結婚式という名の暴力

山田玲司氏(以下、山田):だいぶ前だけど、この人友達がいっぱい結婚式をしだすシーズンに入ってきた時期があって。20代後半くらい。その度に金が出る。

「山田さん、あれ暴力ですよ。結婚式って暴力じゃないですか」ってずっと言ってて。「これ新書で出そうかな。『結婚式という暴力』」「誰かいないかな書く人」って言うんだよ(笑)。これ売れそうでしょ!?

それで結婚式関係の周りのライターさん集めて、『結婚式という名の暴力』って本出そうかなって(笑)。

柿内芳文氏(以下、柿内):実際には出てませんけど、やろうと思えばいつでもやれますよ。

山田:わかる? この感覚。

柿内:だって暴力の定義と同じなんですもん。一方的な暴力じゃないですか。

おっくん氏(以下、おっくん):まあ、理不尽なね。

柿内:だって、幸せだったら何してもいいんですか?

おっくん:なるほどなるほど。

柿内:一方的なタコ殴りっていう感じじゃないすか。

山田:タコ殴りだね。

おっくん:いま聞いてて思ったのが、突飛なことじゃないんですよね。柿内さんって。

山田:意外と普通。

柿内:すごい普通の感覚ですよ。誰でも感じるところです。

おっくん:それをすごい素直にスッと出せる。逆に言うとあんまり考え込まないのがすごいなって。

柿内:でも納得いかないのは嫌ですね。

おっくん:そこですよね! だからひっかかりが多分普通の人よりもある。

柿内:今だに結婚式に納得いってないすね。

おっくん:俺もそれは納得いかないですもん。

ご祝儀代に800万円費やしてきたリア充女性

柿内:こないだ久々に行ったんすけど、やっぱりちょっと納得できなくて。でも自分は暴力を受けてるんだと思えば。

おっくん:レイプされてんだと。

柿内:そうそう、そういう感じで全然いいんで。例えばね、明記されてないけどご祝儀が3万円が相場だったりするじゃないですか。社会人の場合。

おっくん:あれね、偶数だとなんか、割り切れるからみたいなね。

柿内:二次会の案内とかくるじゃないですか。男性8千円、女性6千円とか書いてあるじゃないですか。祝儀もそうしろよって思わないですか? 男性が3万入れて、(もし)女性が2万入れてたら「3万入れてない奴」みたいになるじゃないですか。あんなの二次会は差をつけといて祝儀だけはもらっときますみたいなの。

おっくん:でもそれ言うと「自分が結婚式挙げるときに返ってくるから」みたいなこと言うじゃないですか。

柿内:それが、違うじゃないすか。知り合いに、結婚式に800万以上出してて自分はもう結婚を諦めてる女性知ってますから。

おっくん:えええ?

柿内:リア充で、すっごい人脈広い人なんですね。だからすごい誘われるんですよ。ご祝儀で3万円、女性の場合だと着付けとかでプラス2万、実質5万だとするじゃないですか。

月1で誘われても、20年とか30年とか経ってると、もうとんでもない額になるわけですよね。800万とか。本人は結婚できずに、誰とは言わないですけど、もう(結婚を)諦めてるんですね。

でもその何百人っていう人たちは、「自分らは結婚できて良かったね。結婚式挙げてあのときは良かった、ハッピーだった」みたいな感じしかなくて。まさかね、何百万も。

おっくん:あー、それはね、出しましょう! 本! その人に書いてもらえばいいじゃないですか。

柿内:いや、本当に。でもその人は別にそんなの何も気にしてないんですよ。

じじいリテラシーは必要

山田:あとね、この人新入社員の時、上司をいっぱい敵にまわすわけですよ。

柿内:まわしてないですよ(笑)。

山田:俺だってさあ、俺の同世代の編集者も知ってるじゃん。だからカッキーが、どんだけ異質な存在として光文社でスタートして現れたかって知ってるわけよ。すっげーの現れちゃったなって感じがあるわけよ。

だからこの人に関しては、みんなを眩しく見てるなっていうより、「このおっさんたち邪魔だな」と思ってると思うんだよね(笑)。言わないにしろ。

だけど、ここでぶつかったら大人としてダメだと。辞めるわけにいかないぞって葛藤で、この人がとった戦略が。敵はジジイだと。ジジイを知ろうと。必要なのは、ジジイに対するリテラシーだと。

「じじいリテラシー」って言葉をこの人作って、『じじいリテラシー』って新書出してるから。若いライターの女の子使って。

じじいリテラシー (星海社新書)

柿内:じじいリテラシーは無いとダメですよね。

山田:だからそこでぶつかるんじゃないんだよ。

柿内:ぶつかるとかどうでもいいんですよ。要は……売りたいんですよ。ぶつからずに売れたら別にいいんですよ。でも売るためならぶつからないといけない時があるじゃないですか。それをどう解消するかっていうのが。ぶつかるとかどうでもいいんですよね。

別にぶつかりたくてぶつかってるわけじゃないんで。だから、こうやった方が世の中に広まるなあ〜って、この素晴らしい考えが、もっと世の中に広がるのになあ〜ってって言ってるのになぜかそうならない時には納得がいかないから。

おっくん:なるほど。

柿内:ただ、そこでぶつかると余計に、なんだろう。例えばその1回は上手く行ってもその次が敵になってしまうと、結局抵抗勢力みたいになっちゃうと。

おっくん:人間関係ですもんね。

柿内:結局人間関係によって売れる才能が世の中に出なかったり、売れる本があんまり売れなかったりするとアホらしいんで。

おっくん:結果的に社会を不幸にする。

柿内:だからぶつかり方が重要なんですよ。

おっくん:だから後腐れなくうまいことやろうと。

山田:敵を知ろうってとこから始めようって話だよ。

おっくん:孫子だ。

柿内:その人はその人でスタンスがあるわけで、その人が悪いんじゃなくてお互いの立ち位置とベクトルが違うだけなんですよ。単純に。

山田:世代によって全然違うから。

柿内:良い悪いじゃないんですよ。その人がアホだとかそうじゃなくて。単純にとってる見方が違うだけだと思うんですよね。だからそうやって合わせるかっていう調整?

おっくん:なるほどね〜〜。

老害は俺だった

山田:そんな柿内くんも先輩になるわけですよ。そいで、星海社に移るわけよ。そうすると、その後輩、今井(雄紀)くんっていうの僕紹介されて。一緒に仕事とかしてて。

これとか今井くんと一緒にやってて。星海社のジセダイってサイトの編集長をやってるのが今井くんなんだけど、聞いてきたよ。今井くんも全裸対談やってますから。同じ中川さんと。

おっくん:伝統なんすか(笑)。

山田:引き継いでますから。そんで、俺実は聞いてきた。柿内伝説。

柿内:全然知らなかったそんなの。

山田:(ラーメン)二郎に連れていかれました。「入ったら俺の名刺あるからチェックよろしくね」とのたまうが、店の名刺はすでに片付けられており意気消沈。「特大サイズの大豚W以外俺は認めないぞ」と言っていたのにも関わらず、自分はノーマルサイズを注文し、しかも残すっていう(笑)。

で、そのあと後輩に「この店舗は初心者向けだからね」と言うのがやっとだった。っていうのが武勇伝として言われてますね。

柿内:なるほど。もう老害ですね。

山田:あと今井くんがリアル脱出ゲームにハマってるらしいんですけど。

柿内:僕がハマってるんすよ。

山田:あ、あなたがハマってる。後輩の今井がTwitterやFacebookに「リアル脱出ゲームに行く」と言うと、いきなりLINEに「最後の答えは○○」と送ってきてやる気をそぐって言ってますよ(笑)。

柿内:そうですね、うん。大人げないですね。もっと仕事のいいところ言ってくれりゃいいのに。

山田:あとね、後輩にいろんな人紹介してくれるのはありがたいんだけど、誰に会わせたかすぐ忘れるって。で、何回も「今井くんって山田さんに会ったことあったっけ」と真顔で聞いてくる(笑)。

でも意外と、彼から来たので「これはひどいな」っていうのは無かったね。

柿内:ま、良い関係ですから! 次郎はねー。自分が食べるなんて一言も言ってないからね。

ルノアールのメニューはあえてまずくしている?

山田:こないだ、今井くんのTwitterですごいの見た。サンドイッチ半分くれ事件。サンドイッチあるじゃないですか。

おっくん:サンドウィッチ伯爵が作ったと言われる。

山田:サンドイッチ。ありますね、これ。半分食べるっつってこの部分を普通は食べるじゃないですか。この、片面の(パン)だけをこの人食べたっていう。

おっくん:え、パンだけ?

山田:そしてそれを残して、「あ、俺ダイエット中だった」って言ったっていう今井くんからのクレームが来てまして。

柿内:それで残り食べてってやつですよね。多分ね、前段があって、市ヶ谷のドトールだったんですよ。あ、ドトールじゃないや、銀座ルノアール。

おっくん:どこでもいいですよ。

柿内:いや、重要なんですよ。ルノアールは飯がまずいんですよ。コーヒーもまずいし。

山田:ヤバいな(笑)。

おっくん:談話室ですしね。

柿内:いや、あそこは意図的にやってると僕は思ってるんです。要するにサラリーマンの居心地なんです。40代の人に居心地が一番良い空間を作ってるんで、飯美味くなりすぎてもだめなんですよ。コーヒーが美味くなりすぎてもだめで。

おっくん:あー! 若い子が来ちゃうから。

柿内:そうです。あの人達が、僕も含めてルノアールが心地良い人たちいるじゃないですか。僕も含めて。ルノアール大好きですから。

おっくん:はー、なるほどねー!

柿内:だから、もっと企業努力してご飯を美味しくするってできるんだけど、あえて止めてるんですよ、多分。僕の観点ですよ。間違ってるかもしれないですよ。

そこで(今井くんが)「ご飯食べますか?」って言うから今井くんはサンドイッチ頼んで。僕は減量中っていうか、頼まなかったんですね。でも、来たら美味そうだから、一口ちょうだいって言って片面だけ食べたんだと思いますよ、多分。

おっくん:謎の説得力っていうのがなんか。

柿内:だから「まずい」って言ってたのに食っといてしかも残すっていうのが(今井くんは)納得いかなかったんじゃないすか?

山田:すごいよねー。仕事してて楽しいのわかるでしょ?

おっくん:楽しいっていうか、いま思ったのが、突っ込みやすいんですよ。

山田:ボケ? ボケか。

おっくん:ツッコミに対して、シュールに返すから。「え? 俺普通だけど」みたいな。なんかそれがすごいやりやすいですね。

山田:ポーカーフェイスでおなじみのかっきーだからね。

おっくん:何言っても答えてくれそうな。

山田:ちょっと、無料部分がそろそろなくなってきたんで。

おっくん:ロクな話してないけど(笑)。

山田:いや、絶対おもしろいと思う。出版業界の人は絶対見てほしいと思う。結構見てんじゃないかな。

柿内:いや、見なくていいです(笑)。

山田:本を作るって、ものを作るってなんじゃいって話に全部通じるんで。とにかくマトモじゃないからおもしろいんだよ。