市長任期中の未解決問題

司会:それでは橋下市長の退任会見を始めさせていただきます。市長よろしくお願いします。

橋下徹氏(以下、橋下):はい、退任会見なんですがちょっと2、3メディアに対して文句を言いたいところもあるので言わせてもらいます。

まず、中労委(中央労働委員会)命令の受け入れに関して、ちょっと報道内容について不満があります。

組合の事務所の退去に関する問題なんですけれども、あれは平成24年度分については僕の判断がちょっと拙速すぎたということで、不当労働行為の認定を受けて、司法でも違法判定を受けましたが、25年度以降は、条例に基づいてきちっと退去をお願いしたといいますか、退去使用許可をしなかったというところは、司法判断でもこれは適法だと。

25年、26年は適法だということが司法判断でも認められているところであり、もちろんこれは組合側が最高裁で争っていますが、中労委のほうも25年、26年は、不当労働行為と認定していませんので、これはきちっと不当労働行為として認定された年度をはっきり明示してもらいたいと思ってます。これはきちっとみなさんに文書を送付しました。

そして、労使関係についてなんですが、アンケート調査における損害賠償請求訴訟については、これは上告しないということは決定しました。

これは損害賠償請求、きちっと受け入れるということにしましたので、基本的には僕の任期中に認めるものはすべて認めて……確か先日も議会で案件を出していますが、国歌の斉唱条例ですね。あれに関しての中労委の審査についての和解を受け入れましたので、認めるものはすべて認めたのかなと思っています。

継続しているのが、組合のほうがまだ上告している事務所の明け渡しの問題と、あとこちらが勝ったやつですけども、相手側がまだ上訴してる入れ墨調査でしたっけ? いくつか残っているものもありますが、基本的にはほぼ解決しているのかなと思っております。

問題はメディアの検証能力のなさ

それから、「なにわの芸術応援募金」についても、文化についていろいろメディアが検証してもらっていることはありがたいことなんですが、一点どうしても言いたいこと、文化を守るというのはこれは当たり前のことで、そんなん百も承知です。

僕の問題提起は、じゃあ守るべき文化というのは誰が決めるんだと。非常にプロセスが曖昧で、一体これは誰が決めてんだというところが不明確。そして、そういう状況でありながら、文化予算と称して年間億単位のお金が毎年特定のところにだけ流れていると。

これは読売新聞の検証かな。どこの検証でもそうですけども、文化予算が減った減ったというんですけども、なんでメディアはみんな、普段予算の話になったら「中身が重要だ」ということを言うのに、文化予算になったら額ばっかり言うのかさっぱりわからないですね。

文化予算が減ったということで、僕が文化を軽視しているような検証の仕方になってますけど、普段は国の予算についてだって、自治体の予算についてだって、額じゃなくて中身じゃないかってことをみんな普段言ってるのに、なんで文化予算で中身を検証しないのかが、さっぱりわかりません。

今までの文化行政の問題点は、「文化を守れ」なんて、こんなん誰でも言えるんです。いい恰好するコメンテーターなんて……こんなん当たり前のことなんですけどね。「文化を守れ」って。

じゃあ守るべき文化は何で、そこにいくらのお金を出すべきなのか、そしてそのプロセスはどうなのかというところが僕が一番問題意識を持っておりまして。

そういう意味で今回のアーツカウンシルというところでしっかり評価してもらう、チャンスはみんな平等に。別に文化について、専門家なんて大阪府庁にも大阪市役所にもいないわけですよ。文化担当の職員なんてのも前職見たら通常の行政職をやっているわけです。

それが急に文化(担当)にきて、これが守るべき文化で、これぐらいの予算をつけていきましょうなんて判断できるわけがないんで。そういう意味で、専門のアーツカウンシルというものを設けて、やっぱりこれは税で守っていくことを中心にするんではなくて、寄付で守っていくというのが本来の文化を守っていくあり方です。これはもう世界の潮流です。

ただ、寄付といっても余裕のあるお金持ちからの寄付ではなくて、僕が今回挑戦したのは、役所に税金を払うくらいだったら文化のほうにお金を回したいという国民のみなさんがたくさんいらっしゃると思うので、余ったお金、余裕のあるお金から寄付をしてくださいというのではなくて、税金を払うか、文化に寄付をするかという選択ができるという新しい制度をつくったのが「なにわの芸術応援募金制度」であります。

この、どういう文化を守っていくのか、いくらのお金をつけていくのか。それを第三者的、専門的に評価する機関をつくって、そして行政職員が守るべき文化や額を決めるんじゃなくて、文化を支えていく主体は国民自体なわけですから、そういう人たちにお金の面で支えてもらう。

それは余裕のある国民のみなさんだけじゃなくて、役所に無駄遣いされるくらいだったら、文化のほうにお金を回したいという人に寄付に応じてもらうという、制度をつくったのが「なにわの芸術応援募金制度」でありまして、そういうことについてメディアはちょっと検証が足りないなと思います。

文化行政については額ばっかりが問題になって、その予算の中身についてはどこもしっかりと検証してきていない。ワッハ上方(大阪府立上方園芸資料館)なんていうところに毎年4億円も5億円も使っていたことを検証している報道がいっさいなかったんで、もう今はワッハ上方なくなりましたからね。

あんだけ大騒ぎして、年間4億も5億も使っていたことに関して、それがいいのかどうなのか。それだったら他の文化のほうに回せばいいのに、誰もそういうことをしっかり検証していないということは、メディアの検証能力のなさだなと僕は思っています。

慰安婦問題をめぐる日本の主張

それから、サンフランシスコ市長宛の公開書簡送付についても、これも僕の府政・市政について検証をしてもらっているのはありがたいんですが、慰安婦発言についても、まあ毎日新聞も読売新聞もそうかな。「この発言で維新の会は失速した」とか言ってますけど、はっきり言いますけど、あの発言があったから、朝日新聞が誤報の取り消しをやったんですからね。

誰もそこまで本気になって問題提起したり、何が問題点なのかということを言わずに、ちょろちょろといろんなところで小さく主張していたやつを、ああいう形で問題提起して、河野談話も問題じゃないかってことも言い出して、産経新聞はその直後ちょっと腰が引けたところもありましたけど、そのあと本当に頑張ってくれて、最後、朝日新聞の(朝鮮半島で女性を強制連行したと偽証した)「吉田証言」の取り消しにいたったということになります。

僕が何を問題視しているかというと、僕の発言をああいうふうに書いてもらってもいいんですけど、河野談話の話なんか何も書いていないし、ぜひ日本国民のみなさんにも知ってもらいたいのは、サンフランシスコは大阪市との姉妹都市ですけど、そこの教育委員会のほうがこんな決議をやっています。

女性の人権の問題を子供達に学ばせるのに、日本の慰安婦問題だけを取り上げて、それを教材にして、サンフランシスコはこれから教育をやっていくって言うんですよ。本当にこんなことでいいんですかってことですよ。

僕は慰安婦問題を正当化はしませんけど、しっかりと日本だけではなく、世界各国が必要としていたってことを、アメリカに対してだって言っていかないと、日本だけの問題として矮小化されて、サンフランシスコで旧日本軍の行為だけを取り上げて、教育がはじまっていくと。本当に残念だなと思いますね。

これは人権問題として、世界各国で考えていかなきゃいけないし、今の価値観で正当化なんて絶対できないし、そこで苦痛を味わった女性たちに対して思いをはせて、二度とこういうことがないように、政治でもメディアでもそうですけど、国民自体がそういう思いを決意していかなきゃいけないと。これは当たり前のことですけどね。

日本の問題として矮小化されて、アメリカでも同じようなことをいくらでもやっていたのに、それを日本の問題にすり替えて、サンフランシスコで教材をつかってこれから教育をしはじめていくと。

本当に残念で、こういうことはしっかりと声をあげていかなきゃいけない。そういう意味で僕は問題提起をしたつもりでありまして、朝日新聞が「吉田証言」の記事については取り消しにいたったと。

慰安婦の問題についても、これまではメディアに出ている自称インテリがとにかく全部フタをしてしまうという状況の中で、決して正当化はできないけれども、慰安婦問題についてはいろいろ考えるところはあるんだなと。当時、世界各国が必要としていたから、戦場における女性の人権問題がずっと解決されずに続いているわけですよ。

そういうところを正していくためにも、日本の問題として矮小化させずに、世界各国の普遍的な問題としてきっちりと取り組んでいくべきだと。日本国としても、世界各国に発信していかないと。とんでもない教育が世界で行われていくと。外交戦争になれば、中国の力が強いんですから、ほっといたらいろんなところで教材・教科書になってこれが教育されていく。由々しき問題、由々しき事態だと思っています。以上です。