メタップスの人工知能活用法

堀義人氏(以下、堀):佐藤さん、お待たせしました(笑)。ここからいよいよ人工知能を使ったビジネス、そして、どうやって僕らが起業家として付き合っていくのかということを考えたいと思います。

まず佐藤さんには、今個々の議論を聞いてどう思ったかというコメントからお願いしたいと思います。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):コメント、ちょっとしづらいですよね(笑)。そうですね……実務でやっている感覚と、アカデミックな世界の話はだいぶかけ離れてるなという気はしますね。

ビジネスは世知辛い話であるので、効果を最大化するとか、売り上げ利益を最大化するというのにフォーカスしながら、「じゃあ、どのテクノロジーが一番いいんだっけ?」という選択肢として、機械学習が挙がっているだけなのかなという気がしますね。

純粋に知能がどうとか、知性がどうとかという話は、たぶんビジネスの人たちは考えていないと思います。

:佐藤さんが実際にメタップスで人工知能をどう活用しているのかというのを教えてほしいんですけど。

佐藤:広告の領域と(先ほど)おっしゃっていた、意思決定の領域ですね。広告でいうと、ユーザーがどのような動きをして、どんなパターンがあって、次に何をするかという予測、そこからどの広告を表示するかというアクションですね。

昔、うちの担当者が、目で見て「どのようにターゲッティングして、どのように設定するとプロモーションの効果が最大化するか」ということを手動でやったのと、完全にアルゴリズムで効果が最大化するように組んでおいて(比べてみた)。

1ヵ月間くらいはシステムのほうが劣ってるんですけど、3ヵ月間くらいするとシステムのほうが効率が良くなるんですよね。蓋を開けてみて、(人工知能が)どんなターゲッティングをしてきたんだという内側を見てみるんですよね。

おもしろいのが、人間が見てもどういう相関があるかわからないんですよ。つまり、人がやる場合には「このアプリとこのアプリが類似性があるから」とか「この市場とこの市場は似てるからこうしよう」という設定がうまくいって、けっこう効果があったんですけども、システムが組んだ最後の組み合わせが、なぜ効果があるのか人間が見てもわからないという。

最終的にはそこまでいってしまうのかなというのは、やっていて思いましたね。

あとは投資をするかとか、このタイミングで事業を撤退するかという意思決定、そこって今まで勘だったじゃないですか。そこを完全に統計で巻き取ろうということで使ってはいますね。

人工知能と相性の良いビジネス領域とは

:松尾さんの本の中に書いてありましたよね。「人間は解釈をしようと思うが、AIは解釈をしない。実際あったものに対して、人間がわからないんだけども正しい」という。そういった現象が起こってくる感じなんでしょうね。

松尾豊氏(以下、松尾):そうですね。説明ができるような機械学習のモデルもあるんですけど、精度が落ちるので。どちらを優先するかで、やっぱり精度のいいほうがいいので、そうすると人間にはわからない。

ある程度間違うかもしれないけど、早いし数が多いので、結果的に人間よりも圧倒的なパフォーマンスになるというのが、王道の勝ちパターンかなと思います。

:実際に活用していて、今後どのような分野でAIが活用されていく、やらなきゃ損だと思っている分野、佐藤さんはどう見ていらっしゃいますか?

佐藤:経済の話でいうと、おそらくは一番効果があるものから使われていくのかなと思うんですよね。ですから、広告、金融ですかね。

場合によっては、人材ビジネスみたいな、データで完結するビジネスで優先的に活用されていって、人の手が介在しないとビジネスが回らないようなものは後回しになっていくのかなと思っています。

:松尾さんから見てどうですか? 起業家というのは変化に対して適応していく力と、テクノロジーを使ってそれを自分たちに優位に持っていく力が非常に強いんですが、松尾さんから見て「この分野やらないのか」「アメリカでは出てるのに、日本では何やってるんだ」と、何かそういった分野があれば教えてください。

松尾:おそらく一番手前にあるのは、広告、金融、軍事あたりは非常に早い段階からあると。ちょっと先に行くと、画像の活用というのがすごくあって。

今IoTやセンサーを活用しようというのがあって、センサーは処理をすることまで含めると、楽ができるのでいいんですね。

でも人間の場合は、ほとんどの情報を画像、視覚から得ている。やっぱりカメラの情報ってすごくあって、それを今まで活用する技術がなかったのであまりできなかったんですけども。ディープ・ラーニングで特徴量を抽出できるようになると、そこから本当にたくさんのことが読み取れるようになる。

僕は画像の活用が、いろんな産業で起こってくるんじゃないかなと思っています。

もう1個は仮説生成というところで、今まで、広告もそうだと思いますけども、試行をやってみて結果を得て、それを考えて次の試行をやるという、その部分は人間が仮説をつくって試していたわけですね。

ところが、特徴量を抽出できるようになると、過去のデータから「こういう仮説があり得るんじゃないか」というところをコンピュータがつくれるようになるので、そうすると試行錯誤のプロセス全体が自動化できる。そうすると、探せる領域がいきなり広がるんですよね。

仮説生成と画像、この2個はいろんな産業で大きいチャンスがあると思っています。

日本人のマインドセットはベンチャー向きじゃない

:茂木さんはどう見ていらっしゃいます?

茂木健一郎氏(以下、茂木):長期的に最もインパクトのある分野は教育じゃないですか。僕は、このグロービスって日本の教育界において、ものすごいイノベーション起こしていると思ってるんですよ。でもフェアに見て、日本人のマインドセットって正直ベンチャー向きじゃないですよ。

:(笑)。

茂木:俺、ここに来て改めてショック……皆さんが悪いって言ってるんじゃないよ。松尾先生は大学の先生だからしょうがないけど、ジャケット着てるじゃない。(堀さんは)松尾さんがいなくなったら、ジャケット脱いだよね。

:だって、服装を言われたらしょうがないですよね(笑)。

(会場笑)

茂木:オタクのアナーキーな感じがないと、日本のベンチャーってもっと大物にならないって。なんでそんなちゃんとジャケット着てんの?

:じゃあ皆さん、ジャケット脱ぎましょうか(笑)。

茂木:いやいや。何が言いたいかというと、ディスラプティブ・イノベーションというのは、現状をクエスチョンして、オルタナティブ(代替案)を示さないとディスラプティブにならないじゃないわけですか。

そこの教育の問題、日本の教育って本当にダメで、僕は大学生で感じる。だけど、ファースト・ジェネレーションをどうシーディング(種付け)するかという問題がある。先生がクリティカル・シンキングとかわかっていなかったら、子供たちを教えられないじゃない。

だから俺は、ファースト・ジェネレーションを人工知能でシーディングしたいんだよ。俺は「最強の囲碁」でマジで強くなって堀さんやっつけたんですけど。

(囲碁と)同じように(教育でも)クリティカル・シンキングやダイナミックなカリキュラムを人工知能がある程度提供してくれて。日本の先生方は、今までの文科省のちーぱっぱの世界で生きてきたから、彼らにファースト・ジェネレーションは無理。

シーディングをどうするかというときに、人工知能の力を借りて教育をシーディングして、アメリカのクリティカル・シンキングの教育と遜色のないレベルに5年くらいで持っていっちゃうみたいな……そういうのってダメ?

教育界に浸透する機械学習の効果

:いや、教育の世界はかなり人工知能が使われてますよね。特に「すららネット」という会社はかなり解析をしていて、去年G1ベンチャーでもEdTechのセッションを持ちましたが。

わかっているのは、人間は正解率が7割になるとモチベーションが上がる。今の教育はマスコミュニケーションで、教師の能力も受け手も違うのに、全部一方通行の教育をやっているから落ちこぼれができるし、できる人間はつまらない。

だから、全部機械学習にして、一番おもしろいのは7割だから、「できない人にはもっと簡単な問題から教えていきましょう」「できる人にはもっと難しい問題を提供していきましょう」ということができて。

どこで間違えたのか解析していて、なぜ間違えたのか、どうやったらうまく教えられるのかということを全部やって、どうすれば人間のモチベーションが高まるのか考えて、全部画像とかを使ってやってるんですよね。

そういう意味でも、教育の分野で最も成功しているEdTechベンチャーというのが、すららネットという会社で、ものすごく黒字化してるんですよ。そういった教育の分野にも入ってきてるんで、おそらくすべての分野において人工知能を使っていく。

スマートニュースも人工知能の塊ということもあるし。おそらくそういうものを使わなければ、勝てない時代に入ってくるだろう。だって他がやってるんだから。「俺たちも使わなければ負けるよね」と。そりゃそうだろうと。

「最強の囲碁」を持った茂木さんがいるなら、僕もやっぱり「最強の囲碁」を使って訓練するしかないかな、という時代になってきたんで。

茂木:皆さんものすごい優秀な経営者だと思うんだけど、もっと頭脳をスパーリングしたくないですか? 皆さんジムに行かれる方いらっしゃると思うんだけど、それと同じように。

例えば、人工知能が皆さんにクエスチョン投げかけてきて、皆さんが返事したら、オルタナティブのいろんなチョイスも出てきて、どうエバリュエーション(評価)して、どう比較してってことを皆さんにまた返すと、スコアを出してくれて。

そういったかたちで毎日やっていったら、半年とか1年で皆さんの頭脳ってものすごく上がってると思うんですよ。そういうの欲しくないですか?

:欲しいですね。

茂木:ね?

:「茂木健一郎をスパーリング・パートナーに」とかね。売れるアプリつくれそうですね。

(会場笑)

:毎日10分頭脳のスパークをして賢くなってきて、それがつながっていくことによって、また生まれていくことができていきそうですね。

茂木:ぜひ。