授業の前の確認事項

おおたに先生:(以下、おおたに)では、これから世界史の授業を始めます。でも、その前に出席を取ります。

まき君:(以下、まき)へい。

おおたに:あ、先に返事をしている人がいるな!

まき:あ、ごめんなさい(笑)。「へい」っていっちゃった!

(一同笑)

おおたに:まきくーん。

まき:はーい。

おおたに:アッキー君。

アッキー君:(以下、アッキー)はーい。それとおおたに先生の3人ですね。

おおたに:そうです。全員そろっていますね。

アッキー:はい。

おおたに:では、授業を始めましょうかね。

まき:はい。

おおたに:でも、授業を始める前に確認事項があるけれど、覚えていますか?

まき:じゃあ、アッキーさん!

(一同笑)

アッキー:何で生徒があてるの(笑)。そうですね。私たちは歴史の専門家ではないので、浅く、広く、表層的な歴史を取り扱っていきたいと思います。間違えることも、あるんですよね。人間だからね。

まき:あります、あります。

アッキー:なので、そのへんをあたたかい目で見守っていただければなーと思っています。

おおたに:はい。

まき:はいー。

フィリピンの面積は日本の8割程度

おおたに:で、今日の国は……じゃあ、まき君かな。

まき:フィリピンですよ、今日は!

おおたに:行ったことはありますか?

まき:ないです。

アッキー:私、あります。

おおたに:あるんだ!

アッキー:ちょっとの時間ですけど(笑)。

おおたに:イメルダと呼ばれてなかった?

アッキー:「いわれたい!」みたいな(笑)。

おおたに:じゃあ、まずは基本事項から。

まき:はい!

アッキー:はい。

おおたに:フィリピンはけっこう日本に近いのかな? 面積は29万9400平方キロメートルで、日本の約8割だそうです。

アッキー:意外と大きいですね!

おおたに:そうですか? あと人口は9234万人。これは2010年の国勢調査だから、今はもっと多いのかな。だから1億弱? 島が多くて7109もあるんだって。

アッキー:多い。

まき:おおー!

おおたに:見た目だって「島がいっぱい」という感じじゃん?

アッキー:本当ですね。

おおたに:だけど、日本もなんと6852個もあるんだよね。

アッキー:ええー!

まき:すごーい!

おおたに:すごいでしょ?

アッキー:知らなかった。

おおたに:面積も日本よりもちょっと小さめ。島も日本よりちょっと少なめ。人口も日本よりちょっと小さめという。スケール感は似ているかもね。

アッキー:本当ですね。

おおたに:地震もあったし、火山の噴火もあったし。

アッキー:近いからね。

おおたに:そうだね。太平洋プレートがお互いに潜り込むところだもんね。それが原因で地震や火山が起きるんだよね。

アッキー:そうですよ。

ASEANで唯一のキリスト教国

おおたに:国語はフィリピノ語。公用語はフィリピノ語と英語だって。

アッキー:タガログ語でしょ?

おおたに:本当?

アッキー:うん。たぶん。

おおたに:外務省の記述にはフィリピノ語と書いてあったよ。

アッキー:えー? まあ、タガログ語と呼ばれたりしていますね。

おおたに:そうなんだろうね。でも、元々島がいっぱいでいろんな民族がいるから、言語の数は80前後あるんだってさ。

アッキー:えー!

おおたに:大変だね。

アッキー:大変です。

おおたに:ASEANで唯一のキリスト教国だって。アジアですね。国民の83パーセントがカトリックだそうですよ。

アッキー:そうですよね。

おおたに:やっぱり歴史に関係しているのかなと思いながら、話していこうかな。

アッキー:はーい。

おおたに:お品書きとしては、最初に住んでいた民族の話をちょっとして、それから大航海時代でスペインから来た人として、マゼランの話をちょっとしようかなと思います。

アッキー:はーい。

おおたに:スペインやポルトガルを取り上げても、あまりマゼランの話はできないと思うのでね。ここでマゼランさんの話をしようかなと思っています。それからスペインに占領されて、スペインから独立しなければいけないし、でもそのあとアメリカにも占領されて、アメリカからも独立しなければいけない。

もちろん日本にも占領されてたし。太平洋戦争のあとは共和制になって大統領が次々と変わるんですけど、一番有名なマルコス大統領の話もしようかなと思ってます。

アッキー:お願いします。

おおたに:はーい。

まき:お願いしまーす。けっこうボリューミーな(笑)。

おおたに:そうですか!? はしょっていくから大丈夫だと思うよ。

まき:はーい。

フィリピンの歴史は2〜3万年前から始まる

おおたに:じゃあ、一番初めのところからいくと、2万5000年〜3万年前にこの辺に移住してきた、ネグリト族という人たちがいるんだって。

アッキー:ネグリト。

おおたに:うん。ネグリト。スペイン語で「小柄で黒い人」という意味なんだって。もちろん名付けたのは大航海時代のスペイン人だろうけど。黒さと、あと背も小さめだったんだってさ。「アフリカ人の一種かもしれない」と思ったんだって。別名大洋州ピグミーとも呼ばれている民族。

アッキー:ピグミー。

おおたに:それをイメージしてもらえば。そういう人たちがフィリピンのあたりに昔住んでいた、ということです。そのあとマレー人が移住してきて、石器時代のマレー人もいるし、その後数百年とか経つんだろうけど、棚田の水田農耕を始めたマレー人もいたそうです。

アッキー:なるほど。

おおたに:インドネシアとか棚田が多いもんね。

アッキー:多いですね。

おおたに:棚田と聞いて、やっぱり日本に地形が似ているのかなと思いましたよ。日本も海の中にいきなり山があって、まわりにちょっとだけ平らなところがあるって感じじゃない?

アッキー:そうですね。

おおたに:だから日本もあちこちに棚田があるしね。

アッキー:うん、確かに。

世界最古の成文法があったという説もある

おおたに:そのあと、ずっと歴史が飛びます。最古の成文法──文章になった法律「マラグタス法典」というのがあると書いてあったんですけど、いろいろ調べると、最近のフィリピンの歴史学者の間では「これはあとから作ったんじゃないか」という説もあるらしいです。

アッキー:そういう疑いも出てきた。

おおたに:そうそう。

おおたに:だって世界で最初の法律になった文書──成文法があったとすると、スペイン人が来た時に「おお、すごい!」って、騒がれているんじゃないのか、とかね。それが1250年頃で、そのあとの1372年頃、中国へ朝貢使節(ちょうこうしせつ)を派遣したって。

アッキー:1300年って、やっぱり進むのがけっこう早いですね!

おおたに:あまりないのでね(笑)。その頃はいろんな島々に小さい王国が分裂していた時代だからね。フィリピンというよりも、小さい部族がバラバラにいたという。さっきの成文法というのもパナイ島の法典で、フィリピン全体じゃないから。

アッキー:パナイ島ってどこですか? パナイ島。

おおたに:わかりません(笑)。調べてみてください(笑)。

アッキー:パナイ島(笑)。ごめんなさい、ちょっと(笑)。

おおたに:真ん中辺じゃない? 真ん中(笑)。今調べてもいいですよ。いい忘れたけど、フィリピンって、北にある大きな島がルソン島じゃない?

アッキー:うんうんうん!

おおたに:南にある大きな島がミンダナオ島じゃない? 真ん中にちょこちょこっとあるのがビサヤ諸島と呼ばれていて、大きく分けるとその3つで構成されているんだよね。有名なセブゥ(セブ島)もビサヤ諸島にあるんだよね。パナイ島、出ましたか?

アッキー:パナイ島、本当にここ? ありましたよ。マニラの下。

まき:マニラの下?

おおたに:マニラの下は地下鉄じゃないですか?

アッキー:マニラの下らへんにある……(笑)。

おおたに:ルソン島の南の方にあるってこと。

アッキー:ダスマリニャスとかなんとかいろいろあってね。ミンドロ島とかもあるんですけど、そのミンドロ島の上にある小さいところ。フィリピンのバタンガス……まな……パナイ島。

おおたに:違う、違う。調べたところによると、ビサヤ諸島の真ん中の一番大きい島じゃない? パナイ島は本当にフィリピンのど真ん中ということだよ。

アッキー:本当だ! こっちじゃん!

おおたに:こっちじゃん(笑)。

アッキー:変なのが出てきましたよ。ごめんなさい。本当に真ん中ですね。

おおたに:本当にフィリピンのど真ん中ですね。

アッキー:はい。わかりました。

おおたに:メインランドみたいな、わりとビサヤ諸島の中では大きめの島かな。

アッキー:ですね。

働かないことは罪である?

おおたに:中国の朝貢使節の時も話したけど、朝鮮の時も話ましたけど冊封体制(さくほうたいせい)ですね。

アッキー:うん? 何でしたっけ、それ(笑)。冊封体制(笑)。

おおたに:「貢物をするかわりに守ってあげるよ」みたいな(笑)。

アッキー:ありましたね!

おおたに:占領されることではないんだけど、親分子分の契みたいな感じ?

アッキー:はい。

おおたに:そのあと、また1433年頃には最古の刑法がパナイ島で見つかったと言われているけど。

アッキー:すごくないですか? パナイ島。

おおたに:うん。法律を作るのが好きなんじゃないの? 法律が必要だということは、法律で縛らないといろいろやっかいなことがあったのかもね。

まき:逆にいってしまえば。

アッキー:このパナイ島って、中心だったんですかね?

おおたに:うーん。かもしれないけど……。

アッキー:ねぇ。そこまではね。

おおたに:どこが中心といえるかどうかもわからないよね。

アッキー:うん。ホント、ホント。

おおたに:「マラグタス法典」の中に書いてあるのは、「畑で働くこと、あるいは日常の主食のために何かを植えつけることを意図的に拒否することは、懲罰に値するもっとも深刻な犯罪である」働いて何か食べるものを作れ、作らなかったら犯罪なんだって。

まき:「働け」ってことですね。

アッキー:働かない人が多いってこと!?

おおたに:「就職しろ」という(笑)。注釈として、怠けものは金持ちのところに奴隷として売り飛ばされる。働き者になったら家族のところに戻される。どうやっても怠け者である場合は、森の中に追放される(笑)。

まき:厳しくないですか(笑)。

おおたに:原始、大事な法律かもしれない。

アッキー:いや、わかるかも。というか、そういう人が多いんでしょうね。

まき:そうですよね。

フィリピン人の性格にはそぐわないかも

おおたに:2番目の大きいものは、強盗はどのようなものでも厳罰となる。泥棒の指が切り落とされる。

まき:切り落とされちゃうんですね。

おおたに:イスラムっぽい。

アッキー:なるほどね。

おおたに:あとは、1つの家族、またはそれ以上を養えるものだけが一度以上結婚でき、何人でも子供を持てるんだって。

アッキー:本当にイスラムっぽいですね。

おおたに:イスラムっぽいな。それも理由かな。フィリピンらしくないとか、疑わしいといわれている。

アッキー:そうかもしれない。

おおたに:多くの法令がフィリピン人の性格と相反するものであったり、罪と罰則がアンバランス、不自然だって。罪にしたって、もっと大らかっぽいイメージがあるもんね。

アッキー:うんうん。

おおたに:ということが、ちょっと紹介でした。

アッキー:はーい。

まき:はいー。