オークションで中古のブランド品が高値で売れた理由

伊藤ようすけ氏(以下、伊藤):それは何でそういうことが起きるの?

清水彩子氏(以下、清水):12〜13年前は、まだ通販が主流じゃなくて、ブランドさんも通販をやっていなかったんですよ。

伊藤:はい。

清水:今は某通販サイトとかが有名ブランドさんを取り扱って、有名ブランドさんも直接通販や取り置きをしてくれたりとかするんですけども。

当時は取り置きもしてくれなくて、電話しても「店頭にあったら買いに来てください」っていう、みなさんそのぐらい強気の商売をされてたんですよね。

伊藤:なるほど。

清水:例えば渋谷109とかのブランドさんたちも、ファッション誌が出て、発売と同時にみんな店頭に並んで買う。そうじゃないと手に入らないっていうことが、しょっちゅう起きていて。

通販自体があまり主流じゃなくて「クレジットカードとか登録して大丈夫?」みたいな話があった時代だったんですね。

伊藤:そうか。

清水:じゃあ、どうしたら買えるかっていうと、地方の人たちはやっぱり東京に来なければ買えなくて。

伊藤:なるほど。

清水:それで東京に来ても、確実にある保障はどこにもないんです。

伊藤:はい。

清水:そうなったら、オークションで競り落としたほうが絶対に間違いがないというようなものが山ほどあふれてまして。

伊藤:はい。

清水:そこに目を付けて、バイヤーみたいなことをしてたんです。

伊藤:言葉を選ばずに言うと、その8,000円(のTシャツ)が25,000円になったのをいいことに。

清水:そうなんですよ。「これ、商売になるな」と思って。

伊藤:17,000円儲けちゃったから、これ商売になるなと。

清水:そう思ったんです。ちょうどお小遣い20万ぐらい貯金があったので、次の日その同じTシャツを買いに行きまして。

伊藤:そうか。その間アルバイトしてるからね。

清水:そうです。その20万円で、そのTシャツを全部買ってきて、次の日2,000円ぐらいでオークションに出すんですよ。

伊藤:はい。

清水:そうすると、またあれよあれよと落札がどんどん付いていって、25,000円ぐらいになって。

伊藤:その全てのTシャツたちが?

清水:そうなんです。

伊藤:20万円分の?

清水:はい。そうなんですよ。なので20万円が2週間後ぐらいとかには60万になっていて。

伊藤:へー。それ、いくつのとき?

清水:それがちょうどハタチぐらいですかね。

伊藤:そういうことを重ねると、それこそそのコンビニで働いていても、未来が見えない中。

清水:はい、そうです。もうコンビニで温めてる以上に稼いでましたからね。

伊藤:(笑)。

ドレスの魅力にはまったきっかけ

伊藤:ここからが大事なのね。

清水:そうなんです。そこで物を売ることの楽しさっていうのを知って。やっぱりお客様がコメントとか評価を入れてくれるんですよね。

伊藤:はい。

清水:「気に入って、とっても良かったです。迅速な対応していただいて、ありがとうございました」って言われて、評価が上がっていくのがうれしくて。

「何か売れるものないかな」と思って、売れることが楽しくて、必要なものすら売るようになってたんですよ。

伊藤:(笑)。家の中にも?

清水:何でもいから、何か売りたいなと。でも、だんだん物なくなっていっちゃうじゃないですか。

だから「どうしよう。次、何売ろうかな?」っていうように物を売ることの楽しさにそのとき初めて気づいて……。

「自分でセレクトしたものが、お客様に評価されるって楽しいな」っていう中の1つが、実はドレスだったんですよ。

伊藤:自分でドレスを持ってたの?

清水:そうなんです。何でかっていうと、私やっぱりお金なかったですから。

伊藤:それ、いつのとき?

清水:そのコンビニで働いているとき。

伊藤:そうか、そうか。

清水:コンビニで働いてるときお金なかったので、友達に「夜のお店でアルバイトしない?」って言われたことがありまして。

伊藤:はい。

清水:「いいね、いいね」と。手軽にそんなにお金がね。

伊藤:でもそのとき実家だよね?

清水:そうです。実家です。

伊藤:実家で、それこそお父さんとかお母さん、何か言わないの?

清水:「友達のところ遊びに行ってくる」って言って。

伊藤:なるほど。

清水:それで東京に遊びに出て、夜アルバイトして、それでまた実家に帰ってきて、朝からお弁当温めるっていう(笑)。

伊藤:暮らしをしてたわけ?

清水:そうなんですよ。その夜のお仕事したときに初めてドレスを着たんですね。

伊藤:はい。

清水:それでドレスの魅力にはまって……ドレス着ると女の子って、絶対かわいくなるんですよ。そう思いません?

伊藤:確かに。結婚式のときってやっぱり綺麗だもんね。

清水:でしょ? みんなウェディングドレスを着るとやっぱり3割増しぐらいに見えるじゃないですか。

私もドレスを着たときに、「Tシャツ着てコンビニの衣装着てるよりも、こっちの衣装のほうがかわいく見えるかも」って思って。

伊藤:思って。

清水:やっぱり女の子は「かわいくなりたい」っていう願望があったので、私はそこからドレスを買うことが楽しくなったんですね。

伊藤:なるほど。

ドレスを大量に買い付けしてオークションで出品

清水:でもやっぱりそのドレスもだんだんいらなくなるので、それをオークションで出品したところ、このドレスも高値が付いたんですよ。

伊藤:へー。

清水:そうなんです。「ドレスも高く売れるんだ」っていうのに気づいて「何でなんだろう?」と思ったら、ドレス屋さんって世の中に少なかったんですよ。

伊藤:なるほど。

清水:今でもたぶん少なくて。

伊藤:そうだよね。

清水:はい。

伊藤:東京でもドレス専門店ってあまりないですよね。

清水:ないんですよ。ましてや「夜のお店の女子が着るドレス屋さんって、どこにあると思う?」って質問されてすぐ答えられる人って少ないと思うんです。

伊藤:少ないでしょう。

清水:はい。10年前はもっと少なかったんですよ。

伊藤:なるほど。

清水:そうなったときに、夜の子たちがどこで探すかっていうのが、インターネットだったんです。

伊藤:なるほど。

清水:それでそこに目を付けて、最初の頃は「こうやって売れるんだ」と思って、東京のドレス屋さんに買い付けというか、普通のお店ですけどもね。

そこでも「ここからここまでちょうだい」みたいなことをやって、ちょっとお金持ちの気分を味わってたんですよ。

伊藤:へー。

清水:それで家に帰って、全部写真撮って、オークションに出してと、お店屋さんみたいなようなことをしてまして。

伊藤:家で。

卸売業者とのやり取りで気づいたこと

清水:そうなんです。それで、そこから途中で気づいたんです。問屋さんっていうものがあるだろうなっていうことに。

伊藤:そうだよね。

清水:そう。でも私、全然勉強もしてこなくて、ましてや就職経験もないんですね。

伊藤:そうだよね。コンビニのバイトしかしてないですもんね。

清水:そうなんですよ。コンビニって、すごく本当に良くできていて、トラックで勝手に新商品が運ばれて、棚に置けばそれで出来上がってるので、その仕組みがあまりわからないじゃないですか。

伊藤:物の流通のね。

清水:はい。あとで気づいたら「そういえば問屋っていうのがあるんだろうな」と思って、それで問屋さんに問合せして「卸売りをしてください」って言ったら、

「卸せませんよ」って言って断られたんですよ。何で卸してもらえないんだろうと。「私すごいオークションで売るんですよ」って言ったら。

伊藤:(笑)。

清水:笑われて。すごい笑われて、もう苦笑いされて。「あなた、いち顧客ですよね?」って。

伊藤:なるほど。

清水:「だったら、お店で買ってください」っていうふうに言われてしまって。

伊藤:はい、はい。

清水:「いや、でも私めちゃくちゃオークションで売るんです」って熱弁したの。

伊藤:(笑)。おもしろい。

清水:でも結局卸してもらえなくて「じゃあどうしたら卸してくれるんですか?」って言ったら「ちゃんとビジネスとしてやりなさい」と。

「ビジネスとしてやるって、どういうことですか?」って言ったら、「その小売店舗で、お店をちゃんと持ちなさい」と。

伊藤:って、問屋さんが教えてくれたんだ。

清水:そうなんですよ。で、「起業したら、あなたを経営者として見ます」と。「そのときにはビジネスとしてお付き合いしますよ」と。

伊藤:じゃあ「ちゃんと卸しますよ」と。

清水:はい。

伊藤:「店を構えてない限りは、あなたはただのお客さんでしょ」と。

清水:そうなんですよ。

伊藤:そりゃ、そうだよね。

清水:今思えば「そうだな」と思いますけども、その当時はわからなくて(笑)。それで教えてもらってそこからです。「店舗欲しいな」って思ったのは。

伊藤:どこかで店を出さなきゃいけないなと思うわけですよね?

清水:そうなんですよ。

伊藤:それで?

新潟の夜の女性はドレスを着ていなかった

清水:それで、自分の資金の中でお店出せる場所ってどこなのかなと思ってたときに、たまたま私、ゴールデンウィークに新潟に帰ったんです。

伊藤:高校時代のね。

清水:そうなんです。コンビニは埼玉なんですけども、その埼玉から「じゃあ、新潟に遊びに帰ろう」と思って繁華街に出かけたわけなんですけども。

そうしたら、夜の女の子たちがドレス着てなかったんですよ。何着てたと思います?

伊藤:何だろう。

清水:何着てたと思います?

伊藤:でもスーツか。

清水:そうなんですよ。スーツ着てたんですよ。

伊藤:なるほど。

清水:昔は。

伊藤:東京で夜働いてる人たちは、ドレスを着てるけれども、新潟繁華街で夜働いてる女性たちはスーツを着てたと。

清水:そうなんです。

伊藤:それ、何年前ですか?

清水:それが10年前ぐらいです。

伊藤:10年ぐらい前ね。

清水:はい。何か派手なピンク色とかで、髪の毛ちょっとカールしてるみたいな感じの。

伊藤:何かわかるな。

清水:そういう雰囲気で、肩パット入って、みたいな。そういう子たちが多くて「すごいダサい」と感じて、同時に「これは新潟でドレスを流行らせることができるな」って。

伊藤:これニーズあるなと。

清水:はい。思ったんです。

伊藤:なるほど。

清水:これニーズあるなっていったところと、たまたま繁華街の1階を通ったら、空き家って書いた紙が貼られてたんですね。

伊藤:へー。

清水:それで「ここだったら、自分でお店構えることができるかもしれない」というのがきっかけで、次の日不動産屋さんに行きまして。

伊藤:はい。

清水:不動産屋さんに、家賃とどうしたらそこを借りることができるか聞いたら、「敷金と礼金と保証金と、保証人があれば借りれるよ」って言われて。

伊藤:まあ普通だね。

清水:そうそう。

伊藤:そうだね。

清水:それで次の日実家に帰って、親に保証人になってもらおうと思って埼玉に行って、両親に「私お店出すから、保証人になって」って。

伊藤:ちなみにそのとき、もうお金はあったの?

清水:ありました。そのオークションで稼いだ。

伊藤:そうか。

清水:はい。

伊藤:「私売りますよ」って問屋さんに売り込むぐらいだからね。

清水:そうです。敷金としては、だいたい300万ぐらい持ってまして。両親もまさに同じ反応で「お前、どこにそんなお金あるんだよ」みたいな。

伊藤:はい。

清水:「何だよ、突然!?」みたいな。今までお弁当温めてたのに。

伊藤:温めてたんですよね。

清水:そう。