イケメン指導者ホセ・リサール

おおたに:話を戻しますかね。

アッキー:はい。

おおたに:いろんな反乱や、いろんな国からの侵略もあったんだけど、1762年になると、イギリス艦隊が一時マニラを占領してたりしたんだよね。2年間くらいだけど。1869年になるとスエズ運河も開通するしね。スエズ運河を通ってマニラ、スペイン蒸気船定期航路ができたんだって。定期航路ですよ。

アッキー:すごいですね! フィリピンにいっぱい来てましたね。

おおたに:その後のフィリピンのほうは占領に対して暴動が起きたりして、だんだん現地の人も宗主国のスペインに勉強に出かける人が出てきたりするわけね。

アッキー:フィリピンの人が?

おおたに:はい。きちんと勉強して、だんだん知識ができてくるじゃない。民主化に対しても「こうしなければいけない」と思う人が増えてくるじゃない。

アッキー:そうですよね。

おおたに:だんだん革命のほうへ向かっていくわけね。その中で、今もフィリピン独立の父と呼ばれているホセ・リサールという人が出てきたわけね。1861年生まれなんだけど、お医者さんだったそうです。イケメンで人気があって、みんなを指導してフィリピン同盟を作ったらしいですよ。

アッキー:え! たしかにイケメン!

おおたに:見た? この人の家系はメスティーソだったんですって。

アッキー:混じっているんですね。

おおたに:中国人とフィリピン人の混血の一族なんだって。だからイケメンにもなるし、優秀でお医者さんにもなるようなね。

アッキー:混血の方はね。

おおたに:そう。生物学的には混血だと優秀になるんだよね。だけど、この人──ホセ・リサールさんは途中で捕まって殺されちゃいます。

アッキー:何でですか?

おおたに:「何でですか?」。わかんないんですけど(笑)。

アッキー:あ、そうか。なんでかわからない(笑)。失礼いたしました(笑)。

おおたに:ここはよくわかりませんが、反乱を率いていたから、当局に逮捕されて処刑されちゃいました。

アッキー:そうだったんですね。

フィリピン革命政府の大統領から、香港の自転車屋へ

おおたに:それを引き継いだのがアギナルドさんという革命家かな。この人が1897年に革命政府を樹立して大統領になっています。

アッキー:え!? 大統領にまでなっちゃったんですか!

おおたに:うん。大統領にはなったんだけど、まだスペインに勝ったわけではなくて、アギナルドさんが革命政府を樹立したんだけど戦い続けるわけね。最後は劣勢になってスペイン軍に山奥まで追い込まれちゃったの。

スペイン軍に「そろそろ潮時だぞ。諦めろ」といわれて、なんとアギナルドさんはスペインと和平条約を結んで、補償金をもらって国外へ逃げちゃいます。

アッキー:あららららー。

まき:あららー。

おおたに:独立運動は一段落という。大統領にはなったんだけど、独立まではいかなかったんですね。アギナルドさんは補償金をもらって香港に亡命して、自転車屋さんをやっています。

そのあと、翌年1898年に今度はアメリカとスペインが戦争を始めます。きっかけはカリブ海でキューバに来る船を沈めたとかで、キューバと衝突したことらしいんだけど、それでアメリカとスペインが戦争になったので、今度はアメリカはフィリピンの独立も支援するんだっていうのがアメリカの大義名分になったんだよね。

「独立させてやるぞ。だから一緒に戦おう」ということで、アメリカ軍がマニラ湾の海戦でスペインに勝ったりしていますね。そういう状況で独立できそうになったので、香港からアギナルドさんは帰国しました。

アッキー:香港にいたんですね。

おおたに:香港で自転車屋さんをやってたんだけどね。

アッキー:ああ、そうか! はい(笑)。

おおたに:それで独立宣言をして第一次フィリピン共和国というのを作ります。第一共和制。フランスは第五共和制らしいけど、フィリピンは第一共和制らしいですね。もちろんアメリカが勝ってマニラを占領して、「これで独立かな」と思ったんですが、勝ったアメリカはスペインと講和条約を結んで、結局今度はアメリカがフィリピンを占領しちゃいます。

アッキー:あー!

おおたに:「なんだよ!」って感じでしょ(笑)。

アッキー:本当ですよ。

おおたに:「アメリカが手伝ってフィリピンを独立させてくれるかと思ったのに、今度はお前かよ」って。

まき:たしかにひどい(笑)。

フィリピンがアメリカ領になった経緯

アッキー:もう、ひどいですよね!

おおたに:当時の帝国たち。先進国か。その条件、講和条約の内容はキューバの独立を認めます。スペイン領じゃなくなるということね。スペインが領有していたフィリピン諸島、グアム島、プエルトリコをアメリカへ割譲。フィリピン割譲に関しては、アメリカがスペインに2000万ドルを支払うんだって。アメリカがフィリピンを買ったということか。

アッキー:そうだったんですね!

おおたに:それで今度はフィリピンがアメリカに「話が違うじゃん!」ということで、アメリカとフィリピンの戦争が始まります。大変ややこしいでしょ?

アッキー:ややこしいですね。

おおたに:ここでアギナルドさんがフィリピンの本当の大統領になります。

アッキー:自転車屋?

おおたに:うん。一時、自転車屋だった人ですよ(笑)。だけど情勢不利で、正規軍をやめてゲリラ戦になりましたね。

まき:ゲリラ戦。

アッキー:きつそう!

おおたに:だけど結局、「フィリピンはアメリカが平定しました」ということを宣言されちゃいますね。

アッキー:軍事力も圧倒的に違うでしょうね。

おおたに:しばらくはアメリカ領だったんですけど、次の動きとしては、太平洋戦争もあるんだけど、1929年に世界恐慌が起きると、お金を使わなければいけないということで、フィリピンはアメリカのお荷物になっちゃうんですね。

それで1934年に「今から10年後にフィリピンの独立を認めます」ということになったんだって。お荷物になったからね。それで独立準備政府というのができたそうです。

アッキー:なるほど。

マルコス大統領の独裁時代

おおたに:そのあと1941年に太平洋戦争が起きて、日本軍がフィリピンに進行してしばらく占領してたでしょ。そのあとは終戦になると、またアメリカが来て一時占領するんだけど、今度は戦後なので、フィリピン共和国を成立させましたね。

フィリピンが独立宣言したのが1946年ですね。それで今後は選挙で大統領を選んで、次々に数年交代で大統領が変わっていくんですけど、そのあとは1965年になるとマルコスさんが出てきますね。

アッキー:1965年。

おおたに:だいぶ最近になってきたでしょ。

おおたに:生まれてないかと思いますけど。

アッキー:ウフフ。生まれてないですね……(笑)。

おおたに:マルコスさんは自分が大統領になると腐敗選挙でお金を使って票を買ったり、操作したりしてずっと大統領になり続けますね。たぶん25年くらいかな。独裁体制ですね。

アッキー:長いですね。

おおたに:65年から25年だから1990年までかな?

アッキー:この間……。

まき:1990年。あー。

アッキー:長いです。

まき:私はまだ……。

おおたに:なので、私のイメージはマルコス独裁というイメージがありますね。ちょっと危なくなると全国に戒厳令を敷いたりとか、そういう無茶をやっていましたね。独裁の中にもベニグノ・アキノって知っています?

アッキー:アキノさんね。わかりますよ(笑)。

おおたに:お父さんかな。そのアキノさんのお父さん。

アッキー:アキノさんのお父さん!

おおたに:アキノさんって、今誰のことをいってますか? 女性のアキノさん?

アッキー:私は、女性のアキノさんのこと。

おおたに:コラソン・アキノ?

アッキー:かな? うん。

おおたに:コラソン・アキノさんの旦那さんかな。それが民主化で戦っていたわけね。マルコスさんと衝突していたわけね。そんなことをやっているうちに、死刑判決を受けちゃったりとかね。

アッキー:旦那さんが。

おおたに:そうそう。だけど、大統領の特赦で終身刑に減刑されたりとかね。そういう危ない状態になっているので、1980年にアキノさんはアメリカに亡命しちゃいます。アメリカに亡命してたんだけど、1983年にまた帰ったんだよね。

帰ってきた時に、空港で暗殺されちゃいましたね。これ、ニュースで見ましたよ。あ、歴史じゃない。私のニュースの時間になってきました(笑)。

(一同笑)

アッキー:そうだったんだ……。

おおたに:テレビのニュースで見ました。

ベニグノ・アキノ氏暗殺事件の衝撃

アッキー:私が知っているアキノさんは女性で、この殺されたベニグノ・アキノさんの妻ですね。

おおたに:そうです。

まき:私も女性を思い浮かべちゃう。

アッキー:その経緯は知らなかったですね。まだ幼かっ……たので。

おおたに:幼かった(笑)。私はニュースで見てびっくりしましたね。飛行機の中に兵隊が乗りこんだと思ったら連れだされてね。タラップみたいなところで銃声がパンパンパンとしたからね。

まき:えー!? 怖い。

おおたに:あとはもう地面に倒れてる、みたいな。生中継とはいわないけど、繰り返し、繰り返しそのニュース映像を流してましたよ。

まき:ちょっと衝撃的ですよね。

おおたに:だって暗殺する瞬間を、まわりに取材陣がいるところでやっちゃうわけだよ。人気がある人だったので、200万人の市民がその葬儀に参列していますね。

アッキー:なるほど。

おおたに:アキノ夫人──コラソン・アキノさんが大統領選に出馬宣言をして選挙をやったんですけど、与党単独でマルコス大統領当選を宣言しちゃうんですよね。怪しいでしょ?

アッキー:うん。怪しい。

おおたに:そんなに国民に人気のある人が立候補して、たぶんちゃんと票を数えたらアキノさんが当選するんじゃない? さすがにそれで国防大臣も反感を持ってアキノさん側について、アキノさんが「大統領になります」宣言をして、国民がそれに賛同して、デモとかで人が集まってくるじゃないですか。それで「マルコスを捕まえろ!」とかなってくるじゃない? それで米軍のヘリで国外へ脱出しました。そのへんもニュースでしたね。

アッキー:え? ちょっと待って。国外脱出したのはアキノさん?

おおたに:マルコスさん。

アッキー:マルコスさん! そうだ、そうだ。そうだった。マルコスさん!

おおたに:マルコスさんが当選を宣言したんだけど、国防相もアキノさんの見方に就いて、国民もサポートして大群衆になるじゃないですか。それで当時のマラカニアン宮殿をみんなで襲っちゃうわけ。それで米軍のヘリで逃げ出す。独裁とはいえ、一応親米政権だったからね。それでアメリカへ亡命ですね。

アッキー:そうだったんだ……。妻のアキノさんが大衆の前でいろいろ訴えていた映像は、すごく覚えていますね。

おおたに:覚えてますか(笑)。

アッキー:覚えてます。彼女はガンガンいってたでしょ。そうだったんだ。それは怒りますよね。怒りで。

息子のベニグノ・アキノ三世は、現フィリピン共和国大統領に

おおたに:さっき冒頭でアッキーさんに「イメルダと呼ばれませんでしたか」って。

アッキー:アハハハハー。

おおたに:イメルダさんって知ってます?

アッキー:知ってますよ。夫人ですよね……マルコスさんの?

おおたに:マルコスさんの夫人。

アッキー:ですよね。靴をいっぱい持つ。

おおたに:そうそう! その話が有名ですよね。だから、彼女のいなくなったあとのマラカニアン宮殿には1060足の靴?

まき:え!? すごい……。1060足もあるんですね。

おおたに:15着のミンクのコート、508着のガウン、888個のハンドバックが残されていた。

まき:えー!? それはどうなったんですか?

おおたに:物はどうなったんでしょうね(笑)。競売でもしましたかね。だってお金がもったいないもんね。

アッキー:もったいないですよね。

おおたに:当時は「すごく浪費していたんだな」という批判がありましたね。

アッキー:そうでしょうね。

おおたに:そのあとは国民投票で新たな憲法を作って、大統領は任期6年で再選禁止となりましたね。マルコスさんが再選、再選を繰り返していたからね。いろいろと大統領が変わっていったけど、今の大統領はたしかアキノさんの息子かな。ベニクノ・アキノ三世だって。2010年6月からアキノ三世が大統領です。

アッキー:はーい。

おおたに:というのが、今までのフィリピンの歴史ですね。

アッキー:わかりやすかった(笑)。

まき:わかりやすかったですね!

おおたに:覚えやすかったでしょ?

(チャイム)

おおたに:おや、鐘がなってしまいましたね。ちょうどいいのでこのへんで授業を終わりにしましょうかね。

まき:はい。

アッキー:はーい。

(起立、礼)