男社会を女社長が生き抜くコツ

伊藤ようすけ氏(以下、伊藤):面川さんは『キャリアコンシャスのすすめ』とか『恋愛感性ビジネス』とか、こういう本を出されて、今はこちらの会社で企業のWebマーケティングですとかIPOのお仕事なんかもされていて。

面川真喜子氏(以下、面川):PRとかも。

伊藤:PRのお仕事もされてるんですけど。女性が輝く社会でありたいという今の政府の方針も含めて、どうやって輝かれていかれてるのか。たぶん相当の苦労もあったと思うんですけど。

さっきちょっと打ち合わせでもいろいろと話をしましたけれども。自分が女性であるがゆえに感じた苦労とかあったりしますかね? 今までノリで……ノリでって言ったら失礼ですけど、大学卒業して就職もされずに今まで生きてこられて。

面川:一言で言うと、セクハラですよね。でも、当時は「そんな人いるよね」というレベルだったので。そんなに目くじら立てるほどではないですが、それが1つ大きいですよね。今は「セクハラダメだよ」って言われ始めてから、それもなくなり。

伊藤:今はないですか?

面川:全く。それは年もあるから(笑)。結構落ち着いちゃったのでもうないです。むしろこっちがしてるんじゃないかと心配になります。

(会場笑)

伊藤:なるほど。そういう意味では、あまり目くじら立てるほどの苦労みたいなものもなくて。でも、男社会であるというところもやっぱりあって。

面川:それはしかたないですよね。だから男性とどうやってうまく仕事してくかというところには、細心の注意を払ってました。

伊藤:何かそのコツみたいなものはありました?

面川:まず、私今もそうですけど、ちょっと態度でかいので。

(会場笑)

面川:若い頃はもっと態度でかかったんですよ。そうすると、そのギャップをつくというか。「態度でかいけど、気を遣える女子だぜ」みたいな。例えばお名刺交換したら、お葉書で「ありがとうございます」って書くとか。今でも書きますよ。だから明日着きます。

伊藤:なるほど。ギャップね。

ふくだ峰之氏(以下、ふくだ):ギャップは人の心を揺さぶるよね。

面川:そうですね。あとはお歳暮とかお中元とか。あと男性の場合は1回ですむのでバレンタインデーに贈っちゃうんですけど。バレンタインデーにまとめて「義理チョコだよー」って言いながらそれらしく本物っぽいのをバンバンバンって全部贈るみたいな。

ふくだ:最高で何個ぐらい贈ったことあるんですか? 年によって増減あるんだろうけど。

面川:最低30ぐらい。毎年20から30ぐらいは。誤解されそうな人には贈らないんですけど、それ以外の方には基本的にまんべんなくお贈りしてますね。

ふくだ:実は、前回ここで議論になったことが1個あって。女性が活躍する社会、「昔に比べればだいぶ良くなったよね」と。だけど、女性の心がけと実力と社会の制度。この3つがあって。これの議論が何かごちゃごちゃになってるんじゃないの? ということが、前回のテーマだったわけ。

だけど政治家は、「本人の心がけとか実力は制度でつくるものではないから、これはタッチできませんね」と。「僕たちがタッチできるのは社会制度だよね」と。

だけど社会制度をいくら整えても、心がけと実力が同じだと、女性が光り輝く社会をつくるのは難しいかもねという話になったんです、先週。

伊藤:確かにそうですよね。その3つを政治家が考えるわけにもいかないし、やっぱり社会の制度を考えていくのは政治の役割だと思いながらも、何か今、感じてらっしゃることというのはあるんですか?

高学歴ワーキングプアとヤンキー経済

ふくだ:これ、面川先生にぜひ聞きたいと思ってたわけ。やっぱりさっき言った、本人の心がけと実力。

別にそれは「ビジネスやれ」とかじゃなくて、僕は家で子供を育てるのもぜんぜんいいと思う。いろんな選択があっていいと思うんだけど、子育てするにも心がけと実力が必要で。

私の家内は子育てを一生懸命やっているけど、心がけと子供を育てるための努力って半端じゃないわけですよ。

何でもそうだけど、そこが昔の女子と今の女子は変わっているのかどうかという。ここが聞きたいのよ。

面川:難しいですね。

伊藤:難しい? 僕、実力ということに関して言うと、すごい上がってると思うんですけど、違います?

面川:そうですね。ネットとパソコンのおかげで仕事の内容に男女差がなくなりましたよね。

ふくだ:サービス業になればなるほどそうかもしれないね。

面川:そこの部分の差はほとんどなくなってきたっていうのと、あと、今日「高学歴者の貧困」みたいな中吊り(広告)を見たんですけど。

伊藤:高学歴者の貧困。

面川:要は大学を出ても金もうけできない人たちが増えてるんじゃないのかという。むしろプライドがあって貧困に陥ってしまうというのがあるんじゃないかなっていうのは少しずつ感じています。

一時、「ヤンキー経済」という言葉が出ましたけど。言葉だけじゃなくて実際にお金を稼いでらっしゃる方、30代ぐらいで高校中退とか多いんですよ。むしろ大学は入っていない方がすごく多くて。

でもそういう人たちって自分で目標を立てて生きる努力をすごくしていて。「どうやったら自分がこのビジネスの世界で勝ち抜けられるのか」を常に考えておられる。そういう努力はされてるんですよね。

女性でもそういう人って実は多くて。高学歴になればなるほど社会のことがわかり過ぎて賢くなって、制度のところだけに頼っていってしまうようなことがあるのかなというのはちょっと感じます。

伊藤:なるほど。

ふくだ:確かに、ヤンキー経済というのはあるよ。今僕を周りで支えて応援してくれてるやつら、これ見てたら困るけど、僕の後援会の青年部長は昔暴走族だったわけよ。

面川:なるほど。かっこいいじゃないですか。

伊藤:確かに、僕はふくださんの選挙手伝ったときに思った。ちょっと強面多いですよね。

(会場笑)

伊藤:いやいや本当。これ入口間違えちゃ駄目だなって。

ふくだ:でも、そういうやつらは、今自分で商売やってて、みんなそれなりにうまくいってて熱くて。人の選挙のことも一生懸命やってくれて、自分の店もきっちりやってるわけ。たくましいのよ。

面川:そうそう。すごいたくましいですよね。

ふくだ:別に会社入った人が全員そうじゃないとは言わないけど。会社に入られて組織の一員になっている人は、例えば僕と仲良くても、彼らみたいに「じゃあ、朝5時集合な」なんて言って5時に駅に来たりとか。

あと夜中ビラ配るから「じゃあ夜12時に集合」とか。

伊藤:ならないですよね。

面川:ならないです。

ふくだ:だけどその商売やってる人だって、翌日は働いてるのよ。

面川:うん。むしろ早いかもしれないですね。

ふくだ:だけど、「よっしゃー!」みたいな。これ、一体何なんですかね? さっき言ったように、(高学歴の人は)「枠組みを知ってるから無駄な努力は嫌だ」みたいな感じになっちゃうんですかね。

面川:それは否定できないんじゃないかなと思います。やっぱり根本的に頭がいいので。

ふくだ:頭いいよ。

面川:女性とお仕事してて思うのは、調べものなんかさせたらどこの誰よりもすごい勢いでガーって上がってきますから。総研のご出身の方なんか特に。こういう人たちが結婚して、出産して、子育てしてっていったら、相当制度におんぶにだっこしたくなるかもなって、制度のスキをついてくるような気もしますよね。

ふくだ:使えるなら使おうという。

面川:はい。

ふくだ:使えるなら使おうというのは、制度だから僕は決して悪くないと思うんだけども、制度を使ってそこから先のまた新たなる制度を求められてしまうと、エンドレスになってしまう。

そうすると、僕らがやるべきことというのはいわゆる枠組みづくり。枠組みづくりってやっぱり限界があって。お金もかかることだし。だから一体どこまでその制度で追ってったらいいのかというのは、ちょっと悩むところはある。どうしたらいいんでしょう? 僕たちは。

伊藤:これどうですか? すごい難しいところだと思うんですけど。

女性が活躍する社会と制度の問題

ふくだ:もしかすると、この話が女性が本当に光り輝く社会をつくるある種のキーワードでもあり。この議論を乗り越えていかないと本物にならないのかもね。

伊藤:あんまり手厚く手当てしていくことの限界もありますし。やっぱりお金かかりますのでね。

面川:ですね。

伊藤:確かに、女性が輝くということはもちろんすごく大事なことだと思うんですけど、「ちょっとそこまでは勘弁よ」ということを言わなきゃいけない時期なのかもしれないし。そこをうまい具合に。

面川:やっぱり、教育じゃないですかね。

伊藤:教育。

面川:ちょっと教育という言い方はあんまりにも堅苦しいんですが。日本の経済って、結局10数年前にバブル崩壊したときにいろんな問題が噴出して、日本人って年金のこともよくわかるようになったし、社会制度の中でどれぐらいお金が使われてるかとか、国の予算がどういう方向に使われてるかってこともかなりの確率で勉強させられたと思うんですよ。良くも悪くも。

今のお話って、きっと子育てにお金を使うこと、例えば「制度として女性の起業やら子育てやそういうの全部応援しますよ」と言っても、「金はないんでっせ」ということとか。

それから「こういうふうに使うと、こういう経済効果が見られます」というような、きちんとした指標があって、それがちゃんとクリアされてるかとか、そういうことをすることが必要なのかなという気はしますけど。

伊藤:大学の先生もされてるんですよね。

面川:某地方の大学ですけど。大学の授業でやっててすごく思うのは、経済の授業ってないんですよ。現代経済みたいな。それをリアルに学生にいろいろな説明するときに、お金ってこういうふうに考えるのよと。

例えばBSのバランスシートの考え方であるとかPLの考え方であるとかそういう計算表の考え方というのは、一応授業でやってるんですよ。それが単に公認会計士になるための授業でやっているので、頭に全く入ってなくて。

だから「これがお金のことを考えるのにすごく重要なんだよ」という言い方をすると、結局タックスペイヤーとしてお金の使い道を監視するという協力もなければ、税金を理由もなく払わされたりしていること自体が、巡り巡って制度に頼って補助金もらったほうがいいんじゃないのという話になるんじゃないかなって。

伊藤:言葉選ばずに言うと、そういう制度に甘えちゃうという。わがままになっちゃうということですよね。

ふくだ:だけど、制度は使っていいわけ。違法なことでなければ。

だけどその先、まだまだちょっと至らないところもあるかもしれないけど、今言ったみたいに、制度論の先の議論を経済効果とか含めてやるにしても、政治的にはそれを男性がやると、「また女性をいじめてんのか」とか、「お前らそういう(女性が活躍する)社会が嫌だからそういうふうに言ってんだろう」って言われるわけ。

面川:あげ足取りですよね。

ふくだ:そう。そういう議論は、わがままを言わせてもらえば、面川さんみたいに女性が中心に発信してもらって、議論してもらって、僕らがサポートする形のほうがありがたいよ。

じゃないとまた「自民党は」「昔に返る気か」なんて言われて。「そんなつもりはございませんけどね」みたいな。そういうのになっちゃうのよ。残念だけど。

伊藤:そういう問題ですね。

制作協力:VoXT