iction!プロジェクトのステートメントに込めた想い

小安美和氏:みなさん、こんばんは。10分ほど、お時間をいただきましてリクルートホールディングスのiction!(イクション)プロジェクトについてご紹介したいと思います。

iction!プロジェクトのことを聞いたことがある方、どのくらいいらっしゃいますか?

iction!というプロジェクトは、「育児」と「アクション」という言葉を組み合わせた造語で、このロゴは、赤ちゃんの手を表しています。

一歩踏み出したいお母さんの背中をそっと押すような意味合いを込めています。

「さあ、育児も仕事もしやすい世界へ。」をキャッチコピーに置き、プロジェクトの活動を今年(2015年)の7月に立ち上げています。私は、実はこのステートメントを読みながらグッときてしまうこともあります。ぜひ、噛み締めて読んでいただければと思います。

「子どもを育てる。仕事をする。このあたりまえで大切な営みが、なぜこんなに、むずかしいんだろう? そう感じるあなたへ。そして、そのまわりにいるすべてのひとへ。もっと生きやすい世界を、一緒につくろうじゃありませんか。自分らしく育児をして、仕事をするために。さあ、みんなでアクションを。『はたらく育児』がしあわせになることから、世界は変わると、私たちは信じているから。」

これが、iction!プロジェクトが目指す世界観です。iction!プロジェクトのステートメント、それから手のマークも、実際に育児をしながら働いていらっしゃるデザイナー、コピーライターの方に作っていただいたものです。

実は、私自身は子供がいませんし、育児もしておりませんが、このステートメントを読み感動しました。こんな世界を皆さんと一緒に作れたらなと本気で思っています。

10年後の日本社会のおける「働く」とは

皆さん、10年後の日本を想像したことはありますか? 少子高齢化ということで人口が減り、働く人も減り、そして働く人の構成も、いま見ている景色とは大きく違う姿になります。

いまよりも40代以上の方が増えて、若い人が減っている状態になります。その中で、私たちリクルートグループがどのような世界観で人材サービスを展開していくのか、というようなことを議論するところからこのプロジェクトが始まりました。

10年後、20年後を見据えて、私たちはどんな働き方をしていきたいのか考えた時に、「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る。」というゴールを置きましたが、これは実は、私たちが目指したい世界のファーストステップです。

本当は、育児をしている人、それから今後で言うと介護をしている人、多くの方が時間や場所の制約を持ちながら働く世界が日本にやってきますので、その中でさまざまな制約を乗り越えて、多様な人が活躍できる世界を作りたいというのが最終的に目指すゴールです。

「今一番その制約があり、意欲があるのに働けていない人たちは誰なのだろうか?」ということを考えた時に、実は日本には働く意欲がある、働きたいけど働けていないお母さんたちが、170万人いることに注目しました。

私たちはこの170万人のみなさんが、意欲があるのであれば、働ける状態をなんとかサポートしたいと思っています。

働くお母さんに関する3つの課題

「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る。」ということで、私たちは今年の頭に、働くお母さんに関する調査を実施しました。その調査から3つ課題を抽出しています。

1つ目は、妊娠・出産で辞める方が日本では6割いらっしゃるという事実。第一子出産後にお仕事を辞めた方にアンケートをしましたところ、「辞めたことを後悔していますか?」という質問に対して「後悔している」という方が4割いらっしゃる。「6割は後悔していないじゃないか!」という声もあります。

けれども、「今、(あの時)辞めてなければ良かった」という思いを持っている方が4割いるのであれば、私たちは「それは、なぜそう思うのか?」「なぜ、辞めなければいけなかったのか?」という原因をしっかりと可視化して、課題の解決をしていきたいと思っています。

2つ目、「辞めずに仕事を続けている」あるいは「1回辞めたけれども、もう1回仕事をしている」という方々が、この会場には多くいらっしゃると思います。その方々にアンケートを取りました。すると「育児と仕事の両立がストレスだ」と答える方が8割。

8割の方がストレスを抱えながら育児と仕事をしている世界を、もはや当たり前だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「本当にそれが当たり前なのだろうか?」ということを考えて、このことを解決していきたいと思っています。

そして3つ目、「辞めてしまった後、もう一度働きたい」と思った時に働けない方が170万人います。その方々へ「なぜ、働きたいのに働いていないのですか?」と聞いた時、「条件に合う仕事がない」というお答えがとても多いです。

お子様を育てている時「16時までしか働けない」「お迎えに行く」など、いろいろな制約条件があると思います。今の日本はそれらの条件を満たす仕事が少ないという現実がありますので、そのことを解決していきたいと思っています。

「はたらく育児」を当たり前にするためのサービスを

具体的に、どのようなことをやっているのかについてですが、私たち、いろいろな求人メディアや人材派遣のサービスを持っております。その中で、企業の皆様と共に、「短時間の仕事を一緒に作っていきましょう!」ということを呼びかけています。

そして、企業の皆様と共に「短時間でOK!」「16時まででOK!」と言ったお仕事をたくさん作っていきたいと思っています。

その他に、家事支援サービス「casial(カジアル)」というサービスを、今フィジビリティ(実現可能かの検証段階)で展開しています。

また、ブランクが空いてしまい不安でエントリーできない、あるいはエントリーをしたけれど怖くて面接に行けないという方が実は結構いらっしゃいます。

3カ月、4カ月のブランクでも怖くて外に出られなかったり、仕事を始めることがすごく怖くなったりします。

育児ではどうしても年単位でブランクが空いてしまいます。その後で働き始めたいという時に「ママが働くってどういうこと?」といった話をリアルな場で開催したり、来週からは子育てしながら働くことをテーマにしたオンライン講座を、リクルートジョブズとスクー様と一緒に提供したりしていきます。

日々の暮らしにおけるストレスの実態調査

そして、さきほどのパネルディスカッションをお聞きして、ぜひ皆様にご紹介したかったのですが、「働くマザーのストレス調査」というものを、リクルートワークス研究所が実施いたしました。

これをパッと見て、右と左で何が違うかわかりますか? 「働くマザーとファーザーの日頃のストレスはなんですか?」という質問です。上から「日頃、このストレスを感じたことがある」というもののランキングになっています。

左側は働くお母さんの回答。白がプライベートのストレスでグレーが仕事のストレスです。お母さんの答えは「真っ白」です。

お母さんは1位から15位までプライベートのストレスがとても多く、たとえば、「日々の掃除や片付け」を75パーセントの方がストレスと感じてらっしゃる。

「自分の加齢、体力の減退」が2番目ですね。パネルディスカッションで「白髪(が気になる)」という話があったと思いますが、恐らくここに該当すると思います(笑)。

「自分の加齢、体力の減退」は、働くお父さんのナンバー1になっていますが、お父さんの方はどちらかと言うと、4位「目標達成のプレッシャー」、5位「自分にあっていない仕事内容」といったことによりストレスを感じる方が多くて、プライベートのところで言いますと、1位から3位まで自分についてのものが並び、6位にようやく「日々の掃除や片付け」という項目が出て参ります。

さきほどの皆様のお話を聞いていますと、やっぱり家庭内でもプロジェクトジェクトマネージメント、チームとしてのビジョンを掲げて役割分担ができているのかがキーポイントなのかなと思いました。

男性陣は仕事にかける時間が長くなっているので、結果として仕事のストレスを抱えてらっしゃって、いろんなことが気になっています。一方、家事育児の時間は女性の方が長いというデータもあり、お母さんの方が家事育児に関わるストレスが多いという結果となっています。

私たちは、仕事と両立がストレスだと答える方が8割いらっしゃいますが、このような調査を通じて、この方々のストレスが何で、どういう時にどういう方がそのストレスを強く感じて、そしてそれを解決していくにはどんな取り組み・サービスが必要なのかというようなことをこれから、共に、考えていきたいと思っております。

一緒に新しい世界観を作っていきたい

私たちは「はたらく育児」という言葉を創りました。働くと育児が当たり前の世界を創っていきたいと思っております。はたらく育児がもっと便利に、もっと楽しくなれば、お父さんもお母さんもイキイキと、そしてお子様もイキイキと暮らしていけますし、日々が本当に楽しくなる。それを見ている後輩たちが、「こういう世界を一緒に創りたい」と思えることが、本当に作っていきたいと思う世界観です。

ただ、私たちリクルートグループは、新しいサービス、事業を創っていくということが好きな会社ではありますが、当然ながら、私たちだけでは、「はたらく育児」の課題を解決できないと考えております。

今、リクルートのベンチャーズという新規事業開発のプラットフォームで、「家事育児、はたらく育児の課題を解決する事業起案をしてください」という取り組みをしています。なんと200人の従業員が参加して、70件の新規事業がエントリーされ、いま10件弱のチームが事業化に向けてブラッシュアップをしている状況です。

ここでお伺いした皆さんの声も含めて、仕事と育児、はたらく育児が当たり前になる。そして、それがストレスでない世界を創っていきたいと思っております。

最後になりますが、「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る。」ということに、皆さんと共に、取り組んで参りたいと思っています。

今後も皆さんと一緒にこの世界観を目指していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。