リチウムイオン電池に代わる素材の可能性は……

玉川憲氏(以下、玉川):川原さん、ありがとうございます。電子回路をプリンタで作るといったような、安くモノを作るというところから、物理原則を紐解いて、無線と電源には所詮限界があると。

ただし、いろいろなやり方で空中伝送であったりとか、ソフトウェアネットワークという範囲のネットワーク、そういったところで新しいイノベーションは起きる可能性があると。

そういう意味で、私もベンチャーなので非常に興味深くお伺いしてたんですけども、最近テスラが家庭用のバッテリーを出していて注目を集めてたんですけども、あれも所詮テクノロジー的には、大したことないという感じなんですかね?

川原圭博氏(以下、川原):バッテリーの素子自体は、普通のリチウムイオン電池をパナソニックが作ってるので、ちょっと良いものというぐらいだと思うんですけど、技術面はさておき、車屋の事業展開としての使い方は画期的なんじゃないんですかね。発電所も結局、デマンド調整ができるとトータルとして安くできる、テクノロジーを使って資源を有効利用できる、みたいな観点からも良いんじゃないですかね。

玉川:なるほど、伊佐山さんや林さん、何か今の話で聞いてみたいこととかありましたか?

伊佐山元氏(以下、伊佐山):電池の物理的な限界という話があったんですけど、他方シリコンバレーに行くと、「それは学者がそう言ってるだけであって、こんなのいくらでも誰かがブレイクスルーできる」って言ってくる電池のベンチャーがいっぱいいるわけですよ。まあ、ほとんどダメなんですけどね(笑)。

1つ僕がわからなかったのは、みんなリチウムイオンが一番効率的で、確かに二次電池としてはリチウムイオンが一番研究もあるし、ノウハウがあるので、そこの限界値を上げていくという、改善ですよね。それでさっきのカーブがあると思うんですけど。

まあ、リチウムイオンのリチウムがそもそも世界的にそれだけ使われていて、テスラも大量に作ってると枯渇するんじゃないかという、そういう話もあると思うんですけど。

例えば、そこに違う物質やアプローチ、それこそ今日本だと流行りなのは水素電池とか、いろいろありますけど、他の素材なり他のアプローチによってエネルギーを生むような研究をされたりはしてないんでしょうか?

川原:私は材料の研究者じゃないので、本当のところはよくわからないというのが正しい、謙虚な回答なんですけれども(笑)。新素材が出てからちゃんと製品になるまでって、そのサイクルもインターネット業界か、それ以外で非常に違うんですよね。

インターネット業界は本当に、iOSが出たら次の週にはアプリが100個アップデートされてるみたいな世界ですけど、材料は安全性の問題もあって、リチウムイオンですら結構テストされて、これで大丈夫だと思ってても、車や飛行機、家に使うと不具合があったときに燃えてしまいます。ですので、材料の取り扱いは非常に慎重にならざるを得ないのかなとは思いますね。

メディアで蔓延する「AI脅威論」を考える

玉川:ありがとうございます。ここにいるみなさん、経営者の方、ベンチャー企業を経営されてる方、それから投資家の方が多いと思うんですけれども。

今ざっと投資家視点、ジャーナリスト視点、それから研究者視点で見てきたんですけれども、IoT時代に向けて共通して考えていかなければいけないこと、社会的なことってあるのかなと思いまして。

特に伊佐山さんのおっしゃったセキュリティの面とか、林さんのお話であったトイレのプライバシー面とか、そういったところも出てきているので、今のうちから長期的に「こういったところはみんなで考えていかなければいけないよね」というところは、あるような気がしたんですけれども。伊佐山さん、どうですかね?

伊佐山:IoTの進化として、その次のステージは何かって考えると「デバイスと個人」の関係から「デバイスと空間」「デバイスと都市」とか、そういう関係がつながり始めると。

先生(川原さん)のプレゼンにあったように、今は人が操作してますけど、機械同士が通信し始めて、勝手にいろんなことをやらかすわけじゃないですか。そうすると、これどうなっちゃうんだろうなって、最近流行りのAI脅威論じゃないですけど、AIが普及するととんでもないことになるみたいな。

でも最近、僕も行き帰りの飛行機で(映像作品を)観るんですけど、AIのロボットがすごく優しそうに見えていて、最後は人間が殺されちゃうとかですね(笑)。脅威論がすごく蔓延してるような気がするんですよ。

そういう意味では、セキュリティやプライバシーの問題は確かに考えなきゃいけない課題なんですけども、それを過度に敵視しちゃうっていうのは、それはそれで果たしていいんだろうかと。

逆に、パソコンが流行ったときにも同じ議論がシリコンバレーでもありましたけど、結局使い手の教育というのがあまり議論されてなくて、技術を良くしようとかバッテリーの寿命を長くしようという議論はやたらみんなするくせに、iPhoneを使う子供たちに対して、きちんとした使い方はあまり考えていない。

そもそもどういうふうに使えると健全に使えるのか、そこらへんの教育は親頼みだったり、結構ちゃらんぽらんなんですよね。コントロールネットワークというか、ネットワークが進んだ時代になったときには、最終的にはユーザーが人間だけでなく機械同士にもなってしまうので。

それを設計する側の人のセキュリティの概念だったりとか、自分を守るためのセキュリティの概念だったり、それを利用する者としての倫理の問題だったり、道徳の問題みたいなところを真面目に議論しないと、危うい社会が待ってるのかなっていう危機感はあります。

もう1つは、機械同士が勝手にいろんな効率的なことをやると、最近いろんな雑誌に出てますけど、いろんな職業が奪われていくと思うんですよ。そうするとみんな「IoTけしからん」とか言って、逆に反対運動が始まるかと。

シンギュラリティって言われてるように、コンピュータが人間の知能を超えそうな時代が来てるときに、昔で言うラッダイト運動じゃないですけど、人工知能・IoT破壊運動みたいなのが始まらないようにするためには、そういう意味での教育も大事です。

そんなふうに仕事がなくなったときに、それを認めた上で自由になった時間で何をすべきかというのを今度考え始めないと。常に敵視する関係ができてしまって、「IoT脅威論」をメディアがますますおもしろおかしく取り上げることになって、生産的じゃない気がするんですね。

今日出たスライドで言うと、水の問題ってリアルにあると思うんですよ。そういう問題を解決するところにエネルギーをみんなが使えばいいと思うんですよね。だからそういう意味では、IoTですごく効率的になって便利になって、仕事が失われる人も出てくるはと思うんですけども。

その時間で今解決されていない問題を解決するという起業家がどんどん出てくれば、結果的には良い形で、我々の生活をますます良くするんじゃないかなっていう気はしています。

玉川:なるほど。ありがとうございます。インターネットが出てきたときのリテラシーみたいなことと同じことが、IoTでもリテラシーとして理解していかなきゃいけないだろうっていう視点と、IoTが出て省力化・自動化によってみんなの仕事がなくなることを怖れるんじゃなくて、新しい課題を解けるっていう方向に持っていかなければいけないっていう、非常に大切な視点だなと思いました。林さん、何かありますか?

テクノロジーファーストの考えから生まれる歪み

林信行氏(以下、林):安心・安全、セキュリティ、プライバシーとか、そこらへんがキーですよね。ドローンもそうだし車もそうだけど、制御系も全部コントローラブルにしちゃうと、ハックされちゃったときにどうするだとかすごく怖い問題がある。

ドローンも小型のドローンが全部ネットにつながってコントロールできて、それが万が一ハックされちゃったら、一気にドローンが襲ってくるとかって怖い事態にもなりかねないし。

それをどういうふうに規制していくのかというと、規制の方法がない。そもそもドローンも、いくらでもレシピがネットに上がってるので、誰でも作れちゃいます。そこを議論するべきだと思いつつも、議論すればそれで解決するのかというところも、ちょっと不安があって……。

インターネットが商用化された90年代の中頃も、Webページは確かに便利だけれども、「Webページには必ず表示期限が必要だ」とか言ってる人も当時いたんですよね。今、死骸のように残ってるWebページがいくらでもあったりするじゃないですか。

みんな「こういうふうにすべきだ」ということを言っていて、議論されても結局それが実現されないものも多くて、どうしたらインターネットやパソコンの「負の間違い」みたいなものを繰り返さずに、こういったところを考えていけるのかなっていうのはいつも僕も考えています。

ちょっと理想論とか精神論に入っていっちゃうのかもしれないけど、やっぱりどういう世界を作っていきたいのかとか、そういった教育がこれからどんどん必要になっていく気がする。

テクノロジーファーストで考えちゃうとやっぱり歪んだものになって、「今度こんなテクノロジーが出てきたから、こんなことができちゃったよ」というふうにみんな突っ走って作ると、どんどん歪んだものができちゃう。

そうじゃなくて、水の問題の解決にしてもそうだし、そもそもパソコンやインターネットが普及してきてみんな幸せになったかといったら、残業が延びたりとか、どんどん効率化をやって窮屈な形になっている。

そうじゃなくて、フランス語で「BIEN- ÊTRE(ビヤン・エトル)」という言葉があるけれども、経済的に豊かなだけじゃなくて、生きていて充足感のある暮らしができるということをやらないと、人間って進化していないような気がします。

インターネットが出てきても全然「ビヤン・エトル」は良くなっていない気がする。そういったところを、教育も含めて本当に考え直さなきゃいけないフェーズに入ってきてるかなと思う。シンギュラリティの問題もあるし。

玉川:そうですよね。精神の豊かさをきちんともたらすものであるという前提のもとに、使い方をきちんと理解しなきゃいけないし、それをやっていく上でドローンは便利なんだよという合意がないと、規制の方向に走っちゃって、規制に走ると結局イノベーションが生まれないみたいな、悪のスパイラルに入る。

今の日本ではちょうどドローンが盛り上がってるんで(笑)。我々なんか、きちっと良い方向に持っていくようにしなければいけないんだなと思いますけど。

大企業の開発力や資金を生かしたプロダクト作り

川原さんにもお伺いしたいんですけど、時間もそろそろ(残り)10分くらいになってきたので、会場からご質問を受けたいと思いますけれども……。

質問者1:おもしろいお話ありがとうございます。米国とかがカンブリア的に、特にBtoC系のプロダクトが出てきていて、最近だと中国も急速に、特にホームセキュリティ系がガンガン出てきている中で、日本のBtoCのプロダクトのスタートアップは、出てくるスピードがちょっと遅いんじゃないかなと思っています。

世界一のハードウェアカントリーにも関わらずこの状況って、すごくぎくしゃくした違和感を感じていて、どういったところがこの歩みが遅くなっている課題なのかなというところと、誰が何をしたら日本からプロダクトのスタートアップがもっともっと出てくるような環境に変わっていくのか、みたいなところをみなさんに何かご意見があれば教えていただけたらなと思います。

玉川:ありがとうございます。日本でプロダクトが出てこない課題と、どうしたらいいのかというところなんですけど、伊佐山さんからお願いします。

伊佐山:そうですね、WiLは一部その問題を解決しようとしてるんですけども、メーカーはハードウェアをずっと作ってきたわけですから、ハードウェアのライフサイクルというのはすごく入念な設計と時間をかけて、量産まで持っていくのに非常に時間のかかるプロセスがあると。

IoTのベンチャーのやり方はソフトウェアに近くて、どんどん出していってどんどん改善していくというノリでやらなきゃいけない。企業文化がまるで違うというところが僕は決定的な1つの歪みだと思ってるんですね。

つまり、大企業に、本当はソニーとかメーカーが頑張ってバンバンIoTの商品を出してやってほしいんですけども、彼らが培った社内の意思決定のプロセスだったり、モノを作る・サービスを作るというプロセスが、時代のスピードとまったく合ってない。それをいきなり「変えた」と言って、社員がみんな変わるかというと、そんな簡単な話じゃない。

私自身も大企業のサラリーマンをやったことがあるので、経営者が「IoTの時代で、何か新しい事をやるぞ」と言ったところでなかなか簡単にはいかない。日本がせっかくハードを作る力があるのに出せる環境にならないというのは、ここにいる人たちも非常にフラストレーションがたまる状況だなとは個人的には思ってます。

裏を返せば、大企業側は我々がまさにソニーさんとも今やってますし、他の会社ともやってるんですが、彼らはやっぱりサービス側、ネットにつながった後にどういうサービスにするか、どういう付加価値を作るか、ここはもうお手上げ。非常に苦手であることは事実です。

そこはたぶん、会場に来ているみなさんが一番得意としている分野なので、ハードも自分で全部作ってやるんじゃなくて、大企業はもっともっと積極的にアプローチして、利用すればいいと僕は思うんですよ。

これは「餅は餅屋」で、強い所をお互い補完しあってやればいいと思っていて、日本って大企業も自前主義ですけど、結構ベンチャーも自前主義かなと思っていて(笑)。自分で全部やりたがると。

WiLという会社はその間に入って、うまく大企業の資産、リソースを使っちゃえとか、そういう意味ではMakuakeさんみたいにクラウドファンディングのインフラを持ってる人は、今はベンチャーの人がどんどんクライアントとしてやってると思うんですけど、

本質的にMakuakeみたいなサイトがブレイクするのは、もしかしたら大企業が簡単にマーケティングの実験ができるとか、従来のプロセスに乗っけないで新しい商品をデビューさせることができるようなプラットフォームに進化させるほうが、僕は日本にとってはハッピーなんじゃないかなっていう気がするんで、そこらへんをぜひ頑張っていただきたいと思います。

質問者:ありがとうございます。

玉川:大企業って、製造するときの設備とかは持ってるんだけど、アジャイル的なやり方をしたときのリスクを取りたくないという(笑)。その間をクラウドファンディングであったり、WiLさんであったり、新しい仕組みができてくれば非常にいいんじゃないかなと思いました。他に何かご質問、どうでしょうか。

実用を意識した研究しかやらない

質問者:今日は素晴らしいメンバーで、大変感動しました。せっかく川原さんがいらっしゃるので……僕はものすごく基礎研究が大事だと思っていて、川原先生のような人がどうやったらもっといっぱい出るのかと。

基礎研究をやっている人って、結構入り込んじゃうじゃないですか。そうじゃなくて、世の中をわかっていて、かつビジネスもわかった上で、「こういうテクノロジーはこういうふうにあるべきだ」とか、あるいは「そういうところにイノベーティブな発想を持っていくんだ」という学生であったりとか。

あるいはもっと若い、高校生とか中学生かもしれませんけど、そういうところが活性化するにはどういうことをされたらいいとお考えですか? ぜひ、アドバイスをいただけたらと思います。

川原:ありがとうございます。たぶん僕は、大学の中では一番異端というか、色物扱いされていて(笑)。研究じゃなくて、半分ビジネスマンだと思われてるほうじゃないかなと思います。自分では半々かなとは思ってるんですけれども。そういう意味で、僕は基礎研究ではないとは思っていて、応用研究なんです。

研究の中でもいろいろスペクトルがあって、実用を意識したことしかやらないと自分の中で決めてやってやってるんですね。5年後、10年後に実用化するところを目指しています。

本当の基礎研究って「何に使えるかわかんないけど、宇宙の真理がわかります」みたいなのが多くて、そこを増やすのがいいのかはちょっとよくわからない部分はあります。

応用研究に関していうと、僕が見てもすごく羨ましい技術を持ってる先生がいっぱいいるんですよね。「今すぐ商売になりますよ!」とか言っても「そうかなあ?」みたいな感じで(笑)。

本人があまりピンときておられなかったりするっていうこともあるので、もうちょっと大学の応用研究をしてる研究者と、ベンチャーのIVSみたいな場所で一緒にお見合いをするようなところがあってもいいのかなとは思いますね。

玉川:ありがとうございます。時間も限られていますので、最後ひとつ、ご質問ありますか?

IoTベンチャーの経営者に求められる資質

質問者:今日はありがとうございました。IVS史上最もアカデミックなセッションだったんじゃないかと思いますけど、IoTベンチャーをやるときに、経営者がすごく大事だと思うんですけど、どういう人がこういう分野の経営者に向いてるかっていうのは結構難しいというか……。

伊佐山さんのところのキュリオも、西條さんが畑違いだけど経営者をやっていて、cerevoも岩佐さんみたいなバックグラウンドの人がいて、どういう人がいいのかというのが(わからない)。

その人は経営もわからなきゃいけないし、さっきも言っていたようにベンチャーっぽい意思決定もできなきゃいけないし、一方で本当に骨太な、技術的な知識というのが必要になると思うんですけど。

これからこういうネット系とは違うような、IoTベンチャーの経営者になるにはどういうものを求められるのか? どういう人が出てくるといいのか? みたいなことを、どなたでもいいんですけど、ご意見を伺えればなと思いました。

玉川:じゃあ、林さんにお願いしていいですか。

:僕ですか(笑)。伊佐山さんのほうがいいと思うんですけど……1つだけ。さっきのご質問にもあった足りないなと思うのが、ハードだとハードだけになっちゃいがちで、ソフトウェアとのバランスが悪い気がするんですよね。そこのバランス感覚は必要だということで。後はもう伊佐山さんに(笑)。

玉川:ありがとうございます。

伊佐山:身内びいきになっちゃうんですけど、西條さんみたいな人がいいかなと思うのは、まず1つは世界観がないといけないと思うんですよ。これを作って儲かるっていう短期的な目線でやると、IoTは最終的にはインフラも巻き込まなきゃいけない話なんで、一つひとつのピースとしておもしろいものを作ってるだけでは、僕はあまり大きいビジネスにはならないと思っていて。

我々はあるテーマがあって、それを一つひとつ商品化に落として今やっているというのが実態なんですね。

そういう意味で言うと、大きなビジョンがちゃんと描けた上で、ビジョンだけだと今度はビジネスにならないんで、どうやって足元を稼ぎながらそのビジョンに向かうかっていうような、「目の前のものだけやる」ではなくて、全体を見た上ででビジネスモデルを描ける人というのが、僕は一番大事だと思います。

海外に住んでいるので、日本がすごくいいなと思うのは、今の円安でエンジニアの人件費が安いですよね。アメリカの今の給与は日本の倍みたいなわけですから、円換算するととてもじゃないですけど、アメリカのシリコンバレーのエンジニアがどんなにすごいと言っても、日本で3人、4人雇えるんだったらそれはないだろっていう、そういうのもあるんで。

そういう意味ではチャンスもあるし、ハードウェアに関しては、中国製も出てきてはいるんですけど、何が起きるかっていうと、ハードウェアに対してのエモーショナルなワクワク感・ドキドキ感がないと買わないと思うんですよ。

そうすると質感とかデザインの良さ、最終的にはハードは機能するんだけど、その先にある価値っていうのが質感だったりデザインだったりするので、ここは日本が得意じゃないですか。

それがあったう上で、おもしろいサービスを誰かがちゃんと、だからこの会場にいる人はみんなIoTのベンチャーのCEOに考慮されてると思うんですけども。サービスで稼ぐっていう、今まで日本が弱いと言われていたところをうまく組み合わせることができれば、すごくいいベンチャーが出てくるポテンシャルはまだまだあると思うんですけれども。

そのハードの世界とネットの世界の人たちが向き合ってないし、お互い利用しようっていうマインドになってない。異業種交流は増えたんだけれども、本気でお互いの強いところを利用しようっていうところまでやってる会社はまだ少ないかなっていう気はするんで、そういった異業種の提携とかが増えたら僕はおもしろいかなと思います。

日本がIoTのビジネスチャンスを生かすには

玉川:ありがとうございます。では時間になりましたので、最後にひと言ずつ会場にメッセージをお願いします。川原さんからお願いします。

川原:日本の研究、企業も結構おもしろい材料とか機械とかを持ってます。そういうのがもうちょっと世の中に出るといいなと思ってますので、もしIoTのことで興味があれば、お見合いの仲介者になりますのでお声がけください(笑)。

玉川:ありがとうございます。

:日本はハードもすごいものを作れる人たちがたくさんいるし、ソフトウェアもそうだし、デザインも圧倒的に世界に誇れるようなデザイナーがいるんだけれども、横の連携がすごく悪くて、大企業とベンチャーとかも組めばどんどん良い関係ができると思います。

土壌はすごく整い始めていて、(会場に)亀山(敬司)さんが座っていらっしゃるけど、DMM.make AKIBAに行くと「こんなアイディアのIoTやるんだ」っていうのがすごくいっぱいあって、僕そこに一度、ダイソンの社長を連れていったら同じ時間に日本のアップルの重役も来てたりとか、すごい人たちが来ていてビックリしました。

でも、同じDMM.make AKIBAに入ってるベンチャー同士は、一切隣のことを知らない。秘密にしないで、オープンスペースでやってることに関しても知らないような状態。でもくっついてお互いに学びあったりすればすごくいいと思うんだけれど、やっぱりみんなこもっちゃいますよね。そこをうまく解くことができる経営者がいたら、もしかしたらいいのかなって思いますね。

玉川:ありがとうございます。伊佐山さん最後、お願いします。

伊佐山:今日はいろいろ話をしたんですけど、個人的にIoTのベンチャーをトライする人、日本で今いっぱい出てくるベンチャーにも言えることかもしれないんですけども、やっぱりこれからは日本国内をスタートにするっていう目線はやめたほうがいいかなと思っています。

アメリカから日本に逆輸入するっていうのは意外とできると思うんですけれども、海外の市場を見ていかないと、スケールするビジネスがますます描きにくい時代になっているんじゃないかなと。

でも相変わらず日本は、ベンチャーは「やっぱりまず国内、言葉の壁もあるし、国内まだ十分リッチだし」っていうことで、どうしても国内から始めちゃうんですけども、それを続けてる限りはジリ貧なわけですから、なかなか大きいベンチャーは出てこないし、いいロールモデルになりえないと思うんですよ。

だからIoTみたいな分野は、日本のデザイン・クオリティは高いっていうイメージがまだ海外にあるうちに、海外をベースに海外のマーケットに最初に出すようなベンチャーがどんどん出てこないと。

いずれまったく相手にされなくなっちゃうと、そこから出てくるのはしんどいので、せっかくこういうチャンスがある中では、ベンチャーの経営の仕方ももうちょっと視点を変えてやってほしいなとは感じてます。

玉川:ありがとうございます。IoTの非常に大きなビジネスチャンスと、現実的な課題っていうのもたくさんお伺いできた、非常に意義のあるセッションだったと思います。改めて、パネリストのみなさまに盛大な拍手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)