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江戸の人は、おっぱいに興味なし? 春画に描かれるフェティシズム

江戸の人は、おっぱいに興味なし? 春画に描かれるフェティシズム

都内で開かれた女性・カップル限定イベント「春画のいろは~一夜限りの春画 Bar~」も終盤。今回は、未亡人と養子の「親孝行」話であったり、性具のみを描いた作品など、前回にもまして特にユニークな春画を見ていきます。江戸時代は性具を売り歩く行商人がいたり、春画が縁起物になったりと、性文化が非常に豊かで、アグレッシブであったことを改めて感じることとなりました。こうした文化が成立した社会的要因についても話されています。また、春画においては胸より足の表現が豊かな理由についても言及されました。

シリーズ
春画のいろは~一夜限りの春画 Bar~
2015年12月18日19時30分のログ
スピーカー
美術ライター/編集者 島貫泰介 氏
春画展日本開催実行委員 浦上満 氏
美術手帖出版社編集部 望月かおる 氏
株式会社TENGA宣伝部広報 クドウ 氏

グッズも使う、親孝行の春画?

IMG_0874 島貫泰介氏(以下、島貫) こちらも、おせんさんですね。 クドウ氏(以下、クドウ) さっき買ったものを使っているという絵になるんですけれども(笑)。これ、張型ですよね。結構大きい張型を装着して入れているんですね。 浦上満氏(以下、浦上) これもさっき言ったように、若いんですよ、男性がね。それで、これだけじゃないけれども、女性がちょっと年増でしょ。このシチュエーションが、さっきの「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」(注:前出の葛飾北斎「蛸と海女」が載っている艶本)にもありましてね。詩が書いてあるから読むとおもしろいんですよ。なんと、親子なんです! 近親相姦かと思ったらそうじゃなくて、養子なんですね。美形の男の子をもらい受けてきて、未亡人が養子にするんです。それで何をするかというと、「親孝行に励みなさい」と言ってね。大変なんです。「おっかさん、もう勘弁してください」「何を言っているんだ、まだもっと親孝行しなさい」っていう。そういう笑い話なんです。これなんかも、ちょっとそれに近いんです。最後に張型を使ってまで。 クドウ 雁高で。 浦上 あぁ、雁高だね。本当だ。 クドウ 張型の雁高を使ってやっている。結構、この紙くずがすごい気になってしまうんですけど。 浦上 そうなんですよ。この春画っていうのはめちゃくちゃなんですよ。読むと、「7枚あったけど、あと3番いこうぜ」とかね(笑)。訳のわからないことがいっぱい描いてあって。 これは、クドウさんも気がついたようですけど。僕、香港のサザビーズで2年前に展覧会したんです。サザビーズってオークション会社なんだけど、「売り物じゃない」っていう状況なのにすごく感じのいい会場作ってくれて。ものすごいたくさん人が来て、若い女性が圧倒的に多かったんだけど。 その時、一番話題になったのは、「Oh, many tissues !」(笑)。そんな感じで、いっぱい描いてあって。その時に、雁高と描いてあるのが、そのことですよね。実は、北斎の隠号というのがあるんです。春画を描く時、名前を変えたりするんです。あの人は、「紫色雁高(ししきがんこう)」というんですね。紫色の雁高なんですね。みんなすごい名前をつけているのね。 例えば、広重って真面目なんです、結構。でも、春画書いてます。みんな描いたんです。浮世絵師で描かない人いないです。広重の隠号は、「色重(いろしげ)」っていうんです(笑)。あと、「婦喜用又平(ぶきよていまたへい)」(注:歌川国貞の隠号)とか、「淫水亭開好(いんすいていぼぼ)」(注:歌川国盛の隠号)とか、すごいの名前をつけて、それだけでもおもしろい。

江戸時代の性具は今と同じ

IMG_0877 島貫 まさに性具だけを描いた春画をいくつかご紹介していきたいと思います。これはもう、もろに張型ってやつですね。 クドウ そうですね。真ん中にどかんとあるのが張型で。水牛とか鯨の歯で昔は作っていたみたいですね。硬くて痛そうな……。一番右のこれなんですけども、おそらく兜型。兜型って、昔のコンドームなんですよ。どうやって使うのかというと、張型の上の部分を切り取ったものなんですけど、男性器の上の部分に装着させて挿入すると、精子が漏れないっていう使い方をしていたみたいですね。TENGAでいうと、TENGAコンドームです! 島貫 なるほどなるほど! 普通に、外れたりしないのかなっていうのが。 クドウ そうですね。 IMG_0879 島貫 ちょっと不安もありますけども。次行きましょう。これは、肥後芋茎(ひごずいき)ってやつですね。装着された状態で。左側は、多分。 クドウ 芋の茎を巻きつけてできているみたいで。お湯で柔らかくしてから使うみたいですね。 島貫 あぁ~! そうすると装着しやすいみたいな。 クドウ 挿入しやすいんでしょう、柔らかくなって。痛そうですよね、これ。 島貫 いろんなこと考えますよね(笑)。左なんかは、女性同士で楽しむための張型ですよね。 クドウ 互い型って言って、お互いに。さっきも使っていたやつありましたね。 IMG_0880 島貫 この辺は、いろんな道具が上にばーっとあって、おそらく、こういうのを使って楽しんでくださいよみたいなかたちだと思います。 望月かおる氏(以下、望月) 当時、庶民も使っていたんですかね? 浦上 よくわからないんですね。 望月 結構高級なものだとおもうんですが。 浦上 べっ甲もありますしね。いろいろありますけども。これだけ描かれたっていうことは、結構ポピュラーだったんじゃないですか。おもしろいですよね。さっき、望月さんがおっしゃったように、「江戸時代の人も今の人も、やること変わらないわね」っていうのは、結構そうですよね。 島貫 むしろ、行商が来るぐらいだから、今と変わらないけれども、意外とアグレッシブなところもあったのかもしれない。そういう想像もできるのが、おもしろいですよね。

春画文化は儒学に対する反動?

浦上 江戸時代の女性って、明治もそうだけど、非常に暗い時代で。小さい時は親の言うことを聞いて、結婚したら夫の言うことを聞いて、老いたら子どもの言うことを聞きなさいと。一種の儒学ですね、儒教で。貝原益軒さんという有名な儒学者がいて。さっき言った「女大学宝箱」というのを書いた。これは、「女性はそのように生きなさい」という教訓書なんですね。儒教に基づいた。 ところが、月岡雪鼎(つきおかせってい)という人が、それから40年後に全くのパロディー文を出すんです。そこは、名前も同じ「女大学宝開(おんなだいがくたからべき)」。ほとんど同じような構成、同じような絵で、実はこっちはもう「女の人の一生は1回だから、楽しみなさいよ」と。これまた大変ウケるんです。 月岡雪鼎という人は大阪の人なんですけども、この人はとっても肉筆画が素晴らしくて。この間、横浜美術館で蔡國強(さいこっきょう)さんの展覧会に行かれた人もいるかもわからないけど。僕、蔡國強さんに会ったら、もう感激しちゃってね、彼。大きな作品を春夏秋冬で雪鼎の真似をして描いたのね。描くって、あの人は火薬を使って描くんだけど。 島貫 これは美術手帖でも取り上げてますね。 浦上 そうなんです、彼は国際的なんですよ。春画って。特にアーティストで春画を否定する人は、私は見たことないですね。だから、蔡國強もそうです。 それで、また雪鼎に戻ると。雪鼎の春画は、火除け。さっき春画にはいろんな効用があるって言ったでしょ。お嫁道具に出たとか、武士が戦場に連れて行くと買った勝ち絵だとか。いろいろあるんだけど。その中の一つにね、火事、火除けってあるんです。 特に、雪鼎さんは、京都かな。すごい大火でみんな燃えた時に、あるお蔵だけが全く燃えなかった。開けたみたら、雪鼎の春画が出てきた。「これがあったから燃えなかったんだ!」っていうんで、ものすごくみんなが先を争って彼の春画を買ったという話が残っているんです。 なんで、「春画が火除けにいいのかね」って。その心は、「それは、濡れるからです」って(笑)。私が言ったんじゃないですよ! そういう世界です。 島貫 結構、粋な感じと縁起物みたいな感じで。 浦上 まったく縁起物ですね。

変わり種・春画「開」

IMG_0891 島貫 それでは、次お見せする春画は変わり種なんですけど。左下にいる人魚と蛸人形のまぐわい。 クドウ かわいいですよね。女性がすごくにこにこして、ひらひらして。上もなんか(笑)。 島貫 多分これは……、そうですよね? クドウ 女性器でタバコを。 浦上 煙管を。 クドウ 女性器で吐いている。煙がもくもくと出ていて、男性が喜んでいるような絵ですよね。 島貫 「うひゃーん」みたいな顔している。 クドウ これ、頬が赤いんですよ。酔っ払ってるわけではないんですかね? 浦上 それは、びっくりじゃないんじゃない。描いてあるでしょ、あれがつびです。女性器のことだからね。 望月 「開」っていう。 浦上 そう、「開」の八曲の見世物と描いてあるね。 島貫 ちょっと昔の浅草とか熱海とかの、温泉芸者の方のなかには、こういう芸をされたような方も多分いたと思うので。こういうのが江戸時代にもあるのかなというかたちですね。 (次のスライドで)これも似たような感じの。 クドウ 左の絵は、本日コースターでお渡ししている絵になるんです。実は、ちょっとこれだけじゃなく、いろんなirohaもいれてしまいました。探してみてください。 島貫 今日、ドリンクを注文された方、もう持たれている方いると思うんですけど。そちらに、それをデザインして。今、クドウさんがおっしゃったように、そのなかにirohaが隠れているというので、ぜひ見ていただければと思います。

足と胸の描き方に特徴が

これでスライド的にはラストで。それでは、皆さん戻っていただいて。立ちで見始めるという感じなんですけども。少し時間が押してしまったんですけど、もしよろしければ、会場から質問がありましたらば受けたいと思います。早速、女性の方が。 質問者 ありがとうございます。春画の表現で質問があるのですが。永青文庫の今回の展示のポスターで、足をトリミングしたポスターになってましたが、足の表情というのがすごく豊かかなと思うんですが。足の表情の重要性がどのくらいあったのか、と。足に対して、おっぱい、乳房がものすごい、ささささっと描かれているというのが、今の現代のポルノとちょっと違うのかなと思ってまして、その点を教えていただけますと幸いです。 浦上 足に関しては、文藝春秋の本誌、月刊のほうで、細川さんと石上さんと3人で鼎談というのをやったんですよ。11月くらいに。結構、これウケたんですけど。その中で細川元総理が「あの足の現象をなんとか現象と言うんですよね」とか、結構お詳しいんですよね。こう引きつるような動きで。それだけ見てても色っぽいなって感じで。「あ、そうですか」と。私はよくわからないんで、聞いてましたけども。 足もおしゃれですけど、よく見ると、あんなふうに映らないと思いますけどね。イメージですよね。今おっしゃったように、おっぱいが本当におっしゃる通りなんですよ。意外と無視されるのね。歌麿は、結構マザコンだったから、結構おっぱい描くんですけど。普通はあんまり描かないですね。さっきも、顔があって、女性器にいくと。そういう感じなんですよね。 それは、多分だけど、皆さん若いからあれだけど、僕ぐらいになると、実際のおばあちゃんじゃなくて、結構胸を出していたというのがあるんですよね。あんまり恥ずかしいことじゃなかったんじゃないかな。日本人にとって、胸を出すのがね。 その分、そんなに秘められたものじゃないから、そんなに取り上げられなかったのかもしれませんね。実際、本当におっしゃる通り。非常に胸はささっと描いてありますね。 島貫 実際、明治初期の写真を見ても、上半身裸の女性とかっていうのは、ちょこちょこ出てきたりもするので。かなり近世というか、近代まであったものだと思います。 ほかに、ご質問あれば。大丈夫ですかね。

第一部の終わりに

この後、フリートークといいますか、時間を設けておりまして、上で実物の春画を見ながら。かつ、今日は豪華なことに、浦上さんに「浦上テーブル」というものをセッティングしましたので。そこで、今日お見せしたもの以外の本物の春画を、かなり間近で見ていただきながら、質問に答えていくような時間を設けましたので。ぜひ、そちらで、忌憚ない意見というか、忌憚ない好奇心でおうかがいいただければと思っております。 これで第一部のトーク終了なんですけども。これから、こちら皆さんで立食というか、お話ししていただけるようなかたちにするので、席を一度バラしたいと思っております。これが終わった後、一度皆さん、1階でも大丈夫ですし、あちらの作品見ていただいても結構ですし。2階に上がっていただいただくというようなかたちで移動をお願いできればと。 浦上 階段のところに豆版といのが3点飾ってありまして、2階に上がっちゃうと、全部で大小で10点の額装したものがあります。全部で13点飾ってあります。そのほかに、さっきお話がありましたように、私が持ってきたものをテーブルでお見せできたらなと思っております。 島貫 テーブルの上には、今回美術手帖の春画号ですとか、あるいは、irohaさんの新商品なんかもあるので、そちらも実際に動かしてみてできるので、ぜひ手に取っていただければなというふうに思っております。 告知事項なんですけど、皆さん、すでに飲まれていらっしゃる方もいると思いますけど、今回オリジナルカクテルをこのイベントのために3種類作っておりまして。それぞれおもしろい味をしていますので、是非そちらのほうを飲んでいただければなと思います。 あと、今回望月さんが編集を担当された美術手帖の特集号を、今日だけの特別価格ということで、普段は税込1728円。ちょっと細かいんですけど。これを1500円で販売しております。是非ご興味ある方は、お買い上げください。図鑑も今日出てきたものだと、本当にこれぞというものも載っていますし。 クドウ 巻末に浦上さんのコレクションである豆版を。 浦上 原寸大(笑)。 望月 こういうふうに蛇腹で入れさせていただきました。切り取って。懐に。 IMG_0901 (会場笑) 島貫 縁起物ですね。 望月 持ち歩くということができるので、是非やってみてください。 島貫 というような感じで。これで第一部終了ですね。 クドウ 春画のほうなんですけど、写真撮影はOKなんですけど、フラッシュをお気をつけてください。傷んでしまうので。よろしくお願いします。 島貫 それでは、第一部終了ということで、浦上さん、望月さん、クドウさん、どうもありがとうございました。

  
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