スマホがつくる"監視社会"を回避するには?

川崎:昔も同じ文脈があって、僕実家が茨城県水戸市なんですけど。なんか中学の時に、彼氏彼女じゃないんだけど、一緒に水戸駅歩いてたんですよ。そしたら正月におばさんに会って、「裕ちゃんさ、水戸駅でかわいい子と歩いてたね」みたいな。

古川:怖いっすよね。

川崎:おせっかいおばさんみたいなやつがいたんだけど、前から。それがなんかデバイスの普及とともに、全員おせっかいおばさんになってしまったみたいな。

古川:そうですよね。

川崎:しかも悪いことに、スマホとかで写真とか撮られちゃってみたいな。チェックインされちゃって、タグ付けもされちゃって。せまい人間関係で消えてほしい。

古川:すごい狭くいく方向と、たぶん海外だったらwhisperみたいな完全匿名で、悩みとかつぶやいちゃうみたいな、2つの方向が今新しい流れかな。

――サイバーエージェントのガールズトークとか?

古川:ガールズトークとかも近いですね。まさに。

――大手小町の正常進化がガールズトークなんですか?

古川:そうですね。やっぱ小町的なものは、もうスマホ版ガールズトークかなと思うですけど。ただやっぱ長文文化ですよね。もうちょっと違う形があるんじゃないかと思いますけどね。

川崎:それはなんか短文でキャットファイトみたいな、そういう?

古川:そうですね。キャットファイトおもしろいっすね。

コミュニケーションは"本能"

川崎:でもアンサーってそういうのないんすか? お互いにディスりあいみたいな。

古川:なんで2ちゃんに似てると思ったかというのは、ネタ文化なんですよね。なので、基本やっぱネタに昇華するっていう性質はありますね。

川崎:そうなんだ。そのままズブズブで、憎悪だけ残って終了みたいな感じにならないんだ? アンサーは。

古川:それも一日で消えちゃって。あとからログを追えないので、憎悪が残りづらいんですよ。2ちゃんもけっこうそうじゃないですか。その場でワーってやりあって、一週間後ってそのやり取りって、あんまり残んないっていう。

――人間って、コミュニケーションを一定量消費したいっていう気持ちはやはりあるんでしょうか?

古川:コミュニケーションって生存本能とけっこう密接なのかもしれないですね。人間は社会的ないきものなので、コミュニケーション取らないと人間って生きていけないのかなあ、と。放っておくと、かなりコミュニケーションをしちゃうのかもしれないですね。

――一定量はやっぱりやりたいと。

古川:それでその一定量は、僕らが思っている以上にやりたいっていう。基本的にこう東京に住んでて、ちゃんと仕事してる人たちって満たされてるんですけど、高校生とかってあんまり満たされてないのかもしれない。社会人になると、けっこう知らない人と話すじゃないですか。なのでコミュケーションに対する欲求は満たされてるけど、学生の人たちはすごく近しい人達とのコミュニケーションしかないですからね。

「写真15枚以上はfacebookで」 若者のコミュニケーションルール

――なんか、最後聞いときたいこととかありますか?

古川:そうっすね。「消えていく」と「匿名」はあるんすけど、他になんかあるんですかね。コミュニケーションで重要視される要素って。

――先ほどmuukについて話されている文脈で、「若者とおっさん」みたいなのあったじゃないですか? muukは若者のコミュニケーションだ、みたいな。あれは本当にそうなんですか?

川崎:いや、muukがどうかっていうのは、まあ正直これからじゃないですか。事実なのは、僕らってLINEとTwitterとFacebookってぶっちゃけあいまいに使ってますよね?

――はい、使い分けてないということですね。

川崎:ポストするときに、どれ使うか悩むというときありますよね?

――はい。

川崎:それは彼らにはないんですよ。それは事実です。例えば、LINEは目的があるときだけとか。Twitterだったら独り言みたいな。Facebookだったらイベント型の写真共有、みたいな使い分けがされてるんで。これFacebookに投稿しようかな、Twitterに投稿しようかなって、僕は一日に3回は悩むんだけど……。

――(笑)。

川崎:そういうことは無いんですよ。それは60人ぐらい聞いたんですけど、ほとんど全員そう。だからなんか、これはすげえなって思う。例えば、さっきちょっとあったんですけど、「暇だね~」「今何してる?」ってLINEでやると、ルール違反みたいな。「暇だね~」とか「おなかすいた」とか「今原宿だ~」っていうのは、Twitterでやってね、と。

次に「原宿でご飯食べてるんだ。誰か暇な人いる?」ってTwitterでやると、メンションくるじゃないですか。「今渋谷だから、今から行けるよ~」みたいな。じゃあ、実際に会うために、どこにいるかみたいなのはLINEでやるのがルール、ていう。

古川:すごいわかる。Toで送ると返信返さないと失礼だし、すげえプレッシャーなんで、発信じゃなくて放電でやりたいっていう。

川崎:それで、実際に集まるじゃないですか。ファミレスとかに集まってみんなで写真を撮りましたと。その写真が15枚とか、一定規模以上の枚数になったら、Facebookでアルバムで上げるのが正解みたいな。これがただ5枚とかだったら、LINEでいいじゃんみたいな。その、プッシュ通知が5回までだったら許容できるけど、15回くるのは許せないみたいな、いろいろあるんですよ。人によって。

古川:なるほど。おもしろい。

川崎:だからそういう文脈があったうえで、じゃあ僕たちのmuukっていうサービスってどこなのかって考えたときに、メールからSMSになって、リアルタイムのメッセンジャーになってっていう、緑色のLINEみたいな立ち位置なのか。あるいは、電話とかビデオチャットの延長上にいるのかっていうのはけっこう重要な判断っていうか。

僕らがなんでFacebookログインもTwitterログインも電話帳連携もしてないのかっていうのは、まさにそういうところで。おのおの使い分けてるのよ。だから、muukは独自のIDでやるしかない。ただし、IDを知らせるチャンネルとしてはTwitterとかLINEっていうのは、有効だよね。だから使ってるっていう。

古川:いい話だね。

――いい話聞きましたね。

「写真を保存したい」は時代遅れ?

川崎:なんかあまり、自分でこういう風になったらいいなと思う一方で、ユーザーの話をいったん鵜呑みにしちゃおうかなと思ってさ。それで鵜呑みにして、機能とか試してみて、違うなって思ったら、それはまた違う別の方策を試せばいいと思ってて。

本当それこそ現場重視というか、実際に使ってくださっている方っていうのが、どういうものなのかっていうのは、すげえ気になるし。逆に使ってない人の意見というのをあんまり聞きすぎないようにしてる。もちろん大事なことを言ってくださるんだけど、それだけ聞いちゃうと、やっぱぶれちゃうなって。

古川:なんか、インターネットおじさんというか、PC時代からインターネットやってた人と、そうでない人の感覚の差は最近けっこう感じていて。インターネット出た時にもう3、40代だった人って、全然インターネットの感覚わかんないよ、というのと同じようなことが起きていますよね?

川崎:なので、僕はそういう発言を「インターネットおじさん」と定義してるんだけど(笑)。

古川:オールドタイムの人がインターネットを批判してて、インターネットの人たちが、あいつらわかってねえなって言ってるのと、同じようなことが起きていて。PCインターネットの人は、「muukやっぱ、写真保存したいよね?」とか言ったときに、やっぱその差ってなんかあるなと。今スマホとかでやってる人たちって、その人たちに対して「時代遅れだ」とわざわざ言わないんすよね。世界が違いすぎて。

川崎:別に言う必要ないもん。

古川:なんか昔はけっこう、このインターネットおじさん層がオールドタイムの人たちに言ってた気がしてて。オピニオン的に。なので、よりここの断絶、感じません?

川崎:でもインターネットおじさんってさ、いい意味でインターネットというものを大事にするじゃない。俺たちがネット作ってきたんだ! みたいな。なんだけどさ、今の高校生とか中学生ってネットなんかあって当たり前だから、別段それに対して批判とかしないもん。電話使って、「これ通信品質が…」とかって言わないし。

写真はコミュニケーションツール

古川:(笑)。今の二十歳の人とかね。5歳のときから2ちゃんねるとかありますからね。

――インターネットに感想とか持ってない気がする。

川崎:2ちゃんねるとかさ、まとまってて当たり前って思ってるかもしれない。

古川:そうっすよね。今年の新卒とか、もう小学1、2年のときから2ちゃんねるがあるので、当然感覚は違いますよね。mixiできたとき、中1ですみたいな。

川崎:10年だからね、mixiね。今とか新卒の面接とかするんだけどさ。そうなると中学校の時に使ってたんですよとか。そういう感じですよ。

古川:やばいね。

――僕は正直言って、写真アーカイブしたいので、絶対に理解できない気がしています、彼らの感覚。

古川・川崎:(笑)。

古川:アーカイブ欲と違う欲、なんですよね。

川崎:難しいのは、写真なのか? っていうのも、けっこうチームで議論するんですよ。何かっていうと、残したいものが入っている画像を写真って定義すると、それじゃないんですよ。だから、ビデオチャットなんですよ。

だって例えば、Facetime立ち上げました。Facetimeのログが残ってなくたって誰も怒んないじゃないですか。シャッターをきるっていうことが、もう残すっていうこととイコールになっているみたいな。

"共有される"ことに価値がある

古川:たぶん感覚的には、僕らの親ってデジカメで撮った写真をプリントアウトするんですよ。あれにたぶん近くて。

川崎:たしかに。

古川:僕ら、そんなにプリントアウトしないっていう。なんかその違いと似てる感じします。この現物ができて、初めて写真を撮ったって思う。僕らはデータで残ってれば、写真が残ってると思う。この差。

川崎:それが、そもそもデータに残ってるんじゃなくって。撮って今もう共有されてるっていうのが担保されてるからいいじゃんっていう。

古川:もうそこでいいっていう。

川崎:データが残ってるっていうことに対して価値を持った人っていうのは、今共有するっていうことに価値持ってますっていうのが理解できないっていうのは、なんかわかりやすい気がする。

古川:それいいっすね。

川崎:そういう話だね。今いいこと言ったね。

古川:いいこと言った。

川崎:今日はいいこと言った。

――超わかりやすい、良い締めでした。本日はおふたりともありがとうございました。