「経営者というよりはエンジニア」スマートニュース浜本氏のキャリア

小野裕史氏(以下、小野):続きましてスマートニュース浜本さん、お願いいたします。

浜本階生氏(以下、浜本):こんにちは。スマートニュース株式会社代表取締役社長で共同CEOの浜本と申します。スマートニュースという、iOSとAndroid向けのニュースアプリケーションをつくっている会社です。

ちなみに、インストールしている方ってどれくらいいらっしゃいますか? ありがとうございます。

小野:すごいシェアですね。

浜本:はい(笑)。これ聞く場所によって全然普及率が違っていて。今日はすごく多くてうれしいです。

僕は自分のことを、経営者というよりはエンジニアだなと思ってまして。プログラミングをはじめたのが13歳のときで、それ以降ずっと1人で何かおもしろいものをつくっては公開して、それに集まってくる反応をインターネットで見てニヤニヤするみたいな……そういう少し根暗な人生を送ってきたんですけれど(笑)。

2007年頃から、当時所属していた会社の中だけで活動するよりも、自分がつくった作品をインターネットで公開したり、コンテストに応募するなどして、そのほうがむしろ楽しくなってきてしまうという感じになって。

中でもこのスライドの右のほうにありますが、Blogopolisという名前の、日本のブログを100万件弱解析して、そのマッピングを3Dの空間上におこなうという、Google Earthっぽい見た目のブログ解析サービスというのをやって。

これがヤフーのアワードでグランプリをいただいたりしたことがきっかけになって、「1人でおもしろいことをやってみたい」という気持ちを抑えられずに、会社を辞めて起業という経緯です。他には『実用Git』という本を共訳するような活動もさせていただいています。

スマートニュース誕生のきっかけ

小野:ちなみに、そのときはどういう会社にいたんですか?

浜本:実は今のスマートニュースにつながってはいるんですけど、自宅サーバーを10台くらい置いて、そのサーバーでひたすらインターネット上の記事を収集するんですね。その収集した結果をパーソナライズして、Webブラウザでニュースリーダーとして使えるサービスをつくってました。

そのサービスは確か公開してから、半年で2万人くらいユーザーが増えたんですけど、おわかりになる方もいらっしゃると思うんですが、半年で2万人というスピードは全然勝負にならない。全く失敗と言っていいようなユーザー規模に過ぎないんですね。当時一緒にやっていた鈴木健という共同創業者の人間がいるんですが、彼と話し合って、ピボットしなければいけないと。

それで出た結論が、スマートフォンのモバイルアプリケーションに特化して、ただしその後ろで動いている基盤の情報の集約や分析のエンジンは活かして、新しく仕切りなおそうということで2012年に出したのが、スマートニュースだったという経緯です。

このときは半年で2万人だと全然話にならないから、半年で10万人くらいを目指そうと思ってたんですよ。そうしたら、リリースしたあと3日で10万人になってしまいまして。これがスマートフォンのモバイルアプリの、特にネイティブアプリの力かと思い知ったわけなんですよね。

1日1000万件の記事を自動解析

浜本:スマートニュースって、お使いになっている方はご存知かもしれないんですけど、人手を一切使わずに機械学習の手法を使って、公平な観点で多様性のある記事を自動的に集めてきて表示するというアプローチを取ってるんです。

解析対象は1日に1000万URLくらいなんですけど、これを構造解析とか意味解析とか重要度推定みたいないろんなフィルターを介していくと、だんだん記事が絞られていって、最終的には1000件くらいのオーダーに落ちてくるんですね。1000万件のものが1000件にというわけだから、1万分の1というすごく少ないパーセンテージまで記事の絞り込みを行うんですけれど。

この絞り込みのときにどれを選んでくるのかというのが、これまでならプロの編集者の人の目利き力に依っていたわけなんですけど、スマートニュースはそれを機械の力でやっているということなんです。このような人手に頼らない技術による問題解決というものには、グローバルにスケールしていく可能性があると思っていまして。

高いエンゲージメント率を維持するスマートニュースの強み

そういう思いもあって、スマートニュースは去年の10月にアメリカでもアプリの提供を開始したんです。もともと英語の記事も含めて、あらゆる世界中の言語の記事を解析対象にしていたんですけれど、正式にUSエディションということでローンチしたのが去年の10月。

それ以降、おかげさまで結構順調に伸びてきてまして、今最新の状況だと世界全体で1200万ダウンロードくらいありまして、そのうちかなりの割合は、当然日本。これはずっと2010年からやってきたことなので日本が過半数を占めているんですけれど、アメリカのダウンロードもかなりあるという状況です。

ダウンロードの数ももちろん大事なんですけど、スマートニュースの特徴は、やはりとてもスティッキーであると。スティッキーというのは、ユーザーがずっと飽きずに使い続けてくれるということなんですけど。

すごくざっくり言うと、ダウンロードした人のうち半分はマンスリーアクティブで毎月使い続けてくれるし、そのうちの半分の人はデイリーアクティブ、毎日使い続けてくれる。

こういうかなり高いユーザーエンゲージメントが実現できているというところが強みなんですね。この強みが生まれるのも、やはり機械学習のアプローチで大量の情報の中から適切に今読むべき情報を集めてくる、その精度が高いからだと考えています。

アメリカのメディア企業とのパートナーシップ

今アメリカでは、単にアプリを公開するというだけではなくて、オフィスも開設しているんですね。ニューヨークとサンフランシスコにオフィスがありまして、そこでどんなことをしているかというと、現地のメディア企業とのパートナーシップ構築のために事業開発のチームがいます。今、100を超えるアメリカの著名なメディア企業との公式なパートナーシップを結ばせてもらってます。

このような事業開発に加えて、これからはエンジニアリングのチームも、特にサンフランシスコのオフィスでつくろうと思っています。現地のメンバーはすごく仲が良くて。真ん中にいるRichというVice President for Contentのメンバーは還暦を迎えているメディア業界の重鎮だった人物なんですけど、彼をはじめとして、いろんな世代の人間がアメリカで頑張っているという感じです。

このアメリカのオフィスに日本からもメンバーがかなり頻繁に訪問しています。これは勉強会を開いたところです。機械学習の勉強会をサンフランシスコで継続的に行っているグループがあるんですけど、そのグループに交渉しにいって、「うちで1回させてもらえないか」ということで。

会場は、今サンフランシスコで僕らが借りているコワーキングスペースなんですけど、このコワーキングスペースのイベントスペースを使って、エンジニアが機械学習の最新の手法に関するプレゼンテーションをして、70人を超えるお客さんが集まったりして。

すごいなと思ったのは、日本だとまだあまり名前の知られていない会社が「勉強会やります」と言っても、そんなにお客さんって集まらないと思ってるんですね。でも、サンフランシスコだと一瞬で集まる。この70人も募集を開始してから、確か6時間以内に70人定員まで集まってしまって。「ああ、これがサンフランシスコ、シリコンバレーのオープンな文化なんだな」と痛感しました。

そんな感じで、これからもサンフランシスコを中心にしたアメリカでのプロダクトの成長を目指して、ゆくゆくはやはり英語圏だけでなくポルトガル語圏やスペイン語圏といった世界中の地域・言語でサービス展開していければいいなと思っているところです。今日はよろしくお願いします。

小野:ありがとうございます。今浜本さんのところは、日本とアメリカそれぞれ人数としてはどういう状況なんですか?

浜本:日本が35人くらいいまして、アメリカが7人ですね。

小野:アメリカの7人は記事を集める部隊と開発という部隊とそれぞれ?

浜本:アメリカは、今はエンジニアリングの人は1人もいなくて、基本的にはメディア事業開発の人が中心ですね。

小野:じゃあ、コアなプロダクトはすべて日本でつくられている?

浜本:今のところはそうなんですけど、これからどんどんエンジニアリングの領域の人材採用も進めていこうとしているところです。

小野:ありがとうございます。