今後のビジョンは?

中川悠介氏(以下、中川):もう、あまり時間もないので、これから地方創生だったり、インバウンドっていうすごく大きいテーマがあるなかで、本丸のイベント、TGCや超会議だったり、さらに新しいイベントでもいいと思うんですけれど、「今後何か仕掛けていこう」とか、「こうなっていこう」みたいなビジョンやイメージがあれば教えてもらえればなと思ってます。

村上さんからお願いします

村上範義氏(以下、村上):はい。今の話でいうと、地方創生にしても、クールジャパンの海外コンテンツにしても、東京にしてもそうなんですけど、やはり何度も話に出てるんですけど局地的熱狂。

これをどこでも作ることがすごく大事だなと思ってます。我々も東京で圧倒的な熱狂があって、発信力があるからこそ、そのコンテンツを地域に活用したりとかそういうことができていますし。

やはり局地的熱狂を作ることによって、皆がメディアになっている強みが生かせる。その熱狂のなかで、一気にそれがいろんなメディアを通じて発信されていきやすくなるので。

イベントっていうのは、ただ人が集まるということではなくて、地域でももちろん、熱狂を作ることをキーワードにしていくことがすごく大事なんじゃないかと思います。

日本企業の敵は海外からの黒船

中川:横澤さん、いかがでしょうか。

横澤大輔氏(以下、横澤):はい。今回、海外に出てインバウンドの戦略を検討してみたのですが、僕個人的には難しいのではないかと感じました。例えば海外に大型コンテンツ、イベントを持っていこうとした場合、大体4分の1ぐらいが渡航費で取られちゃうんですね。渡航費だったり、宿泊費。そうするとコンテンツに注力ができない。なので、やはり単一の企業で行くことはリスクがすごくあるなと思いました。

数年前ですけど、いろんなIT企業が海外へ行って、軒並み厳しい状況だったと思うんです。

あのとき、海外にはゲームとかで行こうとしてましたけれど、厳しかったと思うんですよね。今回はイベントだったり、アニメで行こうって言ってるんですけれど、これも多分同じ仕組みで行っちゃってると思うんです。

そうなるとコンテンツ戦略で、インバウンド、海外の戦略を組むっていうのは相当難しいだろうなと。そうなったときに、お金の投資をどこに使うべきかと考えると、僕はやはり仕組みに使うべきだと思っていて。

コンテンツの流通をしっかり国でサポートしてほしいなと思っています。

海外に持っていく仕組み、プラットホーム、流通とかそういうものを作っていくべきだと思いますし、あとは日本の企業が今戦わなくちゃいけないのは、日本企業同士ではなく、おそらく海外からの黒船。

なので海外に行くのであれば、ある意味休戦をして、連合軍を組んだかたちで海外に行って、日本カルチャーをどういうふうに広げていくかっていうこと、それを僕はやってみたいことだなと思っています。

そういう仕組みができるのであれば、ネット側から、その仕組みのサポートをぜひやってみたいなと。

今の流れ的にはそうなんじゃないかと思っているので、積極的にドワンゴとしては動いていきたいなと思っています。

中川:ありがとうございます。なかなかおもしろい話ですね。

海外パートナーとのコミュニケーションの取り方

鈴木貴歩氏(以下、鈴木):実際に現場で大きな熱狂を生み出しているお三方なので、すごくリアルな話が聞けたのかなと思います。

ある種ポジティブな話だけど、これからの課題だったり、それでもやっぱりその芯がぶれない。前のセッションでも、世界を目指すアプリを作っている社長が「芯がぶれないことが大事だ」って言ってたんですけど、それとの共通点をすごく見出しました。

ぜひ皆さんから質問を受けたいのでいかがでしょうか。どんな質問でもいいですよ。じゃあ、私から質問いいですか。

海外のパートナーとコミュニケーション取るときに、意識してることって、例えば村上さんありますか。先ほど、海外のパートナーと仕掛けていくっていう話がありましたけれど。

村上:やっぱり国が違うと当然文化が違うので、どうやってローカライズできるんだろうなと。さっき横澤くんの話で、僕もいろいろ考えるところがあったんですけれど、僕自身は現地にどうやったら受け入れられるかっていうところを結構、意識はしています。

まったく興味がないものを、自分たちが出してしまってもなかなか熱狂は生み出しにくいのかなということも思っていたので、さっきの地方の人と(お酒を)飲むじゃないですけれど、結局リアルな、最後のアナログな部分で、現地の方がどう考えていて何を求めていて、と、ヒアリングして。

地方にしても、海外にしても、現地の人とのコミュニケーションのなかで決めていくべきなのかなと思っています。

鈴木:やはりそれは統計からは見ることができない、リアルなところっていうことですかね。

村上:そうですね。統計っていう数字は非常に大事だと思うんですけれど、その統計の数字を頭のなかに入れながら、リアルな部分で判断していくっていう。

鈴木:村上さん的には両方のアプローチで必ずやってるっていうことですかね。

村上:そうですね。基本的には統計がベースになると思うんですけど、その数字は過去の話なので、それをベースに意識した上でリアルな部分っていうのはやっぱり自分たちの感覚で作っていかないと、その過去のものだけでは推し量れないものがあるのかなと思ってます。

鈴木:なるほど、すごいおもしろいです。

すでに連合軍はでき始めている

はい、質問いかがでしょうか。じゃあそちらの方で。

質問者:おもしろい話、ありがとうございます。横澤さんが、今、「連合で出ていくのがいいんじゃないか」ってお話をされたんですけれど、非常に「言うは易し行うは難し」みたいなところがあると思うんです。連合のやり方で、どういうものがいいのかなというのがありまして。

例えば、国が旗振りするというのも1つあるかもしれないですし、業界の大手といわれているところが旗振りするっていうのもあるかもしれないし、もしくは全然違う第3者が入ってきてしがらみがないところで旗振りするとか。

いろんな合議制でやるとかいろいろあるかもしれないですけど、横澤さんがイメージされている連合っていうのをお聞かせください。

横澤:実は今もそういう試みがなされていまして、クールジャパン機構がファンドを持っていて、そこのファンドと民間が組んで、官民っていったらいいのか、そういったかたちで民間とクールジャパン機構が組んだかたちでの連合軍ができ始めています。

僕は、MCIPという吉本興行さん、ソニーミュージックさん等が中心に作っている連合軍に取締役で入らせていただいていて、そういったいろんなチームがやっとでき始めているところではあるので、「ここで何をしていくか、どういう戦略をとっていくか」というのが、多分これから試されてくるときだと思ってます。

連合軍の形成っていう意味では、「言うは易し行うは難し」ってまさにその状況でして、どんなふうに国内の事業と折り合いをつけながら、海外に行くかっていうことについてもまさに今話している最中にあると思います。

そういう垣根をどういうふうに越えるかっていうことが、これから、今僕らが担っていく課題というか、まさにそれが現在進行形(の課題)であると。

ただ、連合軍を作らなくちゃいけないっていうところでの、発想はもう動き始めてきてるんじゃないかなと。なのでここ1、2年ぐらいでその結果というものがなんとなく見えてくるとは思います。

鈴木:その後の結果を、またこういう場でお聞かせいただけるとすごく勉強になるし、さらにまた大きな連合軍の動きになるのかなと思いますね。

いかに経費を削るか

はい、(質問)どうぞ。

質問者:今日は貴重なお話ありがとうございました。先日、海老蔵さんがシンガポールで公演したんですが、採算を聞くととんでもない赤字だと。

さっきもお金の話出ましたが、高い人件費の渡航費を削るとか、またはシンガポールならシンガポール内の企業のファンドをどう生かすかとか、そういうのもいろいろあると思いますが、今考えていることがありましたら、お聞かせいただければ幸いでございます。

中川:僕から話させてもらうと、さっき横澤さんがおっしゃっていた渡航費。本当に、イベントの経費のほとんどがそこになっちゃうことは多いなと思っています。

ただ、先ほどの海老蔵さんの話もそうだと思うんですけど、何かに頼るっていうことよりもいろんな部分切りつめたりとか、いろんなスポンサー集めてとか、やっぱりイベントって楽じゃないと思うんですよね。

さっきもちょっと3人で話したんですけど、イベント前ってもう本当に寝ないで働いていて、「でも、止められないんだよね」みたいな中毒性もあって。やっぱり海外でやるときっていうのは、もっとそれ以上にいろんな部分で方法を出すことが必要だなと思ってます。

渡航費、もちろん削れるものは削っていく、向こうの現地の経費も削っていく、お弁当も削っていくみたいなことをうちはすごくやってます。本当にできること少しずつやっていかないと。

多分、海外のイベントに日本が出て行って儲かってるって、僕はないと思ってるんですよ、そんなに。あるとしたらスポンサーについてもらってるとか、そういうこと以外はほどんどないなと思っていて。

僕らは、そういうイベントってある意味、日本の宣伝マンだと思っていて。日本の広告をして宣伝をしていて、現地で日本のことを好きな人に増えてもらって。そこで増えた人たちが日本に来たいと思う、そしてインバウンドにつながっていくみたいなイメージなのかなと。

その宣伝マンの先頭を切って、その後ろにいろんな企業の方にサポートしてもらっていかないといけないのかなとはよく考えてます。

鈴木:はい、ありがとうございました。それでは話はつきませんが、時間になりましたのでこれでこのセッションを終了にいたしたいと思います。中川さん、村上さん、横澤さんどうもありがとうございました。

(会場拍手)