Yahoo!検索のSSL化を受けて、マーケターは何をすべきか

中山陽平氏:今回は、タイトルにもありますけども、Yahoo!のSSL化というところ、正確にいうとYahoo!検索がSSL化されたことによって、またそれによる仕組みの変化によって、Yahoo!で検索してみなさんのサイトにきた場合の、流入キーワードというものがわからなくなってしまった、という状況が発生しています。

この変更自体は、この間というよりは、もう結構前になっているので、悩んでいる方、それから「こういうふうにしたらいいよ」という、いろいろなノウハウが出ていると思うのですけれども、このポッドキャストは、そういった細かいテクニック論の部分ではなくて、今後マーケターとして、どういう状況を見据えていかなければいけないのか、ということをお話しできればと思っています。

Yahoo!SSL化ということで、Googleも元々SSL化をしていて、リダイレクトを挟むことによってキーワードの情報を落とすということをしています。それによって、一般のアクセス解析ツールでは、キーワード情報を昔のように得ることはほとんどできません。

最近、あるいはGoogleのSSL化してnot providedがたくさん増えるように出てくるようになった時期、そのあたりからやりはじめた方には気付かないかもしれないのですけど、過去5年とか、もっと遡ったりすると、基本的に検索エンジンから検索してきたキーワードは全部わかった。

今not providedとなってるところが全部ちゃんとわかった。それによってそのデータを基に、検索キーワードというはお客さんが文字にしているニーズそのものですから、それに合わせて「こういうキーワードできてるんだから、じゃあこういうコンテンツにして、こういうものを出していけばいいよね」とやって、検索エンジンからの流入をうまく確保していったわけです。それが今、その情報がない。

今後はデータが取れない時代になっていく

Googleに関しては、まだベータ版ですけども、Googleサーチコンソール、GSCのほうから検索アナリティクスがなくなるということはないと思いますので、ここからかなりの情報を得ることができます。

ただYahoo!は、「Yahoo!サーチコンソール」といったものを出す予定は今のところないということになっていますので、Yahoo!に関しては本当にわからない状態になってしまうのかもしれません。

そしてほとんどの商売において、Googleから来たお客さんとYahoo!から来たお客さん、全然傾向が違うはずですね。やっぱりなんだかんだいって、B2Cなんか特にそうですけども、普通の方はYahoo!を使うんです。

そうじゃなくて、ガジェットものが好きとか、IT業界にいるとか、それからシステム関係の人とか。そういう方はGoogleを非常に使うので、Google経由で来る人が多い。

何が言いたいかというと、GoogleサーチコンソールのデータをそのままYahoo!のデータと見たり、Googleサーチコンソールのデータを2倍にしたら検索エンジン全体のキーワード数やキーワードの分布がわかったりするかというと、もちろんそんなことはないと。

Yahoo!はYahoo!で、全然Googleと違うということです。なので事実上Googleサーチコンソールで得られる情報以外のデータは得られない時代。そういう時代になってきています。

これに関してはさきほども申し上げましたけれども、じゃあどうやっていくのというのは、いろんなやり方があると思います。流入数、ランディング数、それから「こういうキーワードで来るだろう」という検索順位とか、あるいはその後のサイト内でのビヘイビアですね。

そういったものを考えて、「おそらくこういうニーズを持って、こういうキーワードで来ているんだろう」ということを推測してやっていくことが、きっと王道になっていくと思います。

その辺りは仮説と検証を繰り返してやっていくということになっていくと思います。こういうふうに、どんどんデータが取れない時代に入っていくと思います。

これまでは恵まれていたとも言える

大事なのは、このWebマーケティング、今まではすごくデータが取れたんです。キーワードの情報もそうですし、それ以外のいろいろな情報が昔はすごく取れたのですが、それがどんどん取れなくなっています。

昔の、キーワードがどんどん取れた時代というのは、例えていうなら、お店に来た人が「私が欲しいものは何だ」というのを、全部入口でアンケート用紙に書いて行ってくれるような状態です。リアルの世界で言えば。

「柄物のワンピースが欲しい」「5千円以内でニットのバッグが欲しい」とか、そういうものを、全部リアル店舗の入口のアンケート用紙にきちんと書いてくれる、そんな感じの状態なわけですね。キーワードを全部取得できた時代というのは。

それってリアルの世界で考えると恐ろしく素晴らしく、我々売り手側にとってありがたい状況だったわけです。リアルの世界と比べると、そういう非常にありがたい時代がずっと続いてきていた。それがWebなんです。

それは決して、別にWebが優れているわけではなく、そういう仕組みになっていただけなので、それ自体がWebの利点というわけではないです。

そして、プライバシーとか、いろいろなポイントカードの問題とか、マイナンバー制の問題とか言われている中で、プライバシーに関する意識は非常に高まっています。

リアルの世界ではどんどんセキュリティの面に関して個人情報保護保護の観念が浸透していってるわけなんですけども、それは決してリアルだけではなくって、Webのほうにも波及するはずです。

ということは、今までみたいなダイレクトなデータを、ずっとずっと得られる(とは限らない)。キーワード以外にも、もしかしたらもっと取れなくなってくるデータも出てくるかもしれません。

今のところ、AdWordsなどでは、広告関連でいろんな情報を取れます。そういった情報も取れなくなってくるかもしれない。もしかしたらSEO、つまり自然検索経由についても、もっともっといろんなことがわからなくなってくるかもしれない。

検索順位なんかも、今現在でもそうですけど、パーソナリゼーションが非常に進んでいます、ローカリゼーションも進んでいるので、一人ひとりの検索順位が非常に違うんです。

そういった意味でいったら、統一された「自分が何位にいるか」という検索順位は、かなり取れなくなっちゃっています。人によって全然違うので。

というふうに、多様性みたいなものも含めて、固定的で確度のあるデータというものが、なかなか取れなくなっていくと考えたほうがいいと思います。

これからは「データ以外の部分」が大切になる

そういう前提で、将来マーケティングをしなければいけない。また、これからもどんどんそういう状況になっていくだろうということは、考え方の中で、必ず押さえておいたほうがいいと思うんです。

将来を見据えると、自分がこういった情報を使えなくなったとして、あるいは頼らないことを目指すとして、じゃあどういうふうにしたらいいのか。そういうことを考えて、マーケティングのテクニックといいますか、技術を磨いていく方向の方が絶対にいいと思います。

今回の、Yahoo!のSSL化というのは、きっかけとしては非常によかったんじゃないかなと思うんです。やらなきゃいけないことは、「きっとこういう人が来てるんだろう」「きっとこの人はこういうものを求めていたんだろう」というのを考えて、それに対して、「じゃあ、こういうことをやってみよう」という施策を行なって、当たれば反応が良くなるはずですし、外れれば変わらないか悪化するわけです。いわゆるPDCAです。そういったものを回していく。

データに頼らずに想像してお客さんのことを考えて、そしてお客さんがもっとも喜ぶにはどうしたらいいのか施策を考えて、繰り返し、繰り返し行なっていくという、ある意味リアルな世界で、リアルなマーケティング活動を行なってるようなことをやっていかなければならない時代が来るんじゃないかなと思います。

「データがない、データがない」とボヤいているのは楽なんですけれども、それでは先がありません。そして、これから手に入れられるデータが増えるということも、まずない、減る一方だと思います。

だとしたら、それに対して、そういう確度の高い定量データが手に入らない前提で、例えばユーザーに実際使ってもらうユーザーテストを行なってみたり、競合に対して覆面調査をしてみたりとか、あるいは、いわゆるヒューリスティック分析ですね。自分たちで分析を行なって、それに対して施策を考える。

そういう「データ以外の部分」がこれからのマーケティングにとって非常に大切なんじゃないかなと考えると、おそらくこれからはマーケターの戦国時代といいますか、結果を出せる、新しい時代に適応できるマーケターと、そうではないマーケターに分かれていくんじゃないかなと思います。

その1つの分岐点が今回のSSL化による、キーワード情報が取れないということなんじゃないかなと思います。ここはですね、思い切って、早く気持ちを切り替えて。もちろん現業がありますので、今やらなければいけない定量的な手法は引き続きブラッシュアップしていったほうがいいと思うんです。

けども、将来、そういった時代に入っていく。あるいは、少ないデータから、いかに確度の高い情報を得るか、みたいな能力が問われる。そういう時代が来るということを考えて、いろいろなスキルアップであったり、情報収集、それからツールの活用、サービスの活用といったものを考えていくといいのではないかと思います。

正直、この業界ずっとやってきた身としては、この転換は、長くやってきた身ほど辛いわけなんですが、頑張っていろいろなことにチャレンジしています。