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「ストレスが身体に悪い」は大ウソ! 健康心理学者が語った、本当は怖くないストレスの話

「ストレスが身体に悪い」は大ウソ! 健康心理学者が語った、本当は怖くないストレスの話

ストレスが身体に悪いのではなく、「ストレスは身体に悪い」と思うことが悪い? 健康心理学者であるKelly氏が長年の研究から見出した、「ストレス」の驚くべき効能について語ります。これを読めば、ストレスを感じる状況が怖くなくなるかも? 人生の選択の際にも活きるかもしれない、心と身体を元気にするスピーチです。

スピーカー
Kelly McGonigal
参照動画
Kelly McGonigal: How to make stress your friend

ストレスは健康の敵ではない?

Kelly McGonigal 今日は皆さんに正直にお話したいことがあるんです。が、その前に。皆さんにも正直に私の質問に答えて欲しいんです。ただ手を挙げて頂ければ結構です。昨年少しストレスを感じたなぁという方? では自分は少しではなく割とストレスを感じやすかったな、と思う方? いやいや、ものすごくストレスを感じたよ、自分は! という方は? はい、ありがとうございます、私もそうです。 「実は私、とてもストレスを感じやすいんです」と告白したいわけではありません。今日正直にお話したいことはこれです。 健康心理学者である私の仕事は、皆さんにより幸せと健康になってもらうお手伝いをすることです。しかし、私が人々のストレス緩和のためにここ10年間やってきたことが、もしかしたら手伝うどころか、皆さんに害を与えてきたのでは……と恐ろしく思い始めました。 これまで「ストレスは健康の敵です!」と私は言い続けてきました。ストレスは風邪から心循環系疾患まで、様々な病気の原因となり得ます。つまり、私はストレスは良くないものだと考えてきました。しかし、私の考えは間違っていたことを告白します。そして今日は、皆さんにもその理由を理解していただきたいと思います。 まずは私のストレスに対する考えを変えた研究についてお話します。この研究はアメリカ成人30,000人を8年間に及び追跡、健康とストレスの関係について調査しました。参加者に昨年度のストレスレベルを測る質問をします。更に「ストレスは健康に害であると思いますか?」という質問もします。一般公開されている死亡記録により、参加者の生死も毎年確認します。

「ストレスが害であるという信念」が人の命を奪う?

この研究から何がわかったか? まずは悪いお知らせから。前年重度のストレスを感じた人々が翌年亡くなる確率は43%高かった。しかし、ストレスが健康に悪いと信じていた人だけに適用される数字でした。つまり、重度のストレスを感じていてもストレスは健康に悪いと信じていない人々が死亡する確率は非常に低かった。 面白いことに、重度のストレスを感じながらも「ストレスは健康に何も関係ない」と考える人々の死亡率が一番低かったのです。ストレスをあまり感じない人々のグループも含めてですよ! 研究者達は8年間に亡くなった方は182,000人と推定。そして彼らの死亡原因はストレスそれ自体ではない、ストレスが体に悪いと信じていたことが死亡原因となったのだ、と結論付けました。 研究によれば亡くなった方の数は一年間に約20,000人です。もしこの推定数が正しければ、「ストレスが健康に害をもたらすに違いないと信じること」は、昨年のアメリカ国内死因順位15位となります。皮膚がん、HIV/AIDS、そして殺人よりも多く「ストレスが害であるという信念」が人の命を奪っていることになります。 (会場笑)

ストレス反応=身体が新しいことへ挑戦するための準備?

この研究がどんなに私を怖がらせたか、わかっていただけたのではないでしょうか? だって私は「ストレスは体に良くないんですよ!」と言い続けて来たんですから! そこで私は思いました、「ストレスに対する考え方を変えれば、人はより健康になれるのではないか?」と。答えはイエス。ストレスに対する考えを変えれば、ストレスに対する身体の反応が変わるのです。 説明しましょう。皆さん、こう仮定してください。皆さんは今ストレスに対する人の反応を調査する研究の参加者です。ソーシャル・ストレス・テストと呼ばれるものに参加しています。 研究室に入ると、「ではここで5分間、皆さんの短所について話してください」と言われます。皆さんを評価する人間が目の前にずらっと座っている。ライトが浴びせられ、カメラがこちらを見ている。評価者は皆さんに好意的ではないコメントをしたり、ボディランゲージをしてみたりと、とにかくその部屋のすべてが皆さんに重度のストレスを感じるようにプランされています。こんな感じです。(腕を組み、ため息をつく)。 この時点で、皆さんは自分に対する自信がなくなっています。ここで第2部「数学」に突入です。皆さんは知りませんが、評価者は皆さんの気分をどん底に陥れる術に長けています。皆で一緒にタスクに取り掛かります。楽しいですよ! 私にとってはね。 (会場笑) それでは。皆さん一斉に996から数え始めます。7を引いて、そこから7を引いて。どんどん数えてください。出来るだけ大きな声で出来るだけ早く数えてください。996からですよ、はい、よーいドン! もっと早く! 早く数えて! 遅い! はい、やめやめ。そこの男性が間違えたので、全員初めからやり直し! (会場笑) ほんとにヘタね。なんで上手くできないの?……とまあこんな感じです。だいたい雰囲気はわかってもらえたかと思います。もし皆さんが実際にこの実験に参加していたらきっと心臓はバクバク、呼吸が早くなり、汗をじっとりかいているでしょう。研究者達は一般的にこういったからだの反応を不安の感情、またはプレッシャーに弱い人の反応であると判断します。 しかし、「このような反応は体が新しいことへ挑戦するための準備をしているのだ」と理解したらどうでしょう? ハーバード大学の研究に参加した人々は、ソーシャル・ストレス・テストに入る前に研究者からこう言い聞かせられました。 「ストレスに反応することはいいことなんですよ」と。「心臓がバクバクするのはすばやく次の行動に移るため、呼吸が早くなっても大丈夫、それは脳にたくさんの酸素を送り込んでいる証拠ですから」。 このように説明を受け「ストレスはよい結果を残すのに欠かせないものなのだ」と理解した参加者のストレスや不安感情はより少なく、自分への自信度が高まりました。

ストレスを軽減させよう、なんて考えなくていい

私が個人的に一番面白いと思ったのは参加者の身体の反応に変化が起きたことです。一般的に人間の身体はストレスを感じると心拍数が上がり、血管が縮まります。このような状態が長く続くと、心循環系疾患の原因となります。 しかし、このハーバードで行われた研究によると、参加者が「ストレスを感じるのは良いことだ」と信じている場合、血管が縮まらない、心拍数も健康な状態。むしろ一般的に喜びや挑戦することへの勇気やワクワクした状態、気分がポジティブに高揚する際に見られる反応が起こりました。 長期的にみても、この変化はストレス性心臓発作を50歳で経験するか、それとも90歳まで健康でいられるか、くらいの違いを生むことになるかもしれません。これはとても画期的な発見です。ストレスを甘く見てはいけません。  現在の私のミッションはこれです。もう皆さんのストレスを軽減させようなんてことはしません。皆さんがストレスと上手く付き合えるようになるお手伝いをすることです。今私が話したことが皆さんのストレスに対する考え方を変える初めの一歩になったのではないでしょうか。 このセッションの始めに「昨年多大なストレスを感じた」と手を挙げた方は、特に覚えておいてください。今後ストレスを感じて心臓がバクバクと高鳴ったら、今日のこの話を思い出してください。そして自分に言い聞かせてください。「これはいいサインだ。私の身体が新しいことに挑戦する準備をしているんだ」と。 ストレスをこのように捉えたとき、皆さんの身体は皆さんのその信念を信じます。そして身体も健康的に反応します。

「オキシトシン」も実はストレスホルモン

私は10年以上もストレスを害のあるものとして捉えてきました。ここでもうひとつ皆さんに大切なこと、新しいストレスの側面を覚えておいて欲しいと思います。これはあまり知られていませんが、実はストレスは皆さんを社交的にします。 まずはホルモンの働きからご説明しましょう。オキシトシンは一般によく知られており「ハグホルモン」なんて呼ばれたりもしています。オキシトシンは他者の身体と触れ合い、ハグをすることで分泌されるからです。 でもオキシトシンの働きはこれだけではありません。オキシトシンとは神経ホルモンで社会的な情動を司ります。つまりオキシトシンは、人間関係を円滑に、親密にする役割を担っているのです。オキシトシンによって、私達は友人や家族と身体的に密接な関係を築きたいと願い、人の心に寄り添いたいと思うのです。 更に、親しい人が困っていたら助けたいと思うのもオキシトシンの働きです。社会全体がもっと優しくなるために皆オキシトシンを注射すべきだ! と議論する方もいるくらいです。 しかしここからが、世にあまり知られていないオキシトシンの作用です。実はオキシトシンとはストレスホルモンなのです。 人がストレスを感じると脳の下垂体からオキシトシンが分泌されます。これはストレスを感じたときに心拍数を上げるアドレナリン分泌と同じように、身体のストレスへの反応の一環です。 ストレスを感じる、オキシトシンの分泌が起きる。すると人は他者からのサポートを求めます。オキシトシンが私達に「ストレスはため込まないで誰かに話してスッキリしなよ!」と語りかけるのからです。 そしてオキシトシンによって、親しい人達にも同じようにストレスをため込まないで話して欲しい、少しでも楽になる手助けをしてあげたい、と助け合いの精神が生まれます。困難に見合ったとき、私達の身体が「自分を大切に思ってくれている親しい人達に助けを求めなさい」と教えるのです。 「これを知って健康にどう良い影響が出るのか?」って? 実はオキシトシンは、脳内以外でも反応を起こします。その反応は主に心循環系機能をストレスの害から守るためです。オキシトシンとは実は自然治癒能力を持っている、抗炎症薬とでも言いましょうか。更に、ストレスからくる血管の縮小を防ぎます。でも、これだけではないのです。 私が一番素晴らしいと思うオキシトシンの役割は心臓に対する作用です。心臓にもオキシトシンの受容体があり、オキシトシンがストレスでダメージを受けた心臓の細胞を再生します。オキシトシンというストレスホルモンが、実は心臓強化の働きをするのです。 さらに、親しい人とのコミュニケーション、助け合いによってこのオキシトシンの分泌量が更に増え、身体の健康が促進される。つまり、ストレスを感じたときに他者に助けを求める、または困っている人を助けると、オキシトシンは分泌される。そして分泌されたオキシトシンが皆さんの身体の健康促進に繋がり、更にストレスから早く立ち直ることができる、とこういう仕組みです。 人が助け合うとオキシトシンが分泌され、人の身体を強くする。個人的に、この作用は本当に素晴らしいと思います。ストレスからの自然治癒能力が人間に内蔵されている、そして内蔵されている能力を機能させる鍵が人と人とのつながりだなんて、素晴らしいと思いませんか?

「周囲の人を思いやる気持ち」が身体回復力を高める

最後にこの研究の話をして終わりたいと思います。この研究結果も、皆さんの健康とストレスへの新たなアプローチを取るために大いに役立つはずです。 34歳から93歳の約1,000人のアメリカ成人が追跡調査されました。研究者は「昨年のストレスレベルはどれくらいでしたか?」「あなたは地域、近隣の人々、友人を助けるのにどのくらいの時間を費やしましたか?」と参加者に質問し、一般公開されている死亡記録で、その後5年間参加者の生死を追跡します。 悪い知らせは、経済的窮地や家族間の深刻な問題を抱えるなど、特にストレスとなる出来事を経験した人々の死亡確率は30%増加します。 しかし、それはネガティブな経験をしたすべての人に当てはまるわけではありません。自分が困難の中にいる時でも他者に関心を持ち、助けてきた人々のストレスによる死亡確率はゼロ。ゼロです。 周囲の人を大切に思いやる気持ち、これが身体の回復力を高めます。「ストレスによって健康を害するのは避けることが出来ない、どうしようもない」というのは間違っていることが証明されました。私達の考え方、行動次第で「ストレス」の作用を変える事ができるのです。 「ストレスとは良いものだ」と信じれば、身体全体の作用が「ワクワク」状態になります。困難な状況に陥ったときは他者に助けを求めれば、そして困っている人には手を差し伸べることで、あなたの身体は反応し自然治癒反応が起こります。 今以上にストレスを感じたいとは思いませんが、これら科学的事実は私のストレスに対する考え方に大きく影響を与えました。ストレスとは私達に「ハート」をくれるんですね。やさしいハート(心)を持って大切な人達と繋がりあうこと、そして私達のハート(心臓)は強化、活性化される。更にストレスをありがたく感じれば、ストレスにもっと上手く対処できるようになるに留まらず、こう自分に宣言するも同じこと。「自分を信じて。絶対に乗り越えられる。ひとりじゃない」。ありがとうございました。

「ワクワク」に従って人生を選択していこう

司会者 素晴らしいお話をありがとうございました! ストレスに対する考え方が私達の寿命にまで影響を及ぼすなんて、本当に驚きました。例えば責任が重くストレスが多い仕事を選ぶか、それとも楽でストレスを感じない仕事を選ぶかについて悩んでいたら、どんなアドバイスをされますか? 「自分はストレスなんかに負けないぞ」と思っていればストレスが多い仕事を選んでもやっていける、ということでしょうか? Kelly そうですね。確実に言えるのは、健康の側面から見ても「人生に意味を求め、よくなろうと願い、行動を続けること」は、イヤなことを避けて通り続ける人生よりも良い、ということです。人生に意味を見つけ、夢を追う、ワクワクする気持ちに従って人生を選択していくこと、そしてどんなストレスを感じたときも「自分ならできる」と信じることが鍵だと思います。 司会者 そうですよね! 本当にありがとうございました! Kelly  ありがとう!

  
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