スピーカーはC CHANNELの森川亮氏

鈴木貴歩氏(以下、鈴木):森川さん、今日は本当にありがとうございます。

森川亮氏(以下、森川):皆さん、こんにちは。森川です。よろしくお願いします。

鈴木:C CHANNEL、非常にすごいスピードでいろんなところに。しかも、世界を見据えた世界視野の取り組みが多いと思いますので、そのあたりを、今日はうかがっていけたらと思います。

森川:はい、わかりました。

鈴木:よろしくお願いします。

森川:今日は客席に業界関係者の方が多いということで。

鈴木:そうですね。後ろのほうが、かなり濃い面子になっておりますけど。いろんな方々がいるということにしていただければ(笑)。では、早速よろしくお願いします。

森川氏の経歴

森川:僕の自己紹介を簡単にします。

ちょうど平成元年に日本テレビに入りまして。実は最初はコンピューター系の部署に配属されて、目立った仕事だと、選挙の出口調査の仕組みは、僕と慶応の小林先生という方とで一緒に、日本で初めて開発をしました。それから出口調査が始まったりとか。

あとは視聴率の分析のシステムを作りまして、これももう20年以上前なんですけど、アップルで、GUIで、タッチパネルで、分析できる。こういったものを作って。

その後は、日本テレビでインターネット事業を立ち上げ、そしてBSのデジタル放送の立ち上げ。あとは海外展開。当時は国際放送ってものが注目されまして、日本テレビの国際放送事業部の立ち上げをやって。

その後、ソニーに入りまして、ソニーでいろいろやったんですけど、一番のメインは、トヨタさんと東急さんとで、AIIというブロードバンド配信の会社を作りました。それでコンテンツの配信とか、当時だとソニーさんの配信のプラットホームとか。あとはトレソーラというテレビ局が動画配信をやっていたので、そういうプラットホーム事業をやって。

その後、前職に移りまして、最初にやったのがハンゲームというオンラインゲームの事業で、アバターの事業をやって。

その後NAVERという、今はNAVERまとめが比較的認知度が高いかもしれない。NAVERのキュレーションのメディアを立ち上げて、ライブドアを買収して、そしてLINEが生まれたという感じです。

コミュニケーションが重要になってきたインターネットサービス

いろんな事業をやってきました。今回は動画を使ったビジネスで、かつ世界を視野に入れたサービスというものを考えています。ちょっとご紹介します。

ちょっと古い話になるんですけど、ソーシャルメディアとは、つまり何なのかということを、お話ししつつ、今後のトレンド、そして、僕が考えてることをお話しします。

もともとインターネットのサービスというのは、情報提供かコミュニケーション、大きく2つしかなかったと思うんですよね。ただし、圧倒的にコミュニケーションでの利用が多くて。自分でHTMLで打ち込んでホームページ作ってって、もちろん皆さんやってましたけど、社会に対しての影響力ってそんなに大きくなかったんですね。多分、鈴木さんも昔HTMLとかやってましたよね? 自分でデザインしたりとか、そういう時代がありました。

本当に趣味の世界の延長線上だったんですけど。大きく変わったのはブログという新しいプラットホームが生まれたところです。

これによって、自分が発信したい情報(提供)をITとか技術が分からなくてもできるようになって、単純なコミュニケーションからメディア的な役割がようやく出てきたという形かな。

そこに、よりソーシャルな要素が出てきて、今は本当に死語となってる、バズワードのWeb2.0だったり、いろんな人たちが情報を提供して、単なる掲示板ではなく、価値があるデータベースになっていくような仕組みが生まれて。

さらに今までは匿名が中心だったのが、SNSを使うことによって、より多くの人たちとコミュ二ケーションが取れるようになってきて、今やもうGoogleよりもFacebook、またさらにその先のInstagramとか、そういったものが中心になってきてると言われています。

つまり、昔はですね、情報提供とコミュニケーションっていうものは別々だったんです。今は、むしろコミュニケーションの中の情報を、みんなが信じるようになったので、コミュニケーションそのものが、メディアになってきたのかなっていうのが、ここまでの振り返りになるかと思います。

コミュニケーションはクローズドかつ動画に移行

その中でですね、最近の若い人たちというのは、生まれた時からインターネットのコミュニケーションがある。ただ、そのことによって、いろいろひどい目にもあってきているわけなんですよね。

一番大きいところだと、炎上的なものですよね。何かこう、ついうっかり出してしまったこと、若気の至りでやってしまったことが、大きな火種になって炎上して、残りの人生を棒に振るみたいな。

そういうこともあって、最近は、特に若い人はオープンにコミュニケーションするということを、非常に避けています。なので、LINEが伸びたのも、ある意味クローズドでコミュニケーションが取れるという価値が一番大きかったと言えるんじゃないかなと思います。

また一方で流れとしてはですね、文字から写真、そして動画へ移っているということが間違えないかなと思いまして、やっぱりどうしても若い人っていうのは、本もあまり読まないし、文字で考えるよりは、イメージで考える人がどんどん増えてきているんですよね。

ぱっと見て、読むというよりも感じながら情報を入手する。そういう時代になってきているし、そのことによってコミュニケーションを動画で行うと。

今、特に若い方っていうのは、もともとの文字の世界から写真に移って、写真をかわいく加工するカメラが非常に人気です。

さらに今、動画の世界でも、動画をデコる動画カメラアプリが出てきたりとか、MixChannelのように、どんどん交流してコミュニケーションしていくとか、あとSHOWROOMのようにタレントさんが積極的に映像を使ってコミュニケーションしていく。そういうサービス、そしてビジネスもでてきたということです。

コミュニケーションは、大きく言うと、クローズドか匿名で、かつ簡単な動画アプリに移行しつつある。

Snapchatでも動画も始まってますし、Instagramもそうですし、PeriscopeというTwitterが買収したもの。これも動画で匿名でコミュ二ケーションを取るということです。

大きくいうと、若い人たちというのは、一部の人たちと文字ではなく、動画とか瞬間的な何かイメージでコミュニケーションするようになっているという状況です。

メディアを作って海外に進出

そんな中、今回、僕がLINEをやめてC CHANNELを立ち上げる一番大きなきっかけはですね、この日本という国を見た時に、財政面に非常に厳しい状況にあると。

借金がものすごいですし、借金を返すためにお金を稼いでるような、かといって税収も増えないと。もし、これが会社だとしたら、今のままだとまちがいなく倒産する状況になっていると思います。

コストを上げて、かつ売り上げは上げないと、伸びないかなと。じゃあ、売り上げを上げるために何をしなきゃいけないのかって考えた時に、新しい産業を生み出さないといけないということが1つあるかなと。あとは、今あるものの中でいいものを、海外に出していく、これが重要かなと思っています。

その中において、メディアの役割というのは非常に大きいかなと思います。

今、クールジャパンであったりNHKさんであったり、さまざまな所で日本のいいものを海外に持って行こうとしてると思うんですけれども、これ、バラバラにやってもなかなか伝わらなくてですね。僕自身の経験からいうと、メディアという一つのプラットホームを作って、パッケージングして持って行くことによって、音楽もタレントもドラマも、すべてが一つの形になるというところが重要かなと。

今まで、日本発のメディアでグローバルグラウンドが作れなかったんですが、今回、僕がそういう挑戦をしようと思っています。

日本のコンテンツを広めて新しい文化を

もともと、僕、前職が韓国系の会社だったので、韓国のいろんな事例、またタレント、事務所、いろんなお付き合いがありましたけど、今、韓国のパワーがすごいんですよね。

音楽もそうだし、ファッションもそうだし。ドラマもすごく人気があって、一方で日本はこういう分野でどんどん弱くなってると。

もちろん、KAWAII文化も人気だし、和食も非常に伸びてはいるんですが、トータル的に日本の場合は、みなさんご存じのとおり、日本の中でもある程度マーケットが大きいので、日本人向けにやっても採算が取れてきたと。

一方で韓国っていうのは、市場が小さいですから、最初からグローバルをねらって、かつネットに出すことが当たり前の文化なので、積極的に出していって、それと関連するビジネスを育ててきたということが言えるかなと思います。

世界的な流れを考えると、先ほどお話したように、メディアがソーシャル化していて、かつそれがデジタル化してネットワーク化していくというトレンドは、まちがいなく変わらないとしたら、今ある日本の強みを、どんどんそこに載せていかなくてはいけない。

ソーシャルに載せるとか、デジタルメディアに載せて、むしろ広めていって新しい文化を定着させなきゃいけない。そういうフェーズなのかなというふうに思っています。

今、幸い、国の政策もあって、ここにあるように韓国、台湾、中国から、訪日外国人が急激に伸びていて。アジアがやっぱり多いですよね。いかにこの日本と親和性が高いアジア、まだ親日国がある状況の中で、いかにアジアのマーケットにおいて、日本の文化、そして日本のコンテンツを広めていくのか、そういったことを考えています。

スマートフォンで革命が起きる

なので、C CHANNELというのは、グローバルメディア、ナンバーワンを目指すために最初からグローバルに適応するような形を作って、メディア業界を変革していきたいと思っています。

C CHANNELのCというものは何かというと、コミュニケーションのCでして。もともと映像文化というのは映画から始まったのかなと思います。フィルムを使って撮る機械とそれを見る劇場、この2つがセットになって新しい文化ができたと。

ある意味、映像の革命が起きたタイミングというのは、作る機械と見る受像側。両方同時に革命が起きた時に、イノベーションが起こっていると言えるかなと思います。

映画からテレビが生まれた時ですね、まず、テレビ、受像機が家の中に入ったということが、ものすごく革命的な事なのが1つ。それと、技術的には、生放送ですよね。生でスポーツだったり、ライブだったり、さまざまなものがその瞬間見られるということが、ものすごいイノベーションで、この2つがセットになったがゆえに、家庭にテレビが普及して、みんなが普段テレビを見るようになったということです。

今回、スマートフォンが出たことによって、次の大きな波が来ると確信をしています。これがスマートフォンで撮影をして、スマートフォンで編集をして、スマートフォンで見るという。そんな新しいメディアの誕生ができるんじゃないかなということを確信しています。

縦長動画の流れは必ず来る

こういう話をするとですね、映画業界の方だとか、テレビの方だとか、すごく懐疑的に見るんですけど、でも、振り返ってみると、テレビができた時はやっぱり映画業界がすごく馬鹿にしたんですよね。テレビ局に行くやつは落ちこぼれだと。あんなものは動く紙芝居だということで馬鹿にしたんですけど、ここまで伸びたように、受像機側と作る側(で変革)が同時に起こると、おそらく革命が起こるというふうに考えています。

振り返るとですね、スマートフォンが出てから、エンターテインメント業界というのが大きく変わってきますよね。まず、一番変わったのがゲームです。本当にコンソールゲーム機が売れなくなった。

もちろんハードコアのゲームは別ですけどね。ゲームはほとんどスマートフォンに移ってしまったということで、ゲーム業界を大きく変えたのはまちがいないですね。

あと、音楽も当然変わりましたよね。スマートフォンで音楽を聴く時代が来て、ウォークマンが売れなくなったということです。

最後、多分、映像の領域なんですよね。映像がどういう状況かというと、もちろん今スマートフォンで映像は見られるんですが、これが横長でみんな見てるんです。

おそらく、ゲームも横から縦に変わったように、動画も確実に横から縦に変わるだろうと。

これからは多分、映画もテレビも見ない若い人が圧倒的に増えてくる。その人たちは、当然縦長で撮って、縦長で動画を見る時代が来る。まちがいなく来るだろう。そういう事を想定して、僕たちはこのメディアを立ち上げました。

日本のカルチャーを海外に

かつ、先ほどお話ししたように、日本のカルチャーを世界に伝えていきたいなと思っています。これは、単純に何か文化を押し付けるということではなくて、パッケージングをするということですね。これこそが正にメディアの役割かなと思っています。

僕自身、メディアの事業が非常に長いんですが、今、メディア事業というのは、ものすごく儲かるビジネスではないんです。

なので、収益をあげようとすると、今日本の中で年齢層が上めの方が多いですから、上めの人向けのメッセージを発信しないと、どうしてもなかなか収益的に難しいということもあります。

皆さん、普段ネットを使っていると、お気づきになると思うんですけど、刺激的なタイトルじゃないと、なかなか数字が上がらない。

そうなってくると、年齢上めの方向けの刺激的なメッセージを発信し続けるというのが、今のメディアの方向性で、まちがいなくこれは今のまま加速してしまうと思うんですよね。

ただ、今はいいとしても、それを続けるとどうなるかというと、国民全体がおそらく劣化してしまうこともあるでしょうし、特に若い人が共感するメディアがないということは、やっぱり次の世代は若い人が作るのに、若い人の活躍の場が無いということになってしまうのかなと思っています。

このあたりも含めて、変えていきたいなと。メディアの役割をという硬い話をすると、国民の文化を作るとか、国民の民度を上げる非常に重要な役割を担っている。

かつ、そのメディアそのものが海外へ出ていくことによって、その国の文化なり、ビジネス、産業が出ていけるということで、そういったプラットホームを作りたいと思っています。

制作協力:VoXT