プレゼンをうまくするための方法9つ

中村仁氏(以下、中村):じゃあ、それを踏まえて、もう少しうまくやる方法ですね。プレゼンの構成で言うところの2階建ての上の2階の部分。ここをもうちょっといろいろと考えてみたいと思います。

いくつかあります。9つかな、今回挙げているのは。

1つ目。プレゼン資料は毎回作りましょうっていう話。プレゼン資料を1回作ると、それをすべてのお客さんに流用しようっていうのを、やりがちだよね。だいたいみんなやるよね。

なんだけど、それは根本的に間違ってるということを知りましょう。なぜかというと、相手の欲しいものをプレゼンすると考えると、20代の女の子にあげるのと、60代のおじちゃんにあげるのでは、全然欲しいものが違うわけです(参加者を指して)。

参加者:60代じゃないです。

中村:違うの?

(会場笑)

中村:だそうです(笑)。なので、相手が違うと欲しいものがまるっきり違うんだよね。だけど、ややもすると全員に同じプレゼントをあげてしまうっていう。フィリピンに行ってきたんでって、残念なお土産をみんなに配るとかさ。そういうことになりがちなんですよ。

でも、そうじゃない。一人ひとり欲しいものが全部違うわけなので、本来はゼロからそれぞれのお客さん向けに「何に困ってるんだろう」「何が欲しいんだろう」っていうことを考えるのが基本です。これちゃんと理解しましょう。

ただ、作ったものは意外と流用できるよね、実際。そういう流用できるものがあるなら、それを利用して作るのはいい。だけど意識としては必ず、そのお客さんだけのために作るっていう意識を持ってほしい。なので、「中身は全部同じだけど、表紙だけどこどこって会社名を書き換えて、日付変えて」っていうのは、意味ないって話です。

プレゼンは準備が8割

2つ目。プレゼンは準備で勝負が決まる。これさっきも言ったことですね。とにかく準備が8割ぐらいだね。準備8割。当日の努力が1割。運が1割って感じですかね。

とにかく徹底してヒアリングとか、調査とか、分析をしましょっていう、これ何度も強調します。相手の欲しいものを正確に把握する。

もしプレゼンの前に相手が欲しいものを誤解してるなと思ったら、プレゼンの前に解いておくほうがいいです。

プレゼンのなかでいきなり、「あなたはこう思ってるかもしれませんが、僕らはこう思います」って言うと、反発をもらうんで、ここをちゃんと事前に訂正しておきましょう。

資料はなくてもいい

相手のスイッチがわかってると、資料がなくてもいいんだと思うんです。プレゼンって、だいたいこういうドキュメントをパソコンで作って、映して、何か話すみたいなことがプレゼンだと思ってるかもしれませんが、あんまりそれ意味ない。

僕、今見てるドラマがあって、その中でプレゼンシーンがあるんですよ。これ、ある種ちょっと理想に近いなと思ったので、それを見ましょう。

『パーソン・オブ・インタレスト』って知ってる人? テレビドラマ。知らないか。

これはアメリカのドラマなんですけど、これがどういうお話のドラマかという説明はしません。今、どういうシチュエーションかというと、いろんな個人情報を集めて、それを売ったりしてるライフ・トレースという会社のCEOが、今からある大企業と提携の交渉をするっていうんでコンペをやってます。

交渉相手の大企業が相手側に座っていて、そこに社長が入ってきます。社長は自分たちの会社がいかにすばらしいかっていうことを説明して、その提携交渉をまとめようっていうプレゼンをします。どういうプレゼンするか見ててください。

(映像視聴。登場する社長はプレゼン資料を一切使わずに、いきなり相手を驚かせるプレゼントを手渡します。そしてなぜそのプレゼントができたかの理由を説明することで自社サービスの優位性の説得に成功し、契約を獲得します)

という感じで。ドラマなので多少、いろいろと簡単にしてるところがありますが、基本的にプレゼンっていうのは、必ずしもドキュメントを使って見せなければいけないというものではないと。

相手のことをちゃんと研究をして調べて、その人に対してきちんとインパクトを与えられることをやって、それがきちっと説得力があってっていうことを示せるだけで、プレゼンというのは十分なんだよねっていう1つの例だと思っています。

なので、今のがまさにそうだよね。相手をちゃんと調べてデータを分析して、「お子さんが産まれるんですよね?」って言って、プレゼントを渡すだけで、この会社すげえってなる。

こういうことができれば、プレゼンなんて3分とか5分で終わりなんだよねっていうことです。なので相手のスイッチをいかに正しく把握をするか、理解をするかってことが重要なわけです。

プレゼン資料にも役割があります

3番目。資料の役割をきちんと理解する。ここで○○さんに問題です。資料の役割はなんでしょうか?

参加者:はい。

中村:いい返事ですね。

(会場笑)

参加者:はい。資料の役割ですか?

中村:資料の役割。

参加者:2つあります。

中村:いいですね、どうぞ。

参加者:1つは言葉で伝えるより、「百聞は一見にしかず」という言葉があるように、目で見て、ビジュアルとかそういうもので、わかりやすくプレゼンを補完する。それともう1つは……。あ、それ1つでいいです。

(会場笑)

中村:じゃあ資料の役割。○○さん。

参加者:はい。資料は直接プレゼンできない人向けのもの、営業マンなんで。

中村:プレゼンの資料は?

参加者:プレゼンの資料。言語で説明しづらいものを視覚的に伝えるもの。

中村:なるほど。ほかになにか意見のある人いる? じゃあ、いきましょう。

基本的に僕が考える資料の役割、特にプレゼンの資料の役割ってなにかというと、話に付き合ってもらうためだと思います。話に付き合ってもらうってどういうことかというと、こっちの言うことをちゃんと全部聞いてもらう、一緒に考えてもらうことです。

なので、変に僕らの言いたいことを、先回りして読まれてしまうような資料じゃダメなんです。今、僕はみんなに「テーマを見てどう思いますか?」って質問して、そしたらみんな考えたよね。一緒に考えてくれましたそうやって話に付き合ってもらうために、僕は資料作っています。

なぜかというと、ちゃんと説明を聞いてほしいからです。ちゃんと説明をして、それを聞いてもらった上で判断をしてほしい。そのために僕の説明にちゃんと付き合ってもらう。なので順を追って説明できるように、流れを抑制するためなんですね。

お客さんに先回りさせない。先に行かせない。ここで待っててください。これ聞いたら次行きますっていうことをちゃんと、こっちでコントロールをして、お客さんと同じように、こっちの思うとおりに順番に一緒に考えてほしいということをやるために、僕は資料を使っています。

聴覚だけじゃなくて視覚も使ってもらうほうが効果的。言葉だけじゃなくて、資料を使ったほうがわかりやすいですね。

あと強調したいところをちゃんと伝えたい、要点を。なのでプレゼンでは、要点しか書かない。極端なことを言うと、単語しか書かないっていうのが理想だと思ってます。なので、あんまり冗長に、だらだら説明する文章を見せるんではなくて、多分その資料だけ見ても何のこっちゃわからないっていうくらいがいいと思ってる。

でも今、僕が喋っていることを、ちゃんと集中して理解してもらうために、その要点だけにフォーカスを当てるということをやっている。

ということで、プレゼンに使う資料っていうのは余計なものを見せない。今自分が話すことに対して余計な要素を削除して、余計なことを考えてもらわないために資料を作っているということです。

さっきの話なんですけど、プレゼンの資料と手渡しの資料、まったく役割が違います。

プレゼンの資料は、僕の話を聞いてもらうためのツールですけど、手渡しの資料というのは、僕が説明をしなくてもちゃんと理解してもらえるようにするっていう、1人の営業マンとして役立ってもらうので、これはまったく別です。

本来はプレゼンで使う資料って渡しちゃいけない、伝わらないから。なんだけど、手間をかけられないので、そうするとどうするかっていうと、プレゼンの資料を作ったら、説明はこれを使います。言葉でちゃんと説明できるし、それがプレゼンの効果を最大化できるから。

だけど渡す場合は、これにさらにページを補足をして、ここ説明入れなきゃわかんねえよなっていうところは説明のためのページを差し込んで、ページを増やして渡すっていうのが理想。

ただし、これもプレゼンの前に渡しちゃいけない。なぜなら、説明の途中なのにどんどん先のページを見られて結論に先回りされちゃうから。プレゼンが終わったあとで渡しますってしなきゃいけないということです。

プレゼンで重要なのは「飽きさせないこと」

それとちょっとつながる話なんですけど、アテンションを得る工夫っていうのがあります。これは結構いろんな工夫があるんで、2ページにかけて書きますが、プレゼンをするときに時間をちゃんと作ってくれてる人はみんなちゃんと自分に注目してくれる、ちゃんと聞いてくれるだろうというのは大間違いで、基本的に相手は一瞬で飽きると僕は思っています。

ここにも、こうやって話してると、結構飽きてる人がいるんだと、常に気にしながら見ている。

(会場笑)

飽きるのが当たり前なんです。なので、どうやったら飽きないだろうということを常に考えながら工夫する。

一番いいのは脳みそを一緒に使ってもらうことですよね。だからこちらからどんどん質問する、と。質問されるとドキッとするでしょう。目が覚めるじゃない。考えなきゃいけないから。

そうすると「俺も当てられるかも」と思って、みんな考え始めるわけだよね。なのでそうすると絶対寝ない。

あとさっきも言ったように、問いを出すが、答えを見せない。問いのところでみんなで一緒に考えてもらうみたいなことを、プレゼンのなかでちゃんと流れを作っておくと、話をする時に寝ないで、ちゃんとステップ、ステップでみんな考えながら聞いてくれます。

いかに一緒に脳みそを使って考えてくれるかっていうことを意識しながら、プレゼンの流れを作っていくかっていうことです。

資料は「シンプル」に

あと文字が多いと寝るじゃないですか。だらだら書いてる資料を見ると眠くなるでしょう。だから文字は一文字でも少なくするっていうのが大事なんだと思うんですよ。

これうちの会社に限った話じゃないんですけど、意外と文字数を少なくするっていうことに対してこだわってる人が少ない。

なんとなく見た目シンプルに作ろうっていう意識はあっても、この言い方はここを変えたら一文字減るんじゃないかみたいなことに、どれだけこだわって作ってるか、というのが重要です。

それからワンクリエイティブ・ワンメッセージ。これはよく広告業界で言われる話ですが、これがどういうことかというと、1つの広告、雑誌広告でもいいし新聞広告でもテレビ広告でもいいですけど、その1つの広告の中で言えるメッセージ、伝えられるメッセージは、1つしかないんだよっていうのが、この考え方です。

広告を作ると、あれも言いたい、これも言いたい、これも入れたい、どんどん増えてくるんですけど、増えれば増えるほど、全部伝わらない。

なので広告で伝えるものっていうのは、1つに絞りましょう。といのがワンクリエイティブ・ワンメッセージです。これはプレゼン資料も同じで、1ページで言いたいことは1個にしましょう。

1ページで言いたいことをあれもこれもって入れてしまうと、絶対にわからなくなるので。結果的にページ数が増えるんですけど、でもそうしないと伝わりませんっていうのが僕の今までの経験です。

ハンドアウト。これは絶対、先に渡さない。先に渡すと何が起こるかっていうと、これから2時間のお芝居を見てもらおうとしているのに、いきなり主催者がすべてのお客さんにあらすじを書いたネタバレを先に配って、「今からこういうことをやります」って言って渡してるのと同じです。誰も見ないよね。ドキドキもしないし。なので、絶対渡しちゃダメです。

笑いを入れて飽きさせない

まだあります。さっきの一文字でも少なくっていうのにつながるんですが、説明をコンパクトにしましょう。この話し方にも、うまい説明のしかた、下手くそな説明のしかたっていうのがあって。

同じことを説明するのでも、10秒で済むやつもいれば1分かかる人もいるね。全然違います。10秒で伝わったほうが絶対退屈もしないし、理解も早いということで、ここも、やっぱりどれだけうまく説明するかっていうことは工夫しましょう。

それから笑いを入れる。これは難しいので、うちのエンドウさんていうマネージャーさんぐらいの話術がないと難しいんじゃないかなという。難しいんですが、入れられる人は入れるといいと思います。

あと相手をよく観察する。これも意外とできてないやつがいる。プレゼンやると夢中になるじゃない。一生懸命、話さなきゃと思うじゃない。そうすると相手を見なくなるよね。

以前うちで、セールスの人たちがプレゼン大会をやったことがあるんですね。テーブル挟んだ向かいに座っているお客さんにプレゼンするという設定なんですが、モニターに資料を写してプレゼンするまではいい。でもそこから先、「ではアプリのデモをお見せします」って言ってiPad出して「こういうふうに使うんですよ」ってデモをやったときに、自分の使いやすいように、自分のすぐ目の前でやっちゃうんですね。

そしたらお客さん、どういうリアクションしたかっていうと、こうやって見てるのね。こうやって(乗り出す体勢)。見えないから。乗り出して。

そういうふうになったらもう、相手に見づらい思いをさせているので、ちゃんとお客さんの方にiPadを差し出して、相手に近いところでやるっていうことに気付くぐらいには、やっぱり、相手をちゃんと観察をしてほしい。相手をよく観察して、眠そうだったりとか、退屈しそうだったりしたら、すぐ何か手を打っていかなきゃいけないわけですよ。

相手はどうなのかと。乗り出して来てくれている時と、飽きている時ではやるべきことは違うわけなので、ちゃんと見ないと、何も手が打てずに、ずっとダメなまま終わるってなことになっちゃう。なので、そういうことに気をつけましょう。アテンションを得るために、以上、大事なことですね。

制作協力:VoXT