自分に満足している日本の若者が少ない

司会:でははじめに、セルフエスティーム普及協会代表理事の工藤紀子さんにご質問させていただきたいと思います。この「自己肯定感」。耳で聞きますと、ちょっと難しい感じがするのですが、何か定義するとしたらどういうふうなお答えになりますか?

工藤紀子氏(以下、工藤):はい、ありがとうございます。「自己肯定感」とは、「ありのままの自分を受け入れて、その自分を大切に思う感覚」です。そして、自分は自分であって大丈夫。自分は大切な存在なんだという、人が生きていくうえでとても大事な感覚です。

司会:その自己肯定感が、今注目を浴びているというのはどうしてなのでしょうか?

工藤:1つは、日本の子供たちの自己肯定感の低さにあると考えております。様々な調査が行なわれておりますが、2014年「子供・若者白書」というのが発表されました。それは日本を含む、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、そして韓国の、13歳から29歳までの子供たち、若者を対象に行なわれました。

そこではいくつかの質問があったんですけど、代表的な質問としまして「自分に満足していますか?」という質問がありました。それで、日本以外の6カ国のほぼ80パーセント前後が「自分に満足している」と答えました。

司会:高いですね!

工藤:そうなんです。本当にとても高いのですが、皆さんその中で日本は「自分に満足している」と答えた方はどのくらいだと思いますか?

司会:皆さんどのくらいでしょうね?

高橋真麻氏(以下、高橋):半分いかない……?

工藤:すごく近いです。半分に満たない、45.8パーセントの方が「自分に満足している」と答えました。

司会:この数字をどう受け止めたら良いのでしょうか?

工藤:やはり、低いのかなと感じております。

「将来の希望がある」と答えた若者の割合は世界最下位

工藤:それで、あともう1つ代表的な質問としまして、「将来の希望はありますか?」という質問なのですが。

司会:えー本当ですか? それ、怖くないですか?(笑)。

工藤:そうですね(笑)。その中で、アメリカとスウェーデンはダントツで、90パーセント以上が「将来の希望がある」と答えました。

高橋:すごい!

工藤:そして日本以外のあと4カ国ですが、なんと82パーセント以上が「将来の希望がある」。では日本はどのぐらいでしょうか?

高橋:7割ぐらいはいってて欲しいですよね。

司会:希望あってほしいですよね。

工藤:そうですね。なんと62パーセントでした。

高橋:あら~……。

司会:低いですね~……。

工藤:はい。データ結果を見まして、両方とも日本は最下位でした。それで日本はとても平和で、物的にもとても豊かな国なのですが自分に満足ができない、そして将来の希望を持てていない。そして自分の価値を感じられないことから、自己肯定感が低くて、友人との間、他者との関係の中でも、問題を多く抱えている、生きにくさを抱えている子供たちが多いのが現状です。

方法さえ知れば誰でも自己肯定感を高めていける

司会:そうしますと、セルフエスティーム普及協会というのを立ち上げることによってそれを少し改善したいというお気持ちだったのですか?

工藤:そうですね。私は22年前、上手に子育てをしたいと思って勉強をしまして、そこで初めて自己肯定感の重要性に気付きました。ですが、子供に自己肯定感を持たせてあげようと思う前に、母親である私がとても低いことに愕然としました。

そこで20年前、まず自分自身から自己肯定感を高めていきました。それで、はじめは女性がまず幸せになることが社会の幸せに繋がるのではないか、ということで、10年前から女性の自己肯定感を高めるためのワークショップをずっとやってまいりました。

司会:はい。その効果というのはどうですか?

工藤:それはですね、この10年間で15000人を超える女性たちに受けていただいたのですが、私自身が自己肯定感を高めていた方法で皆さんにやっていただきました。

そうしましたら、その方法は本当に再現性があって。ただ、私たちは自己肯定感を高める方法を両親や学校で今までに教わってこなかっただけだったのかなと思えたんですね。ですから、方法さえ知ればいつでも誰でも自己肯定感は高めていけると信じております。

高橋:その方法は後で出てくるんですか?

司会:そうですね。ちょっと出し惜しみします(笑)。

高橋:わかりました(笑)。

容姿のコンプレックスを強みに変えてきた

司会:真麻さん、私も伺いたいのですが、テレビに出ていらっしゃるということもあって、やはり容姿についてすごく気にされていたと思うのですが?

高橋:そうですね。私はフジテレビに入社してすぐに、「フジテレビのアナウンサーなのに可愛くない」とか「鼻が上を向いている」とか見た目についてインターネットや雑誌などで攻撃されて、はじめてのことだったので、ちょっとびっくりしちゃって。ショックを受けましたし。

ですけれども、確かに他のアナウンサーに比べたら見た目が少し特徴的だなとか、だったら私はニュース読みをきちんとやって、その分、見た目で人に劣っている所をカバーしようとか、それから三枚目をやってバラエティーでは体を張って全力でやろうとか、自分のコンプレックスを強みに変えられたと思うんですね。それが一番、今に至る良いことだったのかなと思います。

司会:ご自分でもそうするとで変わったなという感じがするということですか?

高橋:そうでうね。あと周りも、「そういうこと言われて……」とウジウジしている私よりも、だったらそれを逆手にとって「私頑張ります!」と言っているポジティブなほうが、周りもすごく雰囲気が良くて。負の中にいると、負のオーラの人たちしか寄ってこないし、いつもしかめっ面している女の子なんかテレビで使いたくないじゃないですか。

でも、「私それで良いんです!」「頑張ります!」とか言っていると、「じゃあ次はうちの番組来て」とか「真麻、今後はこういうふうに体張って頑張ってみて」といあふうに、プラスになっていきました。

でも、もちろんそんな1日、2日で自分のマインドを変えられたわけではなくて、やっぱり今思うと、何年もかかってそういうふうに思えるようになったという感じです。

司会:チャンスも広がったということですよね。

高橋:そうですね。やっぱりポジティブにしているといろんなチャンスが増えますし、いろいろな活躍の場も増えるんだなというふうに思いました。

日本のガールスカウトの歴史はおよそ100年

司会:わかりました。ガールスカウトの浅野さんにもぜひお話を伺いたいのですが、今、数字も出てきましたが日本ではガールスカウトを通したこういった教育といいますか、女性の皆さんが前向きに活動するというのは結構長くされているのですか?

浅野万里子氏(以下、浅野):はい、ありがとうございます。それはすごく嬉しい質問です。日本で初めてガールスカウトの種がまかれたのは95年前です。

司会:えー! 結構長いですね?

浅野:そうなんですよ。当時女の子がどういう状況だったかということを考えていただくと、女性が中心になって、女の子が力をつけて幸せになっていく世の中にしようという大きな動機があって、そしてそれがずっと時代時代に伝わって今日に至っています。下は5歳から上は100……何歳でしょうか? 上限なしです。

司会:えー! すごい!

浅野:もちろん、男性も入れます。

司会:そうなんですか? 誤解だったかもしれない。

浅野:この中に男性大勢いらっしゃるのでぜひどうぞ(笑)。

司会:そうなんですねー! 上の方も一生入っていられるという感じなんですね?

浅野:そうです。実際、少女を対象としていますのでリーダーになるのは女性です。

司会:なるほど。ダヴとの活動はずっとされているのでしょうか?

浅野:2004年から続けています。そもそもは、先ほどのお話にありますようにガールガイド・ガールスカウト世界連盟とユニリーバが共同してプログラムを開発されて、プロジェクトとしてスタートしました。全世界に146の国と地域でガールガイドあるいはガールスカウトの活動をしているのですが、そのうちに「いくつかの国を選んでやってみませんか?」というお話があって、その中に日本が入っていたんです。それがきっかけです。

司会:そうなんですね。そして「自己肯定感」についてどのようにお考えですか?

浅野:はい。もともと、私たちの言葉として「自己肯定感」という言葉を使い出したのはごく最近です。でも、この100年間近くずっとやってきたことが、実は少女たちの自己肯定感あるいは関わる全ての女性たち、あるいは大人の自己肯定感を高める活動だったんですね。

子供たちが日々行なうことというのは、実はやりたいことやりたくないことや、好きだとか嫌いだとか、あるいはやれる、やれないということではなくて、とにかく挑戦するということを大事にしてきたので、そういう意味でガールスカウトの活動は元から自己肯定感を高める要素が入っていました。

それが、このたび企業との連携という日本のガールスカウトの活動の中に初めてそういうきっかけをいただいて、もう一同大喜びです。

司会:はい。ガールスカウトの活動としても、企業と組んでやるというのは素晴らしいことですよね。

浅野:はい。ありがとうございます。

女子高生の74パーセントが自分の容姿に自信を持っていない

司会:前納さんは自己肯定感の中でも、容姿について着目するのはどうしてなのでしょうか?

前納有紀子氏(以下、前納):1つは、私たちの商品としてスキンケアやヘアケアというものを販売していく中で、やっぱり広告活動にビジュアルを開発したりしているのですが、ダヴはすごくポリシーを持っておりまして、俗にいう「レタッチ」というシワをとったり肌を綺麗に見せたりということは基本的にはやらないという原則になっています。

ですので、先ほどご紹介させていただいたようなビジュアル等も一般の方々にもご出演いただいて、レタッチをしない形で全てのビジュアルを世界で展開しております。

そういった所からも、美しさということに対して規制のイメージに従うというよりは、自分たちらしい美しさをきちんと見ていただきたいというような所から「美しさ」をポイントに、ブランドとして大切にしてきたというのが1つ理由にあります。

その中で、美しさにいくら自信を持った所で雑誌だとかいろんなメディアを通じてコミニュケーションされていくものというのは、ある意味二重だったりとかいろんな意見がそこに規定をされていると。

そういった時に、じゃあ、どういうことをしたら自己肯定感だとか美に対して受け入れられるのかということを考えていく中で、自己肯定感を高めるためのワークショップをブランドとして行なったらどうかという所に行き着いて、こういった活動をグローバルで展開しているという背景になります。

高橋:見た目に対して自己肯定するって結構難しいなと思いました。常に周りに、「可愛いね」とか「綺麗になったね」とか言ってくれる人がいると、自信も持てるし、そういうふうに言ってくれる人がいると思えるから、やっぱり身近に褒めてくれる人がいるというのは大事なんだなと思いました。

前納:そうですね。私も日々思うんですけども、日本の中で褒められることってそんなに無かったりするんですよね。

高橋:ないないない。

前納:なので、私たちが2013年に展開した動画で「リアルビューティー・スケッチ」というものがあるんですけれども、それはFBIの似顔絵描きを専門にしている方が、自分が自分で自分を表現したのを元に描いた似顔絵と、他人が自分を見たコメントを元に似顔絵を描くというような、2つの似顔絵を作って比べるといった社会実験を行ないました。

そこでわかったことは、自分は、結構自分を卑下して常に自分に対してチャレンジをしているのに対し、周りの人たちは実はすごく肯定的に見ていてくれていたと。

なので自分に対して厳しかったのはある意味自分だけなんだというような気付き、それを持つだけでも自己肯定感や美に対して、例えば周りが言ってくれなかったとしても、その現実があるということを知るだけで心が少し軽くなったりするのではないかということで、そういった活動は大切なんじゃないかなと思ってやっています。

司会:比較をするということは、自分の中での比較って言う意味ですよね。セルフエスティーム、自己肯定感というふうな解釈が大事なんじゃないでしょうかね?

高橋:人と比べても意味がないというのを、30歳過ぎてからようやく気付きました。やっぱり10代、20代って学校の中で何番とか、基本人と比べた自分の順位だったりするので、自分の中の自分のものさしでどれだけ自分を認められるか。

それから、前よりも自分は綺麗になったなとか、自分のこと好きになったなって言えるかってすごく難しいですよね。私でも「テレビで見るより綺麗ですね」とか言われるんですけど、なんか嬉しいなって思って、モチベーション上げるようにしています(笑)。

司会:本当ですか(笑)。真麻さんでもそういうふうに思われるということで(笑)。それで、容姿が気になるというお話について、実は会場の皆様にもご紹介したい数字がありまして。

ガールスカウト様が去年、2014年に行なった女子高生対象の調査なのですが、74パーセントの方が自分の容姿に自信を持っていない、と。それから66パーセントが「人は能力より、見た目で判断されている」というふうに思っていると。

高橋:アンケート自体がすごいですね。そうかあ……。

なぜ少女の自己肯定感が低いのか

司会:ちょっとびっくりというな感じなのですが。浅野さん、この衝撃的な数字について、世界と比較してどうなんでしょう?

浅野:実際のところ、世界との比較というところでなかなか数字が見つからなくて、大変苦労はしているんですけれども、今までのいろいろなデータから判断するとおそらく日本はかなり低いと思います。残念ながら。

司会:また、その低さというのは認識されていますか? 各国では。

浅野:日本が低いということですか?

司会:いいえ、自身の国がどのぐらいのポジションなのか。

浅野:国によるのではないでしょうか? どれほどその国がその数字を大事に持っているかという。どちらかというとこの世の中は、はっきり言って大人が動かしていまして、やっぱり子供は保護されるべきものという認識です。

となると、子供がどんな状態であるかという所にあまり関心が持たれていないということが、おそらく現状だと思います。

司会:そうすると、日本でも今まさに啓蒙させていただいて、「日本人の自己肯定感は低いですよ」という所を皆さんに認識していただくということがとても大事になってきますよね。

浅野:とても大事です。ですから、たくさんのお子さんがこのプログラムを経験されていますけれども、同時に大人の方が経験されて、そして自己肯定感があがるということがご自分のお子さんや、お孫さんや姪御さんにとても良い影響があるはずです。

司会:高橋さんこの低さどうですか?

高橋:日本はやっぱり「いえいえそんなことありません」と謙遜したり遠慮する文化があるから、やっぱりそういうふうになりがちなのかもしれないですね。

やはり自己肯定感って難しくて、勝手なイメージですけど、自信を付け過ぎると自信過剰になってしまったり、自信を持ったのに、例えば就職活動で挫折したとか、大学受験で挫折したっていうと、逆に心の傷になってしまうのではないかなと思うので、その育み方も非常に重要ですね。

司会:工藤さんはどうですか? 日本人、特に少女の自己肯定感が低いということに関してどうお考えですか?

工藤:そうですね。少女たちはどうしても自分が置かれている環境の中で、様々な情報を受け取ります。そこで自分の体ですとか、容姿の満足いかない所に目が向いて、そしてどうしても人と比べてしまうという。そこでなかなか自分を受け入れられていないという現象があると思います。

司会:はい。なかなか文化的にも難しい所ですよね。自分でこう、なかなか表現できないですもんね。

高橋:本当に人と比べるのが好きですよね。

司会:そういう意味ではそうかもしれない。