなとか、どうしたらいいのだろうであったり、実際取ってみてどうだったのか話を聞きたいという声がすごく多かったので、そこについてが1つ。

2つ目が、仕事と育児の両立について。まさに今育児をしながら仕事の真っ最中なんだけれども、他の人の事例も聞きたいとか、どんなふうに皆さんされてるのか知りたいということ。

3つ目が、両立の為の手法、智恵。自分たちだけでするのではなくて、家事代行であったりとか人に頼るであったりとか外部サービス使うであったりとか、そういう方法を考えてみるという、この3つについて重点的にインスピレーショントークをしていただきます。

他にも聞きたいことがたくさんあるという方もいらっしゃると思うんですけれども、このトークのあとにQ&Aの時間を用意しておりますので、その中で手を挙げてご相談いただければと思います。

実際に育休をとってみた感想を振り返る

それではまずはじめに、実際に育休を取られた長尾さんから、取られた背景や、実際に取ると言ったときの周りの反応、実際に取ってみてのメリット、デメリット等を話していただければと思います。長尾さん、どうぞよろしくお願いします。

長尾:よろしくお願いします。ちょうど1年ぐらい前、2014年の11月から3か月間、11月、12月、1月で育休を取得しました。今、息子が2人いるんですけども、上が5歳で下が2歳。下の子の1歳の誕生日前後ですかね、そこら辺で取得をしました。何でしたっけ、背景?

司会:そうですね。何で取得されたのか。

長尾:長男が生まれたときぐらいに、もう仕事が忙しいのが嫌になって転職活動したんですよ。よくあるやつですね。「もうこれからはワークライフバランスだ!」って言って転職活動したんですけど、条件が合う求人が無くて断念しました。

それでずっと悩んで、家に帰って家族と過ごしたいんだけど仕事もあるというので。それが20代後半だったので仕事もけっこう忙しくなってるときだったんですけども。

2人目ができた時までずっともやもやしてたところで、当時の上司とかに相談をしたんですが、「そんなのずっと続くから、自分の中でウェイトをつけなきゃ駄目だよ」って言ってもらえました。僕も一応、2人目で終わりの予定なので、もうこれは一生に1回のチャンスかなと思って、2人目のタイミングで育休を取ろうと思いました。

司会:実際にそれを告げられたときは、上司の方の反応とか周りの反応はどんな感じだったんですか?

長尾:もうほぼ全員ポジティブで。けっこういい会社じゃねえかと思いましたね笑「何かお前っぽいな」って言ってもらえて。もともと家族がすごい好きだと言っていたので、「らしいね」みたいなことは言ってもらえましたね。

同僚にはけっこう仕事上影響が大きいので、同じグループ全員が集まる週次のミーティングがあるんですけど、ちょっとお願いしてそのミーティングの最後に、サポートの派遣社員の方もみんな集めてもらって、「すみません」と。育休を取るので3か月いなくなりますと話をして。

そうしたら思いがけずすごいポジティブな反応で。だいたい女性は「いいな」って言っていました。結婚している人は「うちの夫にも取ってほしい」みたいな感じで言ってましたね。男性はだいたい「何で?」って言ってましたね。

司会:違うんですね。

長尾:でもどっちも割と好意的には受け取ってもらえて。何か嫌な思いしたことっていうのはないので。そういう土壌というか風土はあるんじゃないかなと思いました。

司会:実際に取ってみられてどうでしたか?

長尾:ものすごく良かったですよ。いまのところ取ってちょうど1年経ちましたけど、何かよくメリット、デメリットとか言われるんですけど、デメリットは本当に全くなくて。むしろいまのほうが取る前よりもいい状態だなと感じてますので、そういう意味ではすごくいいなと思ってます。

育休取得後は業務効率を意識するようになった

高橋ゆき氏(以下、高橋):例えばどんなことがいいんですか?

長尾:これはけっこう会場の方にも共感してもらえると思うんですけど、みんな仕事しちゃう人たちなんですね。なのでだいたい終電から逆算して「今日は何時まで働けるな」みたいな。「23時25分が終電だから、23時12分まではオフィスにいられるな」みたいな。そういう感じでずっと働いてたんですね。

なので業務効率って口では言ってましたけど全然考えてなくて、わりと労働集約型なので、時間はできるだけかけようという感じだったんですけど。

それを、育休取るの決めて、取るからにはここまでに絶対大きな手柄を取ろうと思ったんです。それを初めて意識したときにはちゃんと投資対効果みたいなのを考えて、いかに効率的に仕事するか、初めて本気で向き合ったみたいな。一応それで実際に成果を出すことができました。

高橋:周りもやっぱり成果が出ると全然見方が違うんですかね?

長尾:そうですね。ここはけっこう難しいんですけども。僕、別に大活躍社員じゃなくてそれなりの社員だったんですけど。やっぱりパフォーマンスが落ちた状態で育休に入るのはやりたくなかったっていうのは個人的には思ってました。

高橋:まだ聞きたいことがいっぱいあるんですけど、聞いていいですか?

司会:大丈夫です。

高橋:女性は「いいね」って。男性は「何で?」って聞く、その「何で」の中にも種類が分かれると思うんですよね。

前向きで応援するよ的な「何で」、自分ももしかしたらそうなるかもしれないからよろしくね的な「何で」と、「ちぇ、あいつだけ」みたいな、仕事にもチームにもちょっと影響を与えて自分勝手に生きやがってみたいなのとかはないんですか?

長尾:そうですね。いま最後おっしゃったことは、本当に直接言われたとか、感じたのは1回もなかったんですよ。

高橋:すばらしいですよね。

長尾:男性はどちらかというと変な話、「え、それ出世遅れませんか?」とか「それで仕事戻ってきて大丈夫ですか? 仕事あります?」みたいなそっちの「何で」が多かったですね。

あとはおもしろいのは、上司の方で子育てを卒業してるというか、育休取れる年齢じゃないんですね、子どもが小学生だとかで。そうするとけっこう「うらやましいよ」と。「あのとき取っときゃよかったな」みたいな話をけっこうされました。取る前は「取ったらどうだったかぜひ教えてくれ」みたいなのは、意外とおじさんのほうが反応ありました。

高橋:でもすごいですね。のっけから勝手にしゃべってますけど。私が接触するような中小企業さんとか、もしかすると逆にがっちりできあがってる大手さんのほうがそういう理解が進んでなくて。御社のグループとしての風土みたいなのもあるんじゃないですかね。

長尾:そうですね。リクルートの働く環境的にはけっこう真逆だと思うんですけど。

高橋:そうそう。だからちょっと意外でした。

長尾:僕もやっぱりおもしろいもの好きみたいなところがどこか根底にあるもので。そこがおもしろいねっていうのはあったのかもしれません。

高橋:もっともっと御社のみんなが社会のロールモデルになってどんどん発信していくのが一番いいですね。

長尾:なれればいいですけどね。

高橋:なれますよ、もうずっとずっとリードしているように感じました。

長尾:リクルートって、昔は社会に影響を与えるようなサービスを提供していたと思うんですけど、最近はそういう存在感がなくなってきたと思っているので、そういう影響力を発揮していけるといいですね。こういう領域でも。

高橋:ぜひぜひ。やっぱり時代で何をもってリードするかとか、何をもって社会をけん引するか、ポイントは違ってよいというか、違わないといけないと思うので。女性が率いる組織というのはたくさん見てきているけれども、男性がそういったアクションして変えていく世の中っていうのはすごく重要だなって思いました。勉強になりました。

育休取得、気になる家族の反応は

西村:僕からも1個いいですか? いま職場のお話だったと思うんですけど、育休を取るって決めたときの家族、妻だったりとか妻の家族とか、長尾さんのご家族とかの反応。

取って家の中にずっと2人で一緒にいると、価値観の違いとかっていうのは浮き彫りになったりするんじゃないかなと思うんですけど、その辺はどうですか?

長尾:まず「育休を取るよ」って言ったときにどんな反応だったかというと、嫁は「えー、、、 本当?」みたいな感じです。いままでも「今日は早く帰るよ詐欺」みたいなのをずっとやってるので。 「どうせ取んねえんじゃねえか」みたいな。「いや大丈夫。後任の営業も人事異動でもってきてもらえることになったし、ちゃんと手順を踏んで進めてるから」って言って、だんだん信頼してくれたっていう感じ。

妻の家族はちょっと心配してました。「そんなことやって大丈夫なのか」と。「給料下がるんじゃないか」みたいなのは若干ありましたけど。家族付き合いもしていたのですぐ理解してくれて。

高橋:実際、問題は何も影響はなかったんですか?

長尾:なかったです。

高橋:もちろんあったら大問題になるんでしょうけど、でも実際になかったと。

長尾:ないですね。ただ、うちは半年の仕事を振り返ってそれに対して考課をするんですけど、育休を挟んだことで色々とイレギュラーな状態になりました。 あと、育休を取って家族とずっと一緒にいるようになってからは、やっぱり衝突しかけたり、実際半日ぐらい会話をしないような日もありました。さっきブログをちゃんと見返したんですけど、書いてありましたね。

でもそれはそれでちゃんと昇華していくというか、向き合わざるを得ないので。意外と、人と24時間365日ずっと一緒にいるってないですよね、普通の夫婦生活というか家族だとしてもで。それはいろいろありましたけど。

高橋:あって、それもプラスに働いたんですか?

長尾:そうですね。最終的には。再発防止じゃないですけど、地雷がどこに埋まってるのかがわかったり、地雷の除去の仕方がだいぶ増えたりとかそういうのはやっぱりあります。

高橋:奥さんはずっと一緒にいることで迷惑だとは言ってなかったですか?

長尾:口では言ってなかったです。

(会場笑)

高橋:奥さん呼びましょうか?

新卒入社1年目から子育てと家庭について模索

司会:ということで、まだお聞きしたいことはたくさんあるんですけども、インスピレーショントークの2番目にいかせていただければと思います。

西村さん、実際に今、育児と仕事の両立の真っ最中の中で思われていることや、次回は育休を取らないと決めた背景についてもお話しいただいてよろしいですか。

西村:はい。あらためましてこんにちは。西村です。少しお話をさせていただくと、長男が小学校1年生で小1の壁、小1プロブレムみたいなものに今年ぶつかって、学童にまずどうやって入るかみたいなことを必死に考えて入ったりとか、保育園のときは遅くまで預かってくれたのがなかなかそうはいかなかったりとか。一応僕も共働きなのでいろいろ苦労した部分があったりだとか。

次男が生まれたときはまだ入社1年目だったので、そもそも育休って選択肢もないし新人は量をこなしてナンボみたいなところの中で、仕事で一杯いっぱいの中、どう子どもと関わるかすごく苦しんだ時期もあったりしました。

ある種、入社する前、入社1年目からずっと子育てと家庭をどう両立するかをずっと模索し続けてきた中で、いま入社5年目で3人目ができたことが去年の夏にわかったときに、育児休暇を取るべきかどうかすごく悩んだんですよね。

高橋:3人目で。

西村:3人目で悩みました。すごく取りたいという自分もいたんですよね。長尾さんとかリクルートキャリアの先輩方が「育休を取れてすごくよかった」って言っていましたし、実際自分も取ったらすごくいい経験ができるんだろうなっていうことを思ったんですけど。

妻と話をしていく中で、「そもそも何で育休取りたいんだ」っていう話があって、育休はルールじゃないですけど、「育休を取るっていう形にこだわっているんじゃないのか」みたいなことを言われました。

高橋:奥さんから?

西村:そうです。

高橋:すごいしっかりした奥さんなんですね。

育休を取得しないことを決断した理由

西村:そうなんですよ。僕がそれこそ入社2年目ぐらいのときに、もうやっぱり子どもと過ごす時間を大事にしたいからワークライフバランスで転職だなんて(長尾氏と)まったく同じことを言っていて。

結果的に年収が折り合わずにやめたという。そのときにやっぱり妻が言ってくれたのは、「結局、いま転職をしたらそれは逃げの転職だから、逃げた転職をして本当にいいの? 何のためにリクルート入ったの?」と詰められて、ごめんなさいと言って、もっと頑張ろうと思ったわけですけど。そういうけっこう本質的に「何で?」とか「そもそも」って言ってくれるんですよね。

そういう中で僕はあらためて考えたのが、長男が生まれたのは大学2年のときで。大学2年の冬にファザーリング・ジャパンというイクメンっていう言葉を広めた立役者のNPOがあって、そこに学生のときに入って学生組織を立ち上げて。

学生たちにパパの子育てのリアルみたいなことを教えるイベントとか、イクメンパパさんの家庭にホームステイに行って育児を男子学生が学ぶみたいなことをいろいろやっていたというのもありました。

本当にもうファザーリング・ジャパンには450人以上のパパたちが、北は北海道、南は沖縄までいるんですけれども、いろんなパパたちがいる中でもちろん育休取得率もめちゃくちゃ高くて、2割3割ぐらいの人たちのパパたちが取ってるんです。

かといって、じゃあ全員が育休取ってるかというとそういうことではなくて、一番本質的に大事なのはやっぱり夫婦で納得して子育てをしていくことだって思っていて。やっぱりいけないのって「男は仕事、女は家庭」みたいな形で役割分業をしていること。

お互いが心から納得していればすごくいいんですけど、いま共働きが増えてきている中で、ママは仕事も頑張るけど家事・育児で精いっぱいな一方で、パパは会社で働きづめで、ママばっかりがやりたいことを我慢して、どんどん不満とかストレスがたまって、最悪の場合は虐待に走ってしまうとか、離婚してしまうのは非常にアンハッピーですよね。

夫婦で納得し合って子どもと向き合っている、自分と向き合っている、パートナーに対して向き合っている状態をつくるための手段が必要であって、何も育休だけじゃないなっていうことをあらためて思った中で、僕は育休は取らない決断をしました。

育休じゃない形で家庭に向き合っていく、家庭の時間を大事にしていきたいと思って、取らないという決断をしました。

制作協力:VoXT