地球上で毎年3億回の雷が落ちている

ハンク・グリーン氏:毎秒約100回、世界のどこかで雷が落ちています。年間では、およそ3億回にもなります。しかし、あなたが雷に打たれることはまずありません。アメリカにある、雷に打たれる可能性の年間割合を表した、中々良くできた統計によると、ある人が雷に打たれる割合は100万分の1でしかないのだとか。しかも、それは3千人中の1が産まれてから死ぬまでの間で考えて、です。

もちろん、住む場所や生活習慣によってその確率は違ってくるでしょう。タンパに住んでいて、なおかつ竜巻を恐れずに7月にゴルフをするのが好きなら、ピカッと来られるでしょうね。馬鹿だなあ、って話ですが。

直撃雷と誘導雷

雷には、直撃雷と誘導雷という2つの種類があります。

直撃雷というのは、ゼウスがあなたの頭の上に雄牛の狙いを定めるかのような雷です。例えば旗用のポールのようなものを持っている時に起こるもので、雷が落ちるとその電流が直接体に走ります。

誘導雷は、まず地面に落ちて、足から電流が伝うものです。一度の落雷で沢山の人々を攻撃する誘導雷での負傷者の方が、直撃雷での負傷者よりも多くなるのですが、仮に群衆の中の誰かが直撃雷を受け、誰もその場から動かなかったら、どうなるでしょうか。そこから生じる誘導雷は何秒もたたないうちに牛をも丸々殺してしまうでしょう。

おっかない話ですが、落雷はその周りの空気を太陽の表面温度のおよそ5倍の熱さである27000度にまで上昇させる300kVものエネルギーの爆発です。

さて、灼熱、もしくは5つ分の太陽があなたの血肉の中に浸透して来る時に何が起こるのでしょうか。最悪、命を奪ってしまいます。体内に侵入した電流の流れは頭蓋骨へと侵入し、フライパンで焼かれた卵のように脳を料理してしまうのです。

とは言え、通常、落雷が原因の死と言えば、落雷のショックによる心肺停止によるものなのです。

雷に打たれたとしても、生き残れる可能性のほうが高い

驚くことに、70〜90パーセントの落雷被害者は一命を取り留めています。被害者が無傷で息を吹き返し、そのままゴルフを続けた、という話ではありませんよ。落雷で受けたケガはとんでもないでしょうから。

ただ、もしあなたが雷に打たれたとしても、そのままその場で息を引き取るのではなく、生き残れる可能性の方が高いという話です。

万が一雷に打たれ、生き延びることができたなら、靴が吹き飛ばされ、とてつもなく高温の一撃が服をずたずたにしたり、燃やしてしまったりするのを目にするでしょう。

もし宝石や、ワイヤー入りのブラジャーを身につけていたなら、電流を体内に放電させてしまい、やけどを負ってしまうでしょう。

雷が直撃し、放出された部位には深い傷跡が残ってしまいます。しかし、雷に打たれてしまったら、惑星一のカッコいい傷持ちになれるかもしれません。一風変わった物理学によると、放電はマルクスが「リヒテンベルグ図」と呼んだ、血管が焼かれる時にできる、まるで稲妻のように見える、無料のお土産のタトゥーのような奇妙な多角形の傷を残すのだとか。

体内に流れた電流は身体に様々な影響を及ぼしますが、神経系にも無関係ではありません。温度を感知する神経を永続的に不能にしてしまいます。落雷からの生存者はパーキンソン患者に見られるような、部分的な麻痺である筋収縮が現れる場合もあります。また、雷の直接的な被害ではないにしろ、鼓膜も破裂してしまうでしょう。

落雷被害者は自殺率が上昇するというデータが

落雷からの生存者たちはその後の人生において、精神的にも肉体的にもトラウマを抱えることになります。たくさんの記憶障害が起こり、睡眠障害が起こり、バランス障害を引き起こし、頭痛や短気、落胆を招きます。これらは皆落雷の生存者に共通して見られる症状です。

それらの症状は落雷後何ヶ月にもかけて出てくるでしょうが、人が落雷に打たれることはめったにないため、多くの医者はどう対処していいのかわかっていません。

自分たちの苦しみをわかってもらえないことに対する落雷被害者の不満が落雷被害者の自殺率の高さを表していると言っても過言ではないのです。このことは落雷被害者救済グループを立ち上げるきっかけとなりましたが。

史上最も雷に多く打たれた記録を持つ、ロイ・サリバンはフォレスト・サービスに勤めている間に7回雷に打たれています。彼は落雷からは生き延びたものの、繰り返す落雷時のショックに耐えきれなかったのか、結局自殺してしまいました。結果的に、落雷は間接的に彼を死に至らしめてしまったのです。